27 / 46
ガスポート帝国
しおりを挟む
会議室を出ると、廊下の各所にある小窓から夕焼けの光が差し込んでいた。気づかなかったが、割と長い時間篭っていたらしい。
俺たち2人は無言で、廊下を歩く靴の音だけがしている。何が言いたいかというと、非常に気まずいのだ。
別にそれが困るという訳ではないが、これではさっきの会議の内容を聞くことができない。
どう話を切り出すべきかと、考えていると、不意にレイから話しかけられた。
「ねえ……」
「なんだ?」
「今回のガスポート帝国への武力支援の任務についてだけれど、私にも務まると思う?」
「できるだろ、話を聞いた限りじゃ、厄介な相手は全部騎士団が受け持ってくれるそうじゃないか、何も問題はない」
「でも私まだまだ未熟よ、不安で仕方がないわ」
「大丈夫だ。この程度でへこたれるようなら、Aクラスのギルドで副リーダーなんてしてないだろ?」
「それを言うのはずるいわ。無理やりやらさせたのよ、騎士団員の妹だからって」
「なぜ?」
「みんな心のどこかで期待してるのよ、私が姉と同じように、大きなことを成し遂げることを。全く、迷惑なことこの上ないわ……」
「まあ、気にすんな。お前はお前だ」
「別に姉に嫉妬している訳じゃないわ。ただ、少し劣等感があるだけよ…………ここでお別れね、また明日」
ちなみに俺たちは明日すぐにこの国を出なければならないらしいので、泊まりはこの王城の部屋を使わせてもらえるらしい、レイからの情報だ。
この王城にある部屋にしてはやけに質素な部屋だが、俺も昔はこういう場所で寝泊まりして、日々仕事に励んでいたものだ。
ちなみにこのことを通信石でアレクたちに伝えると、すごく羨ましがられ、挙げ句の果てには石から恨み言が流れてきたので、慌てて別れ挨拶をして、通信を断ち切ったのはまた別の話だ。
荷物を放り投げ、下着だけになると、ベッドに倒れこんだ。
何もしていないのに、妙に疲れる1日だった。最近こればかりだ、もう年だろうか、まだ16歳なんだがな。
暗い考えを断ち切るように、眠気と戦うことをやめ、俺はまぶたを閉じた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
眠りの中、誰かの声がした。懐かしい声だ。一体誰の声だっただろうか、どうしても思い出せない。
「………主様………私を使って…………お願い……あなたが使って…………お願い……使って…………あなたがいい…………………もう一度…………手に取って……取って…取って……取って………取って……………」
その声が徐々に木霊してくると、俺は目を覚ました。
特に悪夢にうなされた後の気持ち悪い目覚めではなく、むしろ心地いい目覚めだった。
さっきは夢の中だから忘れていたが、あの声の持ち主はしっかりと覚えている。
「………まさかな、絆は断ち切った」
その可能性を即座に否定し、おれは身支度を始めた。集合は1時間後、まだ全然余裕があるが、身支度を整えている最中にある重大な問題に気づいた。
「装備がない」
そう、グールとの戦いの時に、武器が全て使い物にならなくなったので、投棄してきたのだ。あの時は少しでも身軽にしたかったため、仕方がなかったとはいえ、俺は己の浅はかさに内心舌打ちした。
すぐさま、トランクを開け、中に入っている生活用品を全て外に放り出し、空になったトランクの底を外す、俺は普段不測の事態に備え武装は見つからないようにここに入れているのだ。
中を確認すると、短剣よりも小ぶりなナイフが一本と、銃身が短いリボルバーが一丁だけだった。
「こうなることがわかっていれば、もっと持ってきたのに」
ため息をつき、仕方なくナイフとリボルバー、そして、一緒に入っている鞘とホルスターを取り出し、装備する。普段と重さが違うが、まあ、なれるだろう。
そうこうしているうちに時間が迫っていたので、急いでトランクの中に生活用品を詰め込み、その部屋を後にした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
かなり慌てて(見た目ではわからないが)馬車の待つ場所に着くと、ジンが全員の安否を確認して、馬車は帝国に向けて発車した。
「その箱に装備が入っている。欲しい奴は勝手に取っていけ」
馬車内でのその言葉を聞いた途端、俺はすぐさま箱を開け、中を確認した。
お目当の物があることを確認すると、箱から出し、不備がないかチェックしていく。
「すごい食いつきようね」
レイが呆れたように俺に対して呟く。
「こっちは金がないんだ。貰えるものは貰っとく」
中に入っている弾丸の箱も数箱取り出し、短剣も二本いただいた。
「学校から支給される奨学金はどうしたのよ?」
「世話になってた教会に仕送り。孤児達に美味いもの食わせてやりたいからな」
「教会?」
「俺はこれでも元神父だ」
「へ、へえ。意外なものね」
今日一で驚いた顔をされ、少しショックを覚えたが、気にせずに装備を整えておく。
しかし、揺れる馬車の中で俺は、今回だけは何も起こらないように密かに願っていたのだが、やはり効果はなかったようだ。
馬車の前方から鎧を着た集団がせまってきている。
俺たち2人は無言で、廊下を歩く靴の音だけがしている。何が言いたいかというと、非常に気まずいのだ。
別にそれが困るという訳ではないが、これではさっきの会議の内容を聞くことができない。
どう話を切り出すべきかと、考えていると、不意にレイから話しかけられた。
「ねえ……」
「なんだ?」
「今回のガスポート帝国への武力支援の任務についてだけれど、私にも務まると思う?」
「できるだろ、話を聞いた限りじゃ、厄介な相手は全部騎士団が受け持ってくれるそうじゃないか、何も問題はない」
