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屍の騎士
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何事もないことを願っていたにもかかわらず、目の前に複数の厄介ごとが立ちふさがっている。
唯一の救いは目の前で隊列を組んで立ちふさがっている奴らが帝国騎士団の鎧を着ていることぐらいだ。こっちには帝国の使者がいる、説得すれば穏便に済ませてくれるはずだ。
俺の思惑を再現するように、ミランダが止まった馬車の前に躍り出た。
「我が名は、ミランダ・オースティン!帝国騎士団団長にして、剣神の名を持つ者なり!。同志達よ、この者達は我が国救う手助けをしてくださるためここにやって来てくださった!。さあ、道を開けよ!」
俺から聞いても惚れ惚れするような美声による演説もどきだったが、騎士達は一向に道を開ける気配がない。
「どうした、同志達よ!」
ミランダが不可解に思い、騎士達に近づこうすると、ジンがそれを手で制した。
「待てミランダ。様子がおかしい……」
ジンがそう言うと同時に騎士達がものすごい勢いでこちらに斬りかかって来た。
ジンとミランダが慌てて剣で受け止めると、2人の顔が驚愕に染まった。そして、馬車の中で見ていた俺たちも驚きに包まれた。
「こいつ、グールか!」
ジンの言う通り、その騎士達は揃いも揃ってグールになっていたのだ。だが、気付いた時にはもう遅く、グールの牙がジンに届こうとしたその時、
そのグールの眉間に穴が空いた。
「助かったよ、レベッカ」
「世話の……焼ける」
グールの眉間を撃ち抜いたのはレベッカだった。あの場面でよく正確に狙えたものだと感心するが、今思えば彼女は世界最高の狙撃手の肩書きを持っている、それであれば当然といえよう。今も現に恐ろしい速さで、グールを屠っていっている。
「フォルン、私たちも手伝いましょう」
レイが熱に当てられたのか、俺にそんな提案をしてくるが、ここは否定しておく。
「いや、こっちは本職に任せよう。それよりも俺たちはこっちだ」
そう言って俺は、レイに向かって銃を構えた。
「え?」
彼女の疑問の声を無視して、引き金を引く。反射的に彼女は目をつむるが、いつまでたっても死の実感が湧いてこないのか、目を開けると、後ろで一体のグールが倒れた。
「油断するな、後ろからも来ている」
「ごめんなさい、次からは注意するわ」
彼女の顔が引き締まると、腰から剣を抜き放つ。
俺は一様、レベッカに断りを入れておくとしよう。
「すみません、後ろからも来ているようなので、俺たちで殲滅してきます」
「どうぞ………ご自由……に」
彼女はライフルを撃ちながら、素っ気なく答えた。こいつがこんな態度なのは昔からなので、ほっておいて俺は馬車から降りた。
武器は調達済みだ、問題なく戦える。俺は腰のホルスターから先ほど箱から出した銃を構えた。
「さて、面倒なことになった」
切り出したはいいがいかんせん量が多い、しかも例外なく鎧を着ているため、的確に隙間を狙わなければならず、俺にとっては少し不利な状況だ。
「弱音を吐かない、なんとかしましょう」
レイがやる気満々なので、俺も半ば引きずられる感じで、グールの群れに突っ込んでいった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1時間ほど戦って、やっと全てのグールを殲滅することができた。
ミランダが確認したところ、やはりこいつらはグール化した騎士団員達らしい。この近くの駐屯所があるらしく、おそらくそこが襲撃されたと見られるらしい。
「ひとまずは、帝都に急ごう。このぶんでは、心配だ」
全員が頷くと、馬車に乗り、帝都に急いで向かった。
「フォルン、どうかした?」
道中、俺がよほど何か思わせぶりな顔をしていたのか、レイが少し 訝しげに話しかけてきた。
「いや、今回といい、この前といい、グール関係の騒動が多すぎる。これだけはやめてほしいが、吸血鬼族が関わっているのかもしれない」
「それの何がいけないの?」
「吸血鬼は個体数が少ないが、純血種が1人いるだけで、最悪街が一つ滅ぶ。これだけの数のグールだ、もし絡んでいるとしたら、1人ではきかないだろう、そうなった場合、人間である俺たちの方が不利だ」
「でも、流石にそれはないでしょう。そもそも、グールを同族の恥だと思っている連中がどうしてわざわざグールを作るような真似をするの?、おそらく今回は関わっていないわ」
「………そうだな、俺の考えすぎのようだ」
表面上は一応レイの意見を肯定しておいたが、やはり一度抱いたものは簡単には消えることはなく、俺の心に一抹の不安を残し続けた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
しばらく時間が経って、森を抜けたため、帝国を囲う外壁の一角が見えてきた。
「おい、あれ!」
すると突然、今まで空気と化してきたミランダの連れの男が血相を変えて叫んだ。
俺たちがその視線の先を見ると、目を見開いた。
外壁を沿うように大量のグールが群がっていたのだ。衛士達が必死に応戦していたのか、大量の屍が積まれているが、むしろそれを土台にして、外壁を登り切ろうとしている、よく見ると登ってこようとしているグールを衛士達が必死に長槍で叩き落としている。だが、量が量だけにこれではいずれ突破されるだろう。
「ジン、急いでくれ!、このままじゃ一般市民が危ない!」
「無理だ!これ以上の速さは馬ではだせん!」
「なら、俺が直接行く!」
「アルカード!、一人で行くな!」
ジンの制止も聞かずアルカードは魔力を身にまとい帝都に向けて走っていった。
「クソ!、俺たちも行くぞ!」
ジンとレベッカ、それにミランダもアルカードと同様に全身に魔力を纏い、身体能力を強化する。
「お前達は、後から来い」
ジンはそれだけ言い残して、レベッカ達と行ってしまった。
「なあ、レイ」
「何?」
「俺たち、来る意味あった?」
「無かったかもしれないわね……」
どんどん遠ざかって行く、王国騎士団員プラスαを見ながら、俺たちは二人揃ってため息を吐いた。
馬車を走らせて、40分ほどの距離、さて、着く頃には終わっていることだろう。
少し気だるさを覚えながら、俺は馬車の手綱を掴んだ。
唯一の救いは目の前で隊列を組んで立ちふさがっている奴らが帝国騎士団の鎧を着ていることぐらいだ。こっちには帝国の使者がいる、説得すれば穏便に済ませてくれるはずだ。
俺の思惑を再現するように、ミランダが止まった馬車の前に躍り出た。
「我が名は、ミランダ・オースティン!帝国騎士団団長にして、剣神の名を持つ者なり!。同志達よ、この者達は我が国救う手助けをしてくださるためここにやって来てくださった!。さあ、道を開けよ!」
俺から聞いても惚れ惚れするような美声による演説もどきだったが、騎士達は一向に道を開ける気配がない。
「どうした、同志達よ!」
ミランダが不可解に思い、騎士達に近づこうすると、ジンがそれを手で制した。
「待てミランダ。様子がおかしい……」
ジンがそう言うと同時に騎士達がものすごい勢いでこちらに斬りかかって来た。
ジンとミランダが慌てて剣で受け止めると、2人の顔が驚愕に染まった。そして、馬車の中で見ていた俺たちも驚きに包まれた。
「こいつ、グールか!」
ジンの言う通り、その騎士達は揃いも揃ってグールになっていたのだ。だが、気付いた時にはもう遅く、グールの牙がジンに届こうとしたその時、
そのグールの眉間に穴が空いた。
「助かったよ、レベッカ」
「世話の……焼ける」
グールの眉間を撃ち抜いたのはレベッカだった。あの場面でよく正確に狙えたものだと感心するが、今思えば彼女は世界最高の狙撃手の肩書きを持っている、それであれば当然といえよう。今も現に恐ろしい速さで、グールを屠っていっている。
「フォルン、私たちも手伝いましょう」
レイが熱に当てられたのか、俺にそんな提案をしてくるが、ここは否定しておく。
「いや、こっちは本職に任せよう。それよりも俺たちはこっちだ」
そう言って俺は、レイに向かって銃を構えた。
「え?」
彼女の疑問の声を無視して、引き金を引く。反射的に彼女は目をつむるが、いつまでたっても死の実感が湧いてこないのか、目を開けると、後ろで一体のグールが倒れた。
「油断するな、後ろからも来ている」
「ごめんなさい、次からは注意するわ」
彼女の顔が引き締まると、腰から剣を抜き放つ。
俺は一様、レベッカに断りを入れておくとしよう。
「すみません、後ろからも来ているようなので、俺たちで殲滅してきます」
「どうぞ………ご自由……に」
彼女はライフルを撃ちながら、素っ気なく答えた。こいつがこんな態度なのは昔からなので、ほっておいて俺は馬車から降りた。
武器は調達済みだ、問題なく戦える。俺は腰のホルスターから先ほど箱から出した銃を構えた。
「さて、面倒なことになった」
切り出したはいいがいかんせん量が多い、しかも例外なく鎧を着ているため、的確に隙間を狙わなければならず、俺にとっては少し不利な状況だ。
「弱音を吐かない、なんとかしましょう」
レイがやる気満々なので、俺も半ば引きずられる感じで、グールの群れに突っ込んでいった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1時間ほど戦って、やっと全てのグールを殲滅することができた。
ミランダが確認したところ、やはりこいつらはグール化した騎士団員達らしい。この近くの駐屯所があるらしく、おそらくそこが襲撃されたと見られるらしい。
「ひとまずは、帝都に急ごう。このぶんでは、心配だ」
全員が頷くと、馬車に乗り、帝都に急いで向かった。
「フォルン、どうかした?」
道中、俺がよほど何か思わせぶりな顔をしていたのか、レイが少し 訝しげに話しかけてきた。
「いや、今回といい、この前といい、グール関係の騒動が多すぎる。これだけはやめてほしいが、吸血鬼族が関わっているのかもしれない」
「それの何がいけないの?」
「吸血鬼は個体数が少ないが、純血種が1人いるだけで、最悪街が一つ滅ぶ。これだけの数のグールだ、もし絡んでいるとしたら、1人ではきかないだろう、そうなった場合、人間である俺たちの方が不利だ」
「でも、流石にそれはないでしょう。そもそも、グールを同族の恥だと思っている連中がどうしてわざわざグールを作るような真似をするの?、おそらく今回は関わっていないわ」
「………そうだな、俺の考えすぎのようだ」
表面上は一応レイの意見を肯定しておいたが、やはり一度抱いたものは簡単には消えることはなく、俺の心に一抹の不安を残し続けた。
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しばらく時間が経って、森を抜けたため、帝国を囲う外壁の一角が見えてきた。
「おい、あれ!」
すると突然、今まで空気と化してきたミランダの連れの男が血相を変えて叫んだ。
俺たちがその視線の先を見ると、目を見開いた。
外壁を沿うように大量のグールが群がっていたのだ。衛士達が必死に応戦していたのか、大量の屍が積まれているが、むしろそれを土台にして、外壁を登り切ろうとしている、よく見ると登ってこようとしているグールを衛士達が必死に長槍で叩き落としている。だが、量が量だけにこれではいずれ突破されるだろう。
「ジン、急いでくれ!、このままじゃ一般市民が危ない!」
「無理だ!これ以上の速さは馬ではだせん!」
「なら、俺が直接行く!」
「アルカード!、一人で行くな!」
ジンの制止も聞かずアルカードは魔力を身にまとい帝都に向けて走っていった。
「クソ!、俺たちも行くぞ!」
ジンとレベッカ、それにミランダもアルカードと同様に全身に魔力を纏い、身体能力を強化する。
「お前達は、後から来い」
ジンはそれだけ言い残して、レベッカ達と行ってしまった。
「なあ、レイ」
「何?」
「俺たち、来る意味あった?」
「無かったかもしれないわね……」
どんどん遠ざかって行く、王国騎士団員プラスαを見ながら、俺たちは二人揃ってため息を吐いた。
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