AT LONG LAST

伊崎夢玖

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第二章

side蒼 56

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すごく不安でいっぱいだったあの日以来、少しは親としての自覚が出てきた。
あれから二度検診のために病院に受診した。
Ω専門の産科に受診しているため、周りは女性ばかりというわけでない。
多少男性もいる。
中にはお腹の大きい人もいる。
最初のうちは臆していたけど、最近はやっと慣れてきた。
今日の受診で、そのお腹の大きい人が腕に小さい子供を抱いていた。
旦那さんの人も一緒にいて、すごく幸せそうだった。
今五か月目に入ったところだから、あと五か月もすれば、自分も同じような体験をする。
そう思うと、早くお腹の子に会いたくなった。

検診では特に異常もなく、順調に育っているとのことだった。
電車で行くには危険だと一縷に怒られて以来、毎回タクシーで家まで往復している。
家に帰ると、一縷が珍しく家にいた。
帰ってくるにはだいぶ早い時間である。
「おかえり、あお。どうだった?」
「ただいま、いち。問題ないって。元気に育ってるって」
「そうか。よかったな」
「うん。また来月行かなきゃ」
「来月は時間合わせられるように仕事調節するからな」
「大丈夫だよ。いちの仕事今忙しい時期じゃないの?」
「そうだけど…」
「もう少ししたら一緒に来て?今はまだ大丈夫だから」
「…うん、分かった」
一縷は少し不服そうな顔をしながらも了承してくれた。
今の時期、すごく忙しいことを知っている。
時間を作るために無理して仕事をするに違いない。
だからこそ周りに迷惑をかけないように無理をして仕事をしてほしくなかった。

そんな忙しいにもかかわらず、一縷は両家に子供ができた報告をしについて来てくれた。
僕の家はすごく喜んでくれていた。
やっぱり僕が再判定でΩだと分かった時、毅然と受け止めてくれていると思っていたけれど、Ωの辛さを聞いて知っていたからこそ、受け止められずにいた部分もあったはず。
そんな僕が人並みに幸せを手に入れられた。
それが嬉しかったんだと思う。
今まで苦労をかけた分、少しでも親孝行ができるといいな。
なんて生意気なことを少し思った。

翌月の検診で、一縷は無理矢理時間を作ってついてきた。
最近週の半分くらい残業しているからおかしいとは思ったけど、もう遅い。
どんなことをしているのかも知りたかったみたいだから、ちょうどいいと言えばちょうどいいのかもしれない。
待合所で順番を待っていると、すぐに順番が来た。
診察室に入り、超音波検査を受ける。
検査が始まると、一縷はモニターをずっと見ている。
(初めて見る我が子に感動している?)
普段では絶対見せないような顔でずっとモニターを見ているからおかしくなってきた。
「どうしたの?大丈夫?」
「…何か俺が本当に父親なんだなぁってやっと実感した」
「今更?」
「うん…本当に蒼のお腹の中に子供がいるんだな…」
「そうだよ。ここに僕といちの子がいるんだよ」
僕は悪阻とかでお腹に子供がいると感じていたけど、一縷はこうやって初めてお腹に子供がいると知ることになる。
親になると思ってはいても、実感が湧かなかったのも頷ける。
ずっとモニターを見続ける一縷を愛おしいと思いながら、今日ついて来てもらってよかったと素直に思える自分もいた。
無意識にお腹に手を置いて撫でていた。
すると一縷も僕の手の上に手を置いて一緒に撫でていた。
こんな幸せをこの子がもたらしてくれたと思うと、本当に天使っているのかもしれないと思えた。
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