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愛だけで生きていけると思うなよ
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「ファルムファス君がいると研究が捗っていいねぇ!あ、これできる?」
「属性魔法の固着ですか。試すのはいいですが、初等部の学習もさせて下さいね」
「もちろんだとも!経過観察サンプルも要るから、欲しいからこの箱の中身全部ね」
「多い!」
本日もルキスラ教授はご機嫌です。
人の噂も七十五日。とまで行かなくとも、しばらく間を開ければほとぼりも覚めるだろう。
騒動が落ち着くまで別室で授業を受けたい。と申告したら「それは助かる」とその場で許可が下りた。
助かるってなんだよ。
どこを拠点にするかを(先生方が)検討した結果、魔法研究学のルキスラ教授の元へ行くことになった。
初等部の建物内では近すぎて隔離にならない。高等部でも場所を選ばないと支障が出る。何より俺の希望「レニフェル様が寄り付かない所」が難しい(どこにでも現れるらしい)。
預け場所に困った初等部の職員会議で「もう自宅学習でいいじゃない?」という結論になりかけた時、ルキスラ教授が「 魔研に来て欲しい」と乗り込んできたらしい。
薬の森の一件は学園の職員に情報共有されているらしく「初見の教授に預けて持て余されるよりマシだろう」と判断されたと聞いた。
アレだよね。魔物学と魔法研究学の二大柱で「新しい研究対象キタコレ!」って大はしゃぎしすぎて公開せざるを得なかった情報ですよね?
俺は初見の教授が持て余す程の奇行はしませんよ?おかしな人が向こうからやってくるだけです。
ルキスラ教授の目的は「俺の安全確保」じゃなくて「研究対象は俺」なのでは?と、一連の流れを聞いた時正直疑ったし間違いでもなかった。
ちょいちょいどころじゃなく、かなりガッツリ目にルキスラ教授の研究の手伝いをさせられている。魔研の学生を使ってください?
ルキスラ教授曰く「ファルム君ができないなら諦めがつくけど、できるなら可能性があるという事だもの。後は私達の能力を見ながら規模と効果を調整したらできるってやればできるさやってやろうじゃないか諦めたらそこで研究終了なんだよ」と。その理論はふわっとし過ぎているし、最後は何なのか解らなかった。
とりあえず「この機会にやりたい事全部やらせる」ということでよろしいですね?
高等部図書館を超える蔵書(魔法関連専門)と噂される魔研。
レニフェル様は希望通り来ないが、イニフィリノリス王女が住み着きました。
「…素晴らしき魔法の世界」
うっとりとした表情で本を閉じるその姿は、研究の手を止めて見つめてしまう者が出てしまう程だ。これが天性の魅了…
「イニフィリノリス殿下、その本がお気に召されましたら、こちらの本もいかがでしょう」
ついでにアスベル君も魔研に住み着いた。
王女様を紹介したら一目惚れしたらしい。
読書に勤しむ王女様の元に足繁く通い、甲斐甲斐しくお世話をしている。
「ありがとう。こちらを読破したら読ませていただくわ」
悪くない関係が出来上がりつつあるので、見守る事にしよう。
ただ、あまり尽くし過ぎると従僕認識が定着して関係が進歩しない可能性があるので程々にするべきと声は掛けておこうと思う。
(室内を見回して)ライバルも多そうだしね。
イニフィリノリス王女が魔研の書庫に住み着いたのにも訳がある。
「わたくしは恋愛思想から離れた生活がしたかったの。メディ姉様には申し訳ないのですが、第三王子の一件はチャンスだと思いましたのよ?」
メロメ国、というより愛の女神信仰が性に合わなかったのだそうだ。
俺も流石に「愛こそ全て!」は無理。
脱出チャンスを狙っていた所にレニフェル様がやってきたから乗っかったのですね。すげぇ行動力。
