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愛だけで生きていけると思うなよ
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状態異常に関する牽制と「愛だけで生活できねぇよ(意訳)」の言葉で二人は随分と大人しくなった。
メロメ国王の開会宣言からの挨拶もつつがなく終了。華やかなダンスが始まった頃、関係各位を引き連れてさりげなく会場を後にした俺たちは再び相対する事となった。
メディナツロヒェン嬢とサヴィーニア様の為にも、決着はつけねばならない。本来、これは俺の役目ではないと思うのだが…
パーティ会場を僅かに離れ、華やかな喧騒がかすかに届く一室。
「さて。再開といきましょうか」
気づいたら相手方のメンバーが増えているが、いつ集ったの?
彼らは今回の愉快な仲間たちと見ていいんですよね?
増えた面子を「全員魅了中かぁ…やっぱり俺が解くんだろうなぁ」と眺めていると、メディナツロヒェン嬢が愉快な仲間たちの内訳を教えてくれた。今回の愉快な仲間たちは(メイン二名の他に)6名。メロメ国の高位貴族令息たちと第三王子だ。さっき見たやつが来てるなぁ、と思ってたけど王子なのかよ。
王子を蹴って侯爵令息か。と一瞬思ったが、第三とはいえ王子妃は公務の一柱。責任の重さを天秤にかければ侯爵令息の利が大きかったのだろう。
「皆様婚約者の方々と別れ、あちらのリナリア・ラフチュウ男爵令嬢を支える事を公言しています」
へぇ、あの子リナリアっていうのか。メディナツロヒェン嬢から色々聞いてはいたが、名前は初耳だな。フルネーム呼びしている事から絶許の気配を感じる。
「成程。わたくしたちは今から地位に縛られない自由と殿方の持つ権力を好きに使うという強欲な女性と相対する訳ですね」
「正直不快ですわ」
俺の論にレニフェル様がすごく嫌そうな反応を示す。従兄弟殿の体たらくを思い出したのだろう。貴女は我が国の王族で、ここは外交先ですので、ステイでお願いします。
「我らを呼びつけるとはいい度胸だ」
「不敬罪で捌いてやろう。私が手を下せば文句は出まい」
おう。随分と偉そうに振る舞いやがりますね。初手からバッサリいきたいところではあるが、まずは軽めに返しておこう。
「わたくし共が呼びつけた訳ではなく、皆様が勝手にお越しになられたのでは?」
こちらは頭数が増えて驚いた側ですよ?
「王子殿下におかれましては、ラキアラス王国の王族とその従者に「手を下す」後の事をお考え頂ければ幸いです」
こちらは下手すると戦争に発展するので、「よく考えろ」と少々強めの圧をかける。
俺が切られたら色々こじせた兄と郊外を吹っ飛ばしたという逸話を持つ家族愛の強い父が確実に前に出てくる。指揮を執るのはアーデルハイド殿下(withウィー君)だろう。
ここまでは(状況としてはかなりマズイが)人同士の争いだからよしとしよう(本当はよくない)
最悪を想定すると、俺のステータス欄に輝く二柱の神様。こちらが乗り出してくるとメロメ国はかなりの高確率で平地と化す。それは、非常に困る。
俺はまだ平穏な学園生活を諦めていないんだ。
とりあえず目前の愉快な仲間たちがお腰の刃物を抜いた瞬間に沈めようと心に決めた。荒事になったら、床とキスするのは君たちだよ。
「ラキアラス王国からの使者はまだ到着していないと聞いている」
いつの情報ですか?
「………この方、メロメ国王陛下の挨拶の時一緒にいましたわよね?」
驚きの発言にレニフェル様がメディナツロヒェン嬢に確認を取っている。俺も見ました。
「陛下の側にいながらお言葉を聞いていないというのは、私も想定外ですわ」
王子ー、こちらの女子ドン引きなんですけどー。
お仲間も「マジで?」みたいな顔してるのいますよ?
