召喚農夫の田舎暮らし

香月ミツほ

文字の大きさ
25 / 32

魔力の新たな使い道5

しおりを挟む
「お帰りなさいませ、旦那様、スイ様」
「ただいま、ロルカン」
「ただいまー!」
「スイ様はご機嫌でございますね」
「うん! きれいな人達ばかりで楽しかった! 緊張して何を話したか覚えてないけど!」
「あんなに嫌味を言われていたのに覚えていないのですか?」
「いやみ? ……言われてた?」
「気づいてないなら良いんです。お風呂に入ってから食事にしましょう」
「うん! ……ねぇ、ブリアンがそんなに疲れてるの、お客様の顔のせいじゃなくて、いやみからぼくを守ってくれてたの……?」
「そのつもりでしたが、スイは私が考えるより強かったようですね」

強いと言うより鈍いんじゃないかな?

……って、聞いてる人たち全員の気持ちが1つになった気がした。


********************


お風呂に入って食事をして、部屋でまったりしています。
ファーガスさんも一緒にお酒を飲んでいる。

「ねぇ、ブリアン。またお茶会へ行くならぼく1人で大丈夫だからね?」
「ですが……」
「だってぼく、ブリアンの伴侶だよ。ブリアンの負担になりたくないし、全然嫌じゃなかったもの」

なおも渋るブリアン。
次があれば、って話なんだから今から心配する必要ないからね?

「なんだブリアン、疲れたのか?」
「えぇ、まぁ」
「スイと一緒にゆっくり眠れば疲れも取れるだろ」
「疲労回復ポーションも飲んでね?」
「そうだ、熱砂虫が届いたらしいぞ」
「ほんと!? 明日受け取りに行かなくちゃ!!」

生き物だから受け取りは早い方がいいだろう。

「ミツアリツメクサはどうですか?」
「一応、順調…… かな? 少しずつは伸びて来てるし」

暖かい部屋に置いているからだけど。
熱砂虫は獲物の魔力を吸うんだから、スイ水ボールを気に入ると思う。そうすれば増えてミツアリツメクサを温かく保ってくれるはず!
早く受け取りたいな。

「スイはもう、立派な領主夫人ですね」
「えぇ!? そ、そうかな?」
「あぁ、領民の役に立とうとあれこれ考えているお前は立派な領主婦人だよ」
「そうですよ。それから年明けの結婚式に招待されました。幸せな領主夫婦が出席する結婚式は縁起が良いと喜ばれます。私達と、たくさんの人達を幸せにする為にずっと私の側に居てください」

ぼく達の幸せが領民の幸せに繋がる。そう言う事なら喜んでぼく達3人、仲良く一緒に長生きしていこう、と約束した。 


********************



スイ水ボールの有用性は確かにあるんだけど、周知するには色々な問題があるので、口外しない事になった。領主一族の秘密!!

結婚して1年後、ぼくはめでたく妊娠。ブリアンの子供なのは大ちゃんのお墨付き! 可愛い子が生まれると良いなぁ。ぼくに似ちゃうと将来が心配だからなぁ。

ファーガスさんは事後、必ず浄化して気をつけてくれていた。後継者問題に関わり合いたくないとか言ってるけど、気を使う人だから1人目をブリアンに譲ったのだと思う。次の子はどっちのが生まれるか分からないように交代でやろうか、なんて冗談言ってるし。

ミツアリツメクサの栽培は順調なのに、ミツアリが来ない。なぜだろうと悩んでいたらマンドラゴラの縄張りになっているからミツアリが入ってこられないんだと小ちゃんが教えてくれた。マンドラゴラ、5株になったからなぁ。

マンドラゴラはスイ水ボールがあれば構わないらしいので地植えを止めて大きな鉢で育てる事にした。するとすぐにミツアリが集まり出した。
ミツが採れるのは巣作りを始めてから1年以上後なので、まだしばらくは買ってくるしかない。



それから王都でりんちゃんが噂になって、なんと王様に呼び出されてしまった。
さすがに断れず、ブリアンとガチガチに緊張したぼくとりんちゃんでお城のバルコニーに降り立った。失礼になりそうだけど、結界を部分的に解くのはここが一番都合が良いと言われて従った。

威厳たっぷりだった王様がりんちゃんのたてがみに触れた途端、でろでろに蕩けてスリスリもふもふしてびっくりした。普段は我慢してるけどもふもふ大好きで、毎晩、守護聖獣のケット・シーをブラッシングして癒されているそうだ。

自分の国の王様の事なのに知らなかった……。
あ、秘密なのか。
なら知らなくて当たり前だね!!

りんちゃんもブラッシングされて気持ち良さそうで、自然に抜けたたてがみはそのまま王様にプレゼント。たまになら遊びに来てあげる、と約束してた。ぼくは緊張するから留守番してるね。

少しずつ大きくなるお腹にいろんな事を話しかけながら、畑を見回ったり、ブリアンに可愛がられたり、お菓子作り教室を開いたり、ファーガスさんに可愛がられたり、鋼蜘蛛さんと仲良くしたり、大ちゃんやりんちゃんと仲良くしたり。



とにかく毎日のんびりと、とっても幸せに暮らしています。 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です

ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」 「では、契約結婚といたしましょう」 そうして今の夫と結婚したシドローネ。 夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。 彼には愛するひとがいる。 それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。 自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。 食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。

【完結済】虚な森の主と、世界から逃げた僕〜転生したら甘すぎる独占欲に囚われました〜

キノア9g
BL
「貴族の僕が異世界で出会ったのは、愛が重すぎる“森の主”でした。」 平凡なサラリーマンだった蓮は、気づけばひ弱で美しい貴族の青年として異世界に転生していた。しかし、待ち受けていたのは窮屈な貴族社会と、政略結婚という重すぎる現実。 そんな日常から逃げ出すように迷い込んだ「禁忌の森」で、蓮が出会ったのは──全てが虚ろで無感情な“森の主”ゼルフィードだった。 彼の周囲は生命を吸い尽くし、あらゆるものを枯らすという。だけど、蓮だけはなぜかゼルフィードの影響を受けない、唯一の存在。 「お前だけが、俺の世界に色をくれた」 蓮の存在が、ゼルフィードにとってかけがえのない「特異点」だと気づいた瞬間、無感情だった主の瞳に、激しいまでの独占欲と溺愛が宿る。 甘く、そしてどこまでも深い溺愛に包まれる、異世界ファンタジー

処理中です...