墜ちた英雄が隠居したが...

キリ

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迷宮からの脱出

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「全国家警戒対象だと?、何だそれは?」

 全員の顔が一斉にスターの方に向く。

「あんたそれマジで言ってんの?、常識でしょ」

「なぜ俺がそんな事を知っておかなければならないんだ!」

 俺は言い合いになりそうになるチセとスターを手で制すると、説明することにした。

「警戒対象っていうのは、ある一定の災害基準を満たした魔獣に対して、見つけた場合、討伐せずに避難しろというものだ。全国家が付いている場合は、すべての国で統一してその魔獣を危険視しろというものだ」

「それがさっきの奴というわけか?」

「ああ、そうだ。危険度SSというだけでお前らでも危険だとわかるだろ?」

「それはまあ……でも、どうして警戒対象になっているんですか?、確かに恐ろしい姿でしたけど、そこまで危険そうには見えませんでしたよ?」

「見かけはゴーストとさほど変わらんからな、でもあいつ一体だけで国一つ滅ぼした」

 まずいな、口が滑った。これでは逃げる希望がないといっているようなものだ。
 
「今はあいつのことはどうでもいいだろう。問題はどう脱出するかだ。違うか?」

 一同は暗い顔ののまま頷いた。

 話し合った結果、中央突破を選択した。カースシャドウは足が遅い。よって、他の魔獣は無視して、走り抜ける事を提案したわけだ。
 その旨を話したところ、全員一致で承諾してくれた。みんな早くここを出たいそうだ。

「じゃあ行くぞ、俺のことは気にせずに走り続けろ。決して振り返るなよ」

 俺は念を押して、他の奴らを先頭に走り出した。
 左手の痛みのせいで思うように走れないが、それでも遅れを取るほどの痛手ではない。

 俺はさらに速度を上げた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 拍子抜けだ。驚くほどにあっさりと出口の穴についた。
 途中に魔獣に襲われることもなく、安全に走破することができたし、肝心のカーシャドウも追っては来なかった。

 やはり100mほどの穴だと上にある穴から射す光の輪が小さく見える。
 俺たちは先人が残していったロープをたどって地上に戻ることにした。

「先に行け。この腕では遅れてしまうからなからな」

 他の奴らは頷くと、ロープを登り始めた。
 そして、最後の一人が登った事を確認すると、俺も登り始めた。

 やはり、両足を壁につけての片腕だけで固定するのは難しい。出来なくはないがな。
 腕を休めるために近場の出っ張りに足を置いた。

「きつい、想像以上だな」

 他の奴らはもう出口付近まで迫っている。最悪登りきれなかったら、ロープを引っ張って貰えばいいだろう。
 手を振って痺れを紛らわしていると、あることに気づいた。

「………影が、デカくないか?」

 いくら光が底から100mの場所とはいえ、今俺がいる20m地点で光が全く届かないことなどあるのか。
 しかも、底が一切見えないほどの暗闇になるものなのか。
 考えられる可能性は一つしかない。

「カースシャドウだ!、引き上げてくれ!」

 俺はロープを体に巻きつけると、ぶら下がった。
 体徐々に上に上がって行く中、下に向けて閃光弾を投げる。
 激しい光とともに、影にポッカリと穴が開いて、消えて無くなった。

 これで終わるわけない。必ずまた来る。

「あと少しだ!」

 俺はそう叫ぶと、上がる速度が少し上がった。
 
 そして、あと少しというところで、右足に鋭い痛みが走った。

「ぐぅぅ………ああ!」

 俺は残りの閃光弾を今度は握ったまま至近距離で炸裂させた。
 そして、その光を直で受けたカースシャドウは雲散霧消し、姿を消した。

 引き上げられた俺は、地面に横たえられた。
 
「うぅ……うぐっ………ぐっ」

 包帯を取り出し巻きつけると、右手と口を使って結んだ。
 
「大丈夫なんですか?、それ……」

 ルナは俺の傷を指差して、そう言った。
 確かに酷い有様だ。火傷のようだが、普通のものと違って、炭のように黒ずんでしまっている。もう感覚がほぼ無い。

「あ~………こいつは呪いだ。神聖属性の治癒がいる」

「それなら教会ですね、すぐに行きましょう!」

 それはあっているのだが、少し不満があるな。

「待て。どの神殿に連れて行くつもりだ?」

「え?、そんなのヘイロー神の神殿に決まってるじゃないですか」

 やはりか。あのいけ好かない神のいる神殿になんぞ行きたくはない。

「すまん、そこの信教者じゃないんだ。アマテル神の神殿へ行ってくれるとありがたい」

 四柱いるうちの最も信教者の少ない神だが、俺に言わせてみれば、あの神が一番信用できる。
 もちろん、その神殿にいる聖女もな。

「そうですか。ではそちらに向かいましょう」

「すまんな、助かる」

 俺はルナの肩を借りて、アマテル神殿に向かった。
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