この状況には、訳がある

兎田りん

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それはキャンプとして成立していない

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〘その子は同時期に生まれた子らの中では体も小さく力も弱い。雪と氷に覆われた地では育たぬやもしれぬと思われておった様だ〙
 あ、親御さんが近くにいる感じですか?なるほど。俺についてきたのは生存戦略と。
〘力が無い分賢いのであろう。汝を迷いなく選ぶ辺り、信頼できるものを見る目もある様だな〙
 油断してるニヴァスさんなら入れ替われる、って考えて行動する力に可愛がってくれる人を見抜く目があるとか最強では?
〘名を付けてやるが良い。絆を結…ん?何?もう貰った?………えっ?良いのか?ソレで?〙
 大神様の会話に子が入ってきたようだ。名前?つけた記憶ないけど………

〘……うむ。納得しているのであれば何も言うまい〙
 あ、大神様が折れた。何度も確認するということは、大神様の想像を超える名前ということか。待って本当に記憶ない。あ、ステータスで見れ…

[名前:白豆しろまめ/種族:シルバーフェンリル/性別/雄……]

「………………」
 白豆しろまめ!!…えっ、白豆……?嘘だろ?
 確かに白い豆柴の子どもみたいだな、って思ってはいたけど。そっかー、口に出てたかー。そして受け入れちゃったかー。
「……いいの?白豆で」
 本当に?
「キャン!」
 うわぁ…めっちゃキラッキラの瞳で尻尾振ってる。可愛いけど…けど…
「本当に?」
 本当の本当の本当に白豆でいいの?
「キャン!」
〘…良いようだ。では神々の寵愛を受けし黒き子、ファルムファスよ。シロマメを立派な守護獣に育て上げよ〙
 俺もその名前には納得してないんだけど、本シルバーフェンリルがいいって言うなら仕方ない。銀牙の夢敗れる。正直もっと悩んで決めたかった。
 そして委託元から育成ハードル爆上げされた件。

 前世込み…育成ゲーム以外でペット飼ったことないんですけど?
 飼育ど素人が守護獣跡取り育成とか難易度ルナティックでは?
〘………解らぬ言葉だらけではあるが、シロマメはシルバーフェンリル。愛情を込めて接すれば応えてくれよう〙
 こんなに可愛い白豆を雑に育てるとかマジ無い。ギュッと抱きしめる腕に力を込めると、ふわりとした毛が頬をくすぐる。可愛い。
 飼育方法(普通の犬とどう違うか)とかはハーゴン教授が喜んで調べてくれそうだから、俺は実働部隊に専念できるよね。相談できる大人がいるのは心強い。
「大神様とどんな話を?」
 待ちきれないハーゴン教授が食い気味に聞いてくる。「やっぱ無しで。送り返して」とか言われたくないオーラをちょっと感じる。俺もそれ言われたら「嫌ですけど何か問題でも?(自分の意思でついてきたんですよ?)」とか返したかもしれない。おおらかな大神様と親御さん、ありがとうございます。
「白豆を立派な守護獣に育てて欲しいそうです」
「キャフン!」
「守護獣!それは素晴らしい!僕も仲間に入れてくれないか」
 もちろん巻き込む気ですとも。の気持ちを込めて微笑む。
 ハーゴン教授の脳裏には大神様の神々しい御姿に並ぶ白豆の姿が浮かんでいるんでしょうね。そこまではいかなくても、もののけプリンセスのアニメ映画みたいに俺が背に乗って走れるくらいには育つでしょう(未来予想図)。
「あぁ…ファルムの微笑みが尊い…叶うなら僕にもその微笑みを向けてほしい…」
「ふむ。子犬の飼育でゴン氏の脱走が減るならば、学園職員としても歓迎すべきであるな」
 何かいい感じにまとまりつつあるけど、白豆という名前には誰もツッコミを入れない不思議。

〘壮大なものと思われておる様なので言っておくが、我はシルバーフェンリルの王であって何か特定のものを守っておる訳ではない〙
 あ、そうなんですね。つまり極北の守護獣ではないと。
〘うむ。そもそも汝らが「極地」と呼ぶ場所は「人の子らが住めぬ場所」の事であろう。我らの生息域縄張りを人の子らのために守る事などせぬよ〙
 確かに。あ、でも白豆は守護獣になるんですよね?
〘神々の寵児である汝を守る守護獣ぞ?〙
 あっ、俺の護衛…そういうことですか?
〘我からの加護と併せて重宝するが良い。何時もとまではいかぬが、シロマメを通じて見ておるからの〙
 あっ…!返しそびれてたやつまで絡められた!
 ありがたいけど荷(ステータス画面)が重い(記載事項が多すぎて見るのが辛い)です!

 俺が大神様と通信をしている間に、ハーゴン教授が飛ばされた先の話をざっくりと兄上とメイナース先生にしてくれていたようだ。
 真っ白な子犬を抱いた美少年(自分で言うよ?)が虚空を見つめたまま動かないとか、絵にはなるけど見てる人は心配しかないもんね。
「大型の幻獣も幼子おさなごいものであるな」
「毛並みがふわふわでキラキラだね。白と銀が混ざっているのかな?あ、ファルムの艶やかな黒髪の方が美しいよ。当然じゃないか。幻獣の王をも魅了する僕のファルムが尊すぎて愛しい」
 シルバーフェンリルというレア種をあっさり受け容れた二人に撫でられて白豆も嬉しそうにキュンキュン鳴いている。
 これが幸せな世界というやつだ(確信)

「時に童よ。この件、騎士科の連中…特に肉には知られてはならんぞ」
 肉…ゴルラフ隊長が遂に人外から肉になった模様。
「シルバーフェンリルという希少種はアレらにとって格好の話題の種であろう。耳に入ったが最後、悪びれもせず大声で所構わず吹聴するからな」
 なんかわかる…知られた瞬間に拡散しそう。
 ゴルラフ隊長は出発前にシルバーフェンリル欲しいって言ってたし、絶対騒ぐ(確信)。
「そうだね。下手に広げて騒ぎになっても困るし」
「白豆を俺の元から離す気はないので、黙秘します」
「私はファルムごと囲おう」
 兄上、それなんか違う。別の意味が込められてる気がして震える。あっ、このタイミングで白豆ごとバックハグしてくるのなんか怖いからやめて下さい。

「アルバ教授はどうしましょうか」
 魔物学の教授だから、見せたらバレるよね。
彼奴あやつは肉らと合流する前に捕らえてゴン氏と共に言い含めよう」
「今回は本気出す」
 いつも出てないんですか本気…
 メイナース先生は言うや否や身を翻し、あっという間にアルバ教授を捕まえてきた。
「ゴン氏を見つけたと言ったら、あっさりついてきおった」
「ハーゴン教授はレア教授ですからね。会えるうちに珍しい生き物の話を聞かないと」
 ハーゴン教授の扱い…本人が気にしていないからいいのか?
 チーム肉は肉の準備をしているらしい。これは別働隊の帰りを待たずに食べ始める気だ。
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