「そちら方の記憶が薄い様ですので名乗っておきましょう。わたくしはレニフェル・エク・ラキアラス。ラキアラス王国の王女ですわ」
教科書に載せていいレベルの淑女の礼と共にレニフェル様が名乗りを上げる。頭に添えられた少々の嫌味はご愛嬌だ。
レニフェル様は公の場ではご自身の身分を王女と名乗るようだ。王位継承権一桁の王女なのは事実だし、ハロルド様を知らない人に「王弟の子です」と言っても「よくわかりません」と返されそうだからこれが正解なのだろう。言葉的には王女の方が強そうだし。
「我が国に来たからには我が国のルールに従うのが筋だ」
ヤバいな。全然通じてない。というか聞いてないなコイツ。
初対面なんだから、挨拶されたら返すのが筋でしょう?何「ご存知!」みたいな顔してるの?
周りの仲間が必死でフォローしようとしてるけど、それもダメっぽい。
「……従兄弟よりダメな様ですわ」
「ルーベンス殿下はもう少し会話出来ましたものね」
ちょっと王子ィー、こちらの女子ドン引きなんですけどー(二回目)
「会場で言った「状態異常」とやらはこちらの王子も含まれているのかしら?」
会話が成り立たないことから、レニフェル様の矛先が俺に向いた。順当。
「ええ。向こう側の殿方全員。ただ、会話不成立の理由にはならないかと」
仲間の発言のヤバさを感じ取ってフォローに回ろうという奴が出るくらいだから、会話が出来そうなのはいる。
だが王子、お前はダメだ。最後までしっかり人の話を聞いて、よく考えてから発言しろ。仲間を引かせるな。
「それは…公の場に出していいのかしら?お国柄なの?」
「そんな祖国は嫌ですわ」
俺もルーベンス殿下のアレを見た時「この国終わった」って思った位だし、メディナツロヒェン嬢の心労は少し解る。
「状態異常?私はおかしくないぞ!」
あ、状態異常の意味は通じるんですね。ですが、貴方は十分おかしいですよ?
「今の状態が平常、というのは国の未来が恐ろしく感じるのですが」
「国営は兄上がなさる」
大事なことを丸投げするな。
「…ラフチュウ男爵令嬢、でしたか?この方はいつもこのような感じで?」
取り巻きに加えた責任はリーダーが負うべきだと俺は思うんだ。
「ロメオロス様はオレ様なのよ」
「「「………」」」
こちらがドン引きしてるのにも気づいて頂きたい。
レニフェル様とメディナツロヒェン嬢が「オレ様…?」「何語…?」と、非常に困惑されておいでです。俺もその返答は無いと思う。
メロメ国王の開会宣言からの挨拶もつつがなく終了。華やかなダンスが始まった頃、関係各位を引き連れてさりげなく会場を後にした俺たちは再び相対する事となった。
メディナツロヒェン嬢とサヴィーニア様の為にも、決着はつけねばならない。本来、これは俺の役目ではないと思うのだが…
パーティ会場を僅かに離れ、華やかな喧騒がかすかに届く一室。
「さて。再開といきましょうか」
気づいたら相手方のメンバーが増えているが、いつ集ったの?
彼らは今回の愉快な仲間たちと見ていいんですよね?
増えた面子を「全員魅了中かぁ…やっぱり俺が解くんだろうなぁ」と眺めていると、メディナツロヒェン嬢が愉快な仲間たちの内訳を教えてくれた。今回の愉快な仲間たちは(メイン二名の他に)6名。メロメ国の高位貴族令息たちと第三王子だ。さっき見たやつが来てるなぁ、と思ってたけど王子なのかよ。
王子を蹴って侯爵令息か。と一瞬思ったが、第三とはいえ王子妃は公務の一柱。責任の重さを天秤にかければ侯爵令息の利が大きかったのだろう。
「皆様婚約者の方々と別れ、あちらのリナリア・ラフチュウ男爵令嬢を支える事を公言しています」
へぇ、あの子リナリアっていうのか。メディナツロヒェン嬢から色々聞いてはいたが、名前は初耳だな。フルネーム呼びしている事から絶許の気配を感じる。
「成程。わたくしたちは今から地位に縛られない自由と殿方の持つ権力を好きに使うという強欲な女性と相対する訳ですね」
「正直不快ですわ」
俺の論にレニフェル様がすごく嫌そうな反応を示す。従兄弟殿の体たらくを思い出したのだろう。貴女は我が国の王族で、ここは外交先ですので、ステイでお願いします。
「我らを呼びつけるとはいい度胸だ」
「不敬罪で捌いてやろう。私が手を下せば文句は出まい」
おう。随分と偉そうに振る舞いやがりますね。初手からバッサリいきたいところではあるが、まずは軽めに返しておこう。
「わたくし共が呼びつけた訳ではなく、皆様が勝手にお越しになられたのでは?」
こちらは頭数が増えて驚いた側ですよ?
