AT LONG LAST

伊崎夢玖

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第二章

side一縷 ㊻

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ホテルから借りた防犯カメラの映像、忘年会で使用されたグラス、目撃証言などを集めて、警察署で被害届を提出した。
蒼はこのことは知らない。
これは俺の一存だった。
それだけ飯田のことを許せずにいた。
蒼の心をあんなに壊したんだ。
許してもらえると思ってほしくなかった。
現在の法律では、α、βによるΩに対する暴行事件は必ず捜査が行われる。
これで、警察から飯田に対して事情聴取の連絡が会社に行くはずだ。
(蒼がどれだけ苦しんだか、こんなもんで済むと思うなよ…)
悶々と思いながら、家に到着する。
玄関をくぐると、蒼が出迎えてくれた。
「おかえり、いち」
「ただいま、あお」
「どこにお出かけしてたの?」
「警察署までな」
「もしかして…」
「うん。あおの許可なくだけど、被害届出してきた」
「……そっか」
「勝手なことしてごめんな?」
「ううん。僕のことを思ってのことでしょ?ありがとう」
蒼がそっと抱きついてきた。
「今度こそは俺がちゃんと守るから」
俺は少し力を入れて蒼を抱きしめた。
翌日、大学時代の友人で今は弁護士をしている多田《おおた》に連絡を入れた。
「――――と言うことで、弁護をお願いしたいんだが…」
『了解した。あとはどうするんだ?』
「どうとは?」
『一番可能性があるのは、相手の方から示談の連絡が来ると思うが…』
「できれば示談には応じたくない」
『それはお前の考えだろ?』
「そうだけど…」
『蒼さんとも話し合って決めろ。それからでも遅くない』
「分かった。ちゃんと話し合ってみるよ。決まったらまた連絡する」
『了解した』
その日の夜、多田に言われた通り、蒼と話し合いをした。
「あお、少し話いいか?」
「どうしたの?改まって…」
「飯田の件なんだ…」
「うん?」
「交渉には俺の大学時代の友人に弁護士をしている奴がいて、そいつにお願いした」
「うん」
「あおはどうしたい?」
「何を?」
「飯田をどうしたい?極刑にしたい?示談に応じたい?」
「…………分からない。けど、話を聞いてみたい」
「話?」
「どうしてあんなことをしたのかっていう話」
「それを聞いて決めたいのか?」
「うん。じゃなきゃ分からないこともあると思うんだ」
「分かった。そのように伝えておくよ」
「お願いします」
相手からは予想通り示談交渉が持ち掛けられてきた。
多田にはとりあえず話し合いの場を設けてもらえるよう手配してもらった。
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