泣いて、笑って、恋した手のひら小話

猫戸針子

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ヴァンパイアの愛は牙の痛み

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「今宵は貴女を貰い受けに来ました」
幾度も逢瀬を重ねた赤い目の人がそう告げた。待っていた言葉がこの人を苦しめていることを分かっていても、私は…。
ドレスを広げ会釈すると、彼はやや面食らった表情になる。
「私と踊ってくださらない?」
喜んでこの身を。でも、後ほんの少しだけそばに居たい。
「ええ、喜んで。美しい人」
微笑んで差し出した手を彼は迷いながらも優雅に取り、私の背を支えゆったり踊り出す。音はなくとも曲は二人の中に流れている。
「もう……待てない…」
赤い目が切なげに光る。その輝きに私は魅了され目を閉じる。

ザク…

私の首筋に当てられた彼の牙が私を吸い上げる。心地良さすら感じるその行為によって彼への深い愛が込み上げ、酔いしれるほどの幸福感に恍惚とする。
「なぜあなたは抵抗しないっ…」
口を離し顔を上げた彼の苦しげに歪む顔。私はそっと頬に手を当てた。
「私ができる最大の愛情表現だから」

***

彼女に魅せられてから幾夜も逢瀬を重ねる内に、自分の獰猛な本能に抗えなくなっていた。彼女の元を去るべきか。だがそうするにはもう愛しすぎていた。
愛していれば全てが欲しい。
「あなたを得て、あなたを失ってしまう…」
それでも喉の渇きは止められない。残酷な本能。
暗闇でも輝く無垢なる彼女の微笑み。
再び白い首筋に牙を立てた。
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