「ラキアラス王国はいいですわね。創世神信仰は様々な思想をおおらかに受け入れていて素晴らしいですわ」
暫くは王都や学園内の図書館をめぐっては歴史書や軍記などを読み漁っていたのだが、俺が魔研に滞在する事をどこかから聞いたらしく訪ねてきた。
メディナツロヒェン嬢にも(レニフェル様に漏れるから)教えていない情報をどこから…
「学園内外の図書館を巡りましたが、蔵書に偏りがないのが嬉しかったですわ。メロメ国は恋愛ものしかないので他の種類の本が自由に読める環境はわたくしの理想だったのです。それに統一規格で分類されているのも素晴らしいですわ。館内地図で求めている書物の書架を探せるなんて…」
ラキアラス王国の図書館はいかがですか?と聞いたらスイッチが入ったらしく、素晴らしき本の世界を目いっぱい語られてしまった。
「王女様…?」
「ああ、すみません。聞いていただけるのが嬉しくて、一人で話してしまいましたわ」
語るだけなら聞き流すので大丈夫です。ご用件をお伺いしたいのです。
「魔法研究学には独自の収集品(本)があると聞きましたの。床が抜けるほどの蔵書なんて見たいに決まっているではないですか!」
そのブレなさは応援したくなる。
ルキスラ教授に許可を取り、書庫に案内してもらった(俺も初めて行った)ら引くほど本が積まれていた。
イニフィリノリス王女はもちろん大喜び。
ルキスラ教授も「書庫で喜ばれたのは初めてです」と、悪い気はしないという表情で受け入れた。
メロメ国には無い種類の(膨大な量の)書物。魔研という限られた者しか訪れない環境。王女様が利用するならと書架整理担当が増員されたこと(元々居た魔研の司書さんが大層喜んだ)。諸々の理由があり、イニフィリノリス王女が朝から夕暮れまで滞在することになった。
ひたすら本を読み漁っているだけなので「キリのいいところで終わりましょう」と帰りの時間前に声をかけるだけでいい。
書庫は片付くし、可愛い王女様の姿で癒される学生がいい所を見せようとやる気を出すし、今のところプラスしかない。
授業の進度を伝えるためにやってきたアスベル君がイニフィリノリス王女に一目惚れして尽くし始めるのも可愛いものですよ。
平和って、素晴らしいね。
「属性魔法の固着ですか。試すのはいいですが、初等部の学習もさせて下さいね」
「もちろんだとも!経過観察サンプルも要るから、欲しいからこの箱の中身全部ね」
「多い!」
本日もルキスラ教授はご機嫌です。
人の噂も七十五日。とまで行かなくとも、しばらく間を開ければほとぼりも覚めるだろう。
騒動が落ち着くまで別室で授業を受けたい。と申告したら「それは助かる」とその場で許可が下りた。
助かるってなんだよ。
どこを拠点にするかを(先生方が)検討した結果、魔法研究学のルキスラ教授の元へ行くことになった。
初等部の建物内では近すぎて隔離にならない。高等部でも場所を選ばないと支障が出る。何より俺の希望「レニフェル様が寄り付かない所」が難しい(どこにでも現れるらしい)。
預け場所に困った初等部の職員会議で「もう自宅学習でいいじゃない?」という結論になりかけた時、ルキスラ教授が「 魔研に来て欲しい」と乗り込んできたらしい。
薬の森の一件は学園の職員に情報共有されているらしく「初見の教授に預けて持て余されるよりマシだろう」と判断されたと聞いた。
アレだよね。魔物学と魔法研究学の二大柱で「新しい研究対象キタコレ!」って大はしゃぎしすぎて公開せざるを得なかった情報ですよね?
俺は初見の教授が持て余す程の奇行はしませんよ?おかしな人が向こうからやってくるだけです。
ルキスラ教授の目的は「俺の安全確保」じゃなくて「研究対象は俺」なのでは?と、一連の流れを聞いた時正直疑ったし間違いでもなかった。
ちょいちょいどころじゃなく、かなりガッツリ目にルキスラ教授の研究の手伝いをさせられている。魔研の学生を使ってください?
