召喚農夫の田舎暮らし

香月ミツほ

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後日談 後編

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乳離もして体力も戻ったので、ファーガスさんとの子作り開始。
と言ってもブリアンとした時は浄化する、ファーガスさんとした時は浄化しない、ってだけ。それから2ヶ月後、無事に妊娠しました。

大ちゃんがファーガスさんの子だって太鼓判押したから、依頼達成!

とは言え、産まれた我が子を養子に出すなんて…… と寂しい気持ちが拭えずにいた。

「スイ、大丈夫か? あんな契約反故にしたって良いんだぞ?」
「……ん。でも本人の希望を優先してくれるって言うし、もしかしたら跡取りになりたがるかも知れないし……」
「今更だがオレの生家を見せに行こうと思うんだが、どうだ?」
「そうだね。知りたいな。今回も悪阻はないし、すぐ行けるよ」

とは言え、お医者さんから安定期まではダメ!と言われ、4ヶ月になるまで待った。

「行ってきまーす!」
「スイ、何かあったらすぐ帰ってきてくださいね。ファーガスはちゃんとスイを守ってください」
「当たり前だ。家なんかよりスイが大切に決まってんだろ!」
「うふふ…… ありがとう、ファーガスさん」
『行くよ』

侍従の抱っこで機嫌よく手を振るサーシャに見送られ、ぼく達は出かけた。



『スイ、気をつけて。嫌な気配がする』
「嫌な気配?」
 
『……後で祓ってあげる』



「親父! 子供ができたから報告に来たぞ!」
「坊っちゃま、事前にご連絡いただけませんと。大旦那様の都合もお考え下さい」
「隠居ジジイにんな気遣い無用だろうが。スイ、こいつは執事のマクディランだ。マックス、こいつはスイ。オレは妾だが腹ん中にオレの子がいる」
「!! おめでとうございます……?」
「スイはレーンクビスト辺境伯の四男の正妻だし、とんでもない召喚獣を持ってるし、王に謁見した事もある。丁重にな」
「坊っちゃまが妾、とは少々複雑でございますが坊っちゃまらしくもあります。スイ様、どうか坊っちゃまをよろしくお願いいたします」
「こちらこそ! ファーガスさんにはいつも優しくしていただいてて、娘も良く懐いていますし、この子もきっとファーガスさんの子供に生まれる事を喜んでいると思います。どうぞよろしくお願いします」



そのままにしてあると言うファーガスさんの部屋に通されてお茶を飲みながらお父さんを待った。居心地良さそうなのに、なんで家を出ちゃったんだろう? 

「どうして家を出たの?」
「親父が結婚結婚うるさいから」
「それで愛人志望?」
「まぁな」

そんなおしゃべりしてたらお昼になった。これからお父さんに会えるそうで、一緒に食堂に行く。
その途中、嫌な気配のする扉があって怖かった。りんちゃんが言ってたやつかな?

「でかしたぞ、ファーガス! スイ殿にも感謝する!」
「とは言え、本人の希望が第1だからな。無理強いするなよ?」
「分かっておるわ!」
「スイ様、初めまして。ファーガスの母です。この度は孫を身籠っていただき、心から感謝申し上げます」
「初めまして! ご挨拶に伺いもせず、大変失礼いたしました。この子が養子になるかどうかまだ分かりませんが、大切に育てます。……それで、このお屋敷に何か嫌な気配を感じたのですが、曰く付きのモノ、とかありませんか?」
「嫌な気配、だと?」
「はい。突然すみません……」
「食事の後で行ってみよう。親父、いいな?」
「もちろんだ。スイ殿はそう言った事が分かるのか?」
「ぼくもそれなりに呪いや祝福の有無が分かりますが、ぼくの召喚獣が気にしていたんです。鑑定もできますが、解呪ができません」
「それは構わん! ぜひ鑑定してくれ!!」





食事が終わって行った先は子供部屋。
これから生まれてくる跡取りのために用意された部屋。

そこに置かれた可愛らしいクマのぬいぐるみから漂う悪意。
怖!!
このクマ怖!!

「このぬいぐるみですね。鑑定します」

《フィオナの手作り》
 状態異常:不妊の呪い
 乾燥させたターゲスの花びらと押し潰したコモリガエルを詰め物に入れて呪いをかけると、対象者が子宝に恵まれなくなる。効果は魔力量による。

「………………。えっと、フィオナさん……って?」

「はぁ……。フィオナは乳母の娘で、長兄付きのメイドだった。……そうか。」
「このぬいぐるみと…… この部屋にも影響が出ていますので、解呪してから全部入れ替えた方がいいと思います」

どう言う経緯があったか知らないけど、ちゃんと話し合って解決して欲しいな。

「悪かった」
「……え?」
「妊娠中のお前に影響が出たら困る。気分悪いだろう?」
「そうだね、呪いの気配が分かっても、心の中までは分からないから、とても悲しい。」
『スイ』
「りんちゃん?」

パリッ!

「ひゃっ! 何???」 

『悪い気配が纏わり付いてた。もう大丈夫』
「あ、呪いの余波を受けたのかな? ありがとう、りんちゃん」
『放っておいたら子供が生まれられなかったよ。気をつけて』
「マジか!? ……麒麟、助かった」
『スイのためだもん、当たり前でしょ』

その後、ちゃんとした神聖魔術師を呼んで調べてもらったらぼくでは感知できないほどささやかな呪いが屋敷中に散らばっていて、そこで暮らすと呪いが累積して確実に不妊になるようだった。怖すぎ……。



ファーガスさんちから帰ったらサーシャがギャン泣きしてて、侍従もブリアンも使用人たちも困り果ててた。最初は機嫌良く遊んでたのに、お昼寝から目が覚めてぼくがいなかったのが気に入らなかったらしい。帰ったら泣き過ぎて引きつけを起こしかけてて申し訳ないことをした、と反省。

それからしばらく、ぼくにべったりで全然離れようとしなかった。

解呪が功を奏して、ぼくの子が生まれる前にお兄さん達の奥さんの妊娠が分かり、養子の件はなかったことにしてもらった。今後、何かあればまたそんな話になるかも知れないけど、なるべくなら自由にさせてあげたい。

お腹が大きくなってくるとサーシャはぼくのお腹をチュッチュしたりはむはむしたりと可愛いイタズラをしてくるのでくすぐったいけど幸せ。

そして生まれた子は焦げ茶色の髪でファーガスさん似のキリッとした顔立ちの男の子。赤ちゃんなのに顔が濃い。

ブリアンは自分の子が生まれればファーガスさんの赤ちゃんの扱いが変わると考えてたようだけど、全然変わらず。男の子だから余計に雑な扱いをしている気がする……。そして面倒を見たり、飽きて放置したり、ファーガスさんは相変わらず気まぐれだけど、ブリアンがサーシャほどではないにせよ、可愛がってくれているのでなんの心配もしていない。



そう言えばコナンさんがSランク魔術師になった。
ケルピーに散々可愛がられて魔力量が大幅に増大。仕事内容は今もブリアンの補佐だけど、山の中腹に見つかった地底湖から新しい水路を作る時に水を堰き止めたり流したりと大活躍した。見た目も若返ってる。

ミツアリの蜜もたくさん採れて、甘味が安くなり始めた。まだ取引できる量じゃないけど、子供たちのおやつが手頃になったら目標達成だ。

ビティスが今年も豊作なのは、多分大ちゃんのおかげだと思う。
これからもずっと、みんなで仲良く暮らして行きたいと思います! 
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