「でも私まだまだ未熟よ、不安で仕方がないわ」
「大丈夫だ。この程度でへこたれるようなら、Aクラスのギルドで副リーダーなんてしてないだろ?」
「それを言うのはずるいわ。無理やりやらさせたのよ、騎士団員の妹だからって」
「なぜ?」
「みんな心のどこかで期待してるのよ、私が姉と同じように、大きなことを成し遂げることを。全く、迷惑なことこの上ないわ……」
「まあ、気にすんな。お前はお前だ」
「別に姉に嫉妬している訳じゃないわ。ただ、少し劣等感があるだけよ…………ここでお別れね、また明日」
ちなみに俺たちは明日すぐにこの国を出なければならないらしいので、泊まりはこの王城の部屋を使わせてもらえるらしい、レイからの情報だ。
この王城にある部屋にしてはやけに質素な部屋だが、俺も昔はこういう場所で寝泊まりして、日々仕事に励んでいたものだ。
ちなみにこのことを通信石でアレクたちに伝えると、すごく羨ましがられ、挙げ句の果てには石から恨み言が流れてきたので、慌てて別れ挨拶をして、通信を断ち切ったのはまた別の話だ。
荷物を放り投げ、下着だけになると、ベッドに倒れこんだ。
何もしていないのに、妙に疲れる1日だった。最近こればかりだ、もう年だろうか、まだ16歳なんだがな。
暗い考えを断ち切るように、眠気と戦うことをやめ、俺はまぶたを閉じた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
眠りの中、誰かの声がした。懐かしい声だ。一体誰の声だっただろうか、どうしても思い出せない。
「………主様………私を使って…………お願い……あなたが使って…………お願い……使って…………あなたがいい…………………もう一度…………手に取って……取って…取って……取って………取って……………」
その声が徐々に木霊してくると、俺は目を覚ました。
特に悪夢にうなされた後の気持ち悪い目覚めではなく、むしろ心地いい目覚めだった。
さっきは夢の中だから忘れていたが、あの声の持ち主はしっかりと覚えている。
「………まさかな、絆は断ち切った」
その可能性を即座に否定し、おれは身支度を始めた。集合は1時間後、まだ全然余裕があるが、身支度を整えている最中にある重大な問題に気づいた。
「装備がない」
そう、グールとの戦いの時に、武器が全て使い物にならなくなったので、投棄してきたのだ。あの時は少しでも身軽にしたかったため、仕方がなかったとはいえ、俺は己の浅はかさに内心舌打ちした。
すぐさま、トランクを開け、中に入っている生活用品を全て外に放り出し、空になったトランクの底を外す、俺は普段不測の事態に備え武装は見つからないようにここに入れているのだ。
中を確認すると、短剣よりも小ぶりなナイフが一本と、銃身が短いリボルバーが一丁だけだった。
「こうなることがわかっていれば、もっと持ってきたのに」
ため息をつき、仕方なくナイフとリボルバー、そして、一緒に入っている鞘とホルスターを取り出し、装備する。普段と重さが違うが、まあ、なれるだろう。
そうこうしているうちに時間が迫っていたので、急いでトランクの中に生活用品を詰め込み、その部屋を後にした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
かなり慌てて(見た目ではわからないが)馬車の待つ場所に着くと、ジンが全員の安否を確認して、馬車は帝国に向けて発車した。
「その箱に装備が入っている。欲しい奴は勝手に取っていけ」
馬車内でのその言葉を聞いた途端、俺はすぐさま箱を開け、中を確認した。
お目当の物があることを確認すると、箱から出し、不備がないかチェックしていく。
「すごい食いつきようね」
レイが呆れたように俺に対して呟く。
「こっちは金がないんだ。貰えるものは貰っとく」
中に入っている弾丸の箱も数箱取り出し、短剣も二本いただいた。
「学校から支給される奨学金はどうしたのよ?」
「世話になってた教会に仕送り。孤児達に美味いもの食わせてやりたいからな」
「教会?」
「俺はこれでも元神父だ」
「へ、へえ。意外なものね」
今日一で驚いた顔をされ、少しショックを覚えたが、気にせずに装備を整えておく。
しかし、揺れる馬車の中で俺は、今回だけは何も起こらないように密かに願っていたのだが、やはり効果はなかったようだ。
馬車の前方から鎧を着た集団がせまってきている。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………
naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話………
でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ?
まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら?
少女はパタンッと本を閉じる。
そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて──
アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな!
くははははっ!!!
静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。
亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。
しかし皆は知らないのだ
ティファが、ロードサファルの王女だとは。
そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる