友達アプリ

せいら

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序章

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僕はいわゆるクラスの地味男。
友達は1人もいない。

でも別に辛くはない。友達なんていたって苦しくなるだけ。


いじめだなんだって結局は人間関係なんて築いているから発生する。


僕みたいに何もしてない人間は初めこそ、暗いだの地味だの言われるけどすぐに他の人にターゲットは移る。


1人で生きていくんだ。




そう、思っていた。

あのアプリに出会うまでは……


ある朝、怠い体を起こし学校に向かう。

いつものように無駄にうるさい。


わらわらと一つの席に集まって何がしたいんだ。



「なあ、友達アプリって知ってる?」

「何それー、知らない。」

「何かさ、友達作るアプリなんだけどさ。今、無料アプリの中で人気No.1なんだって。」



朝からくだらない話を延々と話している。

何が友達アプリだよ。どーせ、またアバターとか作って遊ぶゲームに決まってる。



「お前やってんの?見せてよ。」

「ダメだよ。他人に見せちゃ。けど、すげぇんだぜ。SNSとかブログとかじゃないんだよ。」

「え、現実の友達ってこと?何それ、すげー。」

現実の友達?そんなのあるわけがない。

ただのアプリで友達が作れるなんて、嘘に決まってる。



「体験版もあるんだぜ?ダウンロードしてみろよー。」

「まじかー。可愛い女の子と友達になれるかなー。」

「運が良ければなー。ははは!」



女なんてめんどうな生き物なのに、どうしてこんなに盛り上がれるんだ。


僕は、そんな言葉をずっと心の中で繰り返していた。


生まれてこの方彼女なんていたことはないけど、女はめんどうだと思う。

男以上に人付き合いとかに敏感だから。



「友達アプリだってさ。面白いのかねー。」

「僕に言ってんの?」



たまに、こうやってからかい半分に話しかけてくる男もいる。

この男は隣の席のやつで、名前は知らない。


「うっとうしいなぁ、って顔してるな。」


僕と違ってこいつには“友達”がいる。

顔も整っている。



なのに、こうやってちょくちょく話しかけてくるのだ。

うっとうしいに決まっている。



「大輔って、本当につまんなそうに学校いるよな。」


でも、僕を名前で呼んでくれる唯一の男だった。



地味男でもメガネでもなく、


“中根大輔”


と、そう呼んでくれる男だった。


家に帰ってくると、意味もなくスマートフォンをいじる。


何か面白いアプリでもないかなー、と探していたときに学校で話していた変なアプリを思い出した。



「名前……なんだっけな。」


確か、ランキング一位とか言ってたな。


あった、友達アプリ?

こんなんだっけ?



「友達を作るアプリです。ってアホくさ。こんなんで出来るわけないのに。」



でも、どんなに強がってみても友達がほしかったのは事実だ。

会話をする友達がほしかった。


「体験版、もあるし。効果なかったらすぐに消そう。」




【体験版をダウンロードしますか?


→はい    いいえ



ダウンロードが完了しました。】




「お、おう。………なんも変わんないじゃん。」



と、放置していると数時間後にスマートフォンが鳴る。


僕に友達なんていないから当然アプリ通知だ。



「ん?友達アプリ運営?……あー、あれか。」



【あなたにピッタリの友達が見つかりました。

名前は神永亜欄(かみながあらん)くん。


早速友達になりますか?】



神永亜欄って僕と同じクラスじゃん。


まあ、いいや。Yes、と。



【友達になりました。明日からはいっぱいお話しましょうね。】


何だよこれ、つまんねぇな。


次の日、学校に行くととんでもないことになっていた。


「なあなあ!知ってたか?二組の真中と一組の道長が死んだらしいよ!」


と、興奮気味の亜欄が僕に言ってくる。


「死んだって何で?」

「知らね。真中はナイフで滅多刺しだったらしい。道長は鈍器で殴られたんだってさ。」

「へぇー。ていうかなんで僕にそんなこと?」



「はあ?だって友達じゃん。」


え……?

友達……?僕と?



あのアプリの効果ってことなのか?


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