AT LONG LAST

伊崎夢玖

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第二章

side一縷 51

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不安いっぱいだった蒼もあの日以降落ち込む事なく、日々家事をこなしてくれている。
相変わらず悪阻は酷いようで、吐き気を催してトイレに駆け込むことが多々あった。
それでも、お腹の中で成長している子供の状態を検診で知ることで、少しずつ蒼の中で親になる覚悟が芽生え始めた。

今日は検診の日。
「おかえり、あお。どうだった?」
「ただいま、いち。問題ないって。元気に育ってるって」
「そうか。よかったな」
「うん。また来月行かなきゃ」
「来月は時間合わせられるように仕事調節するからな」
「大丈夫だよ。いちの仕事今忙しい時期じゃないの?」
「そうだけど…」
「もう少ししたら一緒に来て?今はまだ大丈夫だから」
「…うん、分かった」
蒼は今五か月に入った所。
まだお腹はそこまで目立ってはいない。

両家には先月報告に行った。
両家共に喜んでくれた。
特に蒼の両親はすごく喜んでくれた。
やっぱり蒼がΩだったという再判定結果に蒼だけでなくご両親共にショックを受けていたということ。
蒼がやっと人並みに幸せを掴めた事が嬉しかったようだ。
蒼のお母さんは大粒の涙を流して喜んでくれた。
俺の両親の反応は相変わらずあっさりだったけど、それなりに喜んでくれたようだった。

翌月、蒼にはあぁ言われたけど俺は仕事の都合をつけて検診に同行した。
Ω専門の産科なので、周りは女性ばかりということはなかった。
三割くらいが男性だった。
蒼の順番が来て、診察室に入る。
超音波検査で初めて自分の子供を見た。
本当に蒼のお腹の中に子供がいる。