ルキスラ教授曰く「ファルム君ができないなら諦めがつくけど、できるなら可能性があるという事だもの。後は私達の能力を見ながら規模と効果を調整したらできるってやればできるさやってやろうじゃないか諦めたらそこで研究終了なんだよ」と。その理論はふわっとし過ぎているし、最後は何なのか解らなかった。
とりあえず「この機会にやりたい事全部やらせる」ということでよろしいですね?
高等部図書館を超える蔵書(魔法関連専門)と噂される魔研。
レニフェル様は希望通り来ないが、イニフィリノリス王女が住み着きました。
「…素晴らしき魔法の世界」
うっとりとした表情で本を閉じるその姿は、研究の手を止めて見つめてしまう者が出てしまう程だ。これが天性の魅了…
「イニフィリノリス殿下、その本がお気に召されましたら、こちらの本もいかがでしょう」
ついでにアスベル君も魔研に住み着いた。
王女様を紹介したら一目惚れしたらしい。
読書に勤しむ王女様の元に足繁く通い、甲斐甲斐しくお世話をしている。
「ありがとう。こちらを読破したら読ませていただくわ」
悪くない関係が出来上がりつつあるので、見守る事にしよう。
ただ、あまり尽くし過ぎると従僕認識が定着して関係が進歩しない可能性があるので程々にするべきと声は掛けておこうと思う。
(室内を見回して)ライバルも多そうだしね。
イニフィリノリス王女が魔研の書庫に住み着いたのにも訳がある。
「わたくしは恋愛思想から離れた生活がしたかったの。メディ姉様には申し訳ないのですが、第三王子の一件はチャンスだと思いましたのよ?」
メロメ国、というより愛の女神信仰が性に合わなかったのだそうだ。
俺も流石に「愛こそ全て!」は無理。
脱出チャンスを狙っていた所にレニフェル様がやってきたから乗っかったのですね。すげぇ行動力。
「ラキアラス王国はいいですわね。創世神信仰は様々な思想をおおらかに受け入れていて素晴らしいですわ」
暫くは王都や学園内の図書館をめぐっては歴史書や軍記などを読み漁っていたのだが、俺が魔研に滞在する事をどこかから聞いたらしく訪ねてきた。
メディナツロヒェン嬢にも(レニフェル様に漏れるから)教えていない情報をどこから…
「学園内外の図書館を巡りましたが、蔵書に偏りがないのが嬉しかったですわ。メロメ国は恋愛ものしかないので他の種類の本が自由に読める環境はわたくしの理想だったのです。それに統一規格で分類されているのも素晴らしいですわ。館内地図で求めている書物の書架を探せるなんて…」
ラキアラス王国の図書館はいかがですか?と聞いたらスイッチが入ったらしく、素晴らしき本の世界を目いっぱい語られてしまった。
「王女様…?」
「ああ、すみません。聞いていただけるのが嬉しくて、一人で話してしまいましたわ」
語るだけなら聞き流すので大丈夫です。ご用件をお伺いしたいのです。
「魔法研究学には独自の収集品(本)があると聞きましたの。床が抜けるほどの蔵書なんて見たいに決まっているではないですか!」
そのブレなさは応援したくなる。
ルキスラ教授に許可を取り、書庫に案内してもらった(俺も初めて行った)ら引くほど本が積まれていた。
イニフィリノリス王女はもちろん大喜び。
ルキスラ教授も「書庫で喜ばれたのは初めてです」と、悪い気はしないという表情で受け入れた。
メロメ国には無い種類の(膨大な量の)書物。魔研という限られた者しか訪れない環境。王女様が利用するならと書架整理担当が増員されたこと(元々居た魔研の司書さんが大層喜んだ)。諸々の理由があり、イニフィリノリス王女が朝から夕暮れまで滞在することになった。
ひたすら本を読み漁っているだけなので「キリのいいところで終わりましょう」と帰りの時間前に声をかけるだけでいい。
書庫は片付くし、可愛い王女様の姿で癒される学生がいい所を見せようとやる気を出すし、今のところプラスしかない。
授業の進度を伝えるためにやってきたアスベル君がイニフィリノリス王女に一目惚れして尽くし始めるのも可愛いものですよ。
平和って、素晴らしいね。
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