「王子殿下におかれましては、ラキアラス王国の王族とその従者に「手を下す」後の事をお考え頂ければ幸いです」
こちらは下手すると戦争に発展するので、「よく考えろ」と少々強めの圧をかける。
俺が切られたら色々こじせた兄と郊外を吹っ飛ばしたという逸話を持つ家族愛の強い父が確実に前に出てくる。指揮を執るのはアーデルハイド殿下(withウィー君)だろう。
ここまでは(状況としてはかなりマズイが)人同士の争いだからよしとしよう(本当はよくない)
最悪を想定すると、俺のステータス欄に輝く二柱の神様。こちらが乗り出してくるとメロメ国はかなりの高確率で平地と化す。それは、非常に困る。
俺はまだ平穏な学園生活を諦めていないんだ。
とりあえず目前の愉快な仲間たちがお腰の刃物を抜いた瞬間に沈めようと心に決めた。荒事になったら、床とキスするのは君たちだよ。
「ラキアラス王国からの使者はまだ到着していないと聞いている」
いつの情報ですか?
「………この方、メロメ国王陛下の挨拶の時一緒にいましたわよね?」
驚きの発言にレニフェル様がメディナツロヒェン嬢に確認を取っている。俺も見ました。
「陛下の側にいながらお言葉を聞いていないというのは、私も想定外ですわ」
王子ー、こちらの女子ドン引きなんですけどー。
お仲間も「マジで?」みたいな顔してるのいますよ?
「そちら方の記憶が薄い様ですので名乗っておきましょう。わたくしはレニフェル・エク・ラキアラス。ラキアラス王国の王女ですわ」
教科書に載せていいレベルの淑女の礼と共にレニフェル様が名乗りを上げる。頭に添えられた少々の嫌味はご愛嬌だ。
レニフェル様は公の場ではご自身の身分を王女と名乗るようだ。王位継承権一桁の王女なのは事実だし、ハロルド様を知らない人に「王弟の子です」と言っても「よくわかりません」と返されそうだからこれが正解なのだろう。言葉的には王女の方が強そうだし。
「我が国に来たからには我が国のルールに従うのが筋だ」
ヤバいな。全然通じてない。というか聞いてないなコイツ。
初対面なんだから、挨拶されたら返すのが筋でしょう?何「ご存知!」みたいな顔してるの?
周りの仲間が必死でフォローしようとしてるけど、それもダメっぽい。
「……従兄弟よりダメな様ですわ」
「ルーベンス殿下はもう少し会話出来ましたものね」
ちょっと王子ィー、こちらの女子ドン引きなんですけどー(二回目)
「会場で言った「状態異常」とやらはこちらの王子も含まれているのかしら?」
会話が成り立たないことから、レニフェル様の矛先が俺に向いた。順当。
「ええ。向こう側の殿方全員。ただ、会話不成立の理由にはならないかと」
仲間の発言のヤバさを感じ取ってフォローに回ろうという奴が出るくらいだから、会話が出来そうなのはいる。
だが王子、お前はダメだ。最後までしっかり人の話を聞いて、よく考えてから発言しろ。仲間を引かせるな。
「それは…公の場に出していいのかしら?お国柄なの?」
「そんな祖国は嫌ですわ」
俺もルーベンス殿下のアレを見た時「この国終わった」って思った位だし、メディナツロヒェン嬢の心労は少し解る。
「状態異常?私はおかしくないぞ!」
あ、状態異常の意味は通じるんですね。ですが、貴方は十分おかしいですよ?
「今の状態が平常、というのは国の未来が恐ろしく感じるのですが」
「国営は兄上がなさる」
大事なことを丸投げするな。
「…ラフチュウ男爵令嬢、でしたか?この方はいつもこのような感じで?」
取り巻きに加えた責任はリーダーが負うべきだと俺は思うんだ。
「ロメオロス様はオレ様なのよ」
「「「………」」」
こちらがドン引きしてるのにも気づいて頂きたい。
レニフェル様とメディナツロヒェン嬢が「オレ様…?」「何語…?」と、非常に困惑されておいでです。俺もその返答は無いと思う。
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