墜ちた英雄が隠居したが...

キリ

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ガスポート帝国

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 会議室を出ると、廊下の各所にある小窓から夕焼けの光が差し込んでいた。気づかなかったが、割と長い時間篭っていたらしい。
 俺たち2人は無言で、廊下を歩く靴の音だけがしている。何が言いたいかというと、非常に気まずいのだ。
 別にそれが困るという訳ではないが、これではさっきの会議の内容を聞くことができない。
 どう話を切り出すべきかと、考えていると、不意にレイから話しかけられた。

「ねえ……」

「なんだ?」

「今回のガスポート帝国への武力支援の任務についてだけれど、私にも務まると思う?」

「できるだろ、話を聞いた限りじゃ、厄介な相手は全部騎士団が受け持ってくれるそうじゃないか、何も問題はない」

「でも私まだまだ未熟よ、不安で仕方がないわ」

「大丈夫だ。この程度でへこたれるようなら、Aクラスのギルドで副リーダーなんてしてないだろ?」

「それを言うのはずるいわ。無理やりやらさせたのよ、騎士団員の妹だからって」

「なぜ?」

「みんな心のどこかで期待してるのよ、私が姉と同じように、大きなことを成し遂げることを。全く、迷惑なことこの上ないわ……」

「まあ、気にすんな。お前はお前だ」

「別に姉に嫉妬している訳じゃないわ。ただ、少し劣等感があるだけよ…………ここでお別れね、また明日」

 ちなみに俺たちは明日すぐにこの国を出なければならないらしいので、泊まりはこの王城の部屋を使わせてもらえるらしい、レイからの情報だ。
 この王城にある部屋にしてはやけに質素な部屋だが、俺も昔はこういう場所で寝泊まりして、日々仕事に励んでいたものだ。
 ちなみにこのことを通信石でアレクたちに伝えると、すごく羨ましがられ、挙げ句の果てには石から恨み言が流れてきたので、慌てて別れ挨拶をして、通信を断ち切ったのはまた別の話だ。
 
 荷物を放り投げ、下着だけになると、ベッドに倒れこんだ。
 何もしていないのに、妙に疲れる1日だった。最近こればかりだ、もう年だろうか、まだ16歳なんだがな。
 暗い考えを断ち切るように、眠気と戦うことをやめ、俺はまぶたを閉じた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 眠りの中、誰かの声がした。懐かしい声だ。一体誰の声だっただろうか、どうしても思い出せない。

「………主様………私を使って…………お願い……あなたが使って…………お願い……使って…………あなたがいい…………………もう一度…………手に取って……取って…取って……取って………取って……………」

 その声が徐々に木霊してくると、俺は目を覚ました。
 特に悪夢にうなされた後の気持ち悪い目覚めではなく、むしろ心地いい目覚めだった。
 さっきは夢の中だから忘れていたが、あの声の持ち主はしっかりと覚えている。

「………まさかな、絆は断ち切った」

 その可能性を即座に否定し、おれは身支度を始めた。集合は1時間後、まだ全然余裕があるが、身支度を整えている最中にある重大な問題に気づいた。

「装備がない」

 そう、グールとの戦いの時に、武器が全て使い物にならなくなったので、投棄してきたのだ。あの時は少しでも身軽にしたかったため、仕方がなかったとはいえ、俺は己の浅はかさに内心舌打ちした。
 すぐさま、トランクを開け、中に入っている生活用品を全て外に放り出し、空になったトランクの底を外す、俺は普段不測の事態に備え武装は見つからないようにここに入れているのだ。
 中を確認すると、短剣よりも小ぶりなナイフが一本と、銃身が短いリボルバーが一丁だけだった。

「こうなることがわかっていれば、もっと持ってきたのに」

 ため息をつき、仕方なくナイフとリボルバー、そして、一緒に入っている鞘とホルスターを取り出し、装備する。普段と重さが違うが、まあ、なれるだろう。
 そうこうしているうちに時間が迫っていたので、急いでトランクの中に生活用品を詰め込み、その部屋を後にした。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 かなり慌てて(見た目ではわからないが)馬車の待つ場所に着くと、ジンが全員の安否を確認して、馬車は帝国に向けて発車した。
 
「その箱に装備が入っている。欲しい奴は勝手に取っていけ」

 馬車内でのその言葉を聞いた途端、俺はすぐさま箱を開け、中を確認した。
 お目当の物があることを確認すると、箱から出し、不備がないかチェックしていく。

「すごい食いつきようね」

 レイが呆れたように俺に対して呟く。

「こっちは金がないんだ。貰えるものは貰っとく」

 中に入っている弾丸の箱も数箱取り出し、短剣も二本いただいた。

「学校から支給される奨学金はどうしたのよ?」

「世話になってた教会に仕送り。孤児達に美味いもの食わせてやりたいからな」

「教会?」

「俺はこれでも元神父だ」

「へ、へえ。意外なものね」

 今日一で驚いた顔をされ、少しショックを覚えたが、気にせずに装備を整えておく。

 しかし、揺れる馬車の中で俺は、今回だけは何も起こらないように密かに願っていたのだが、やはり効果はなかったようだ。

 馬車の前方から鎧を着た集団がせまってきている。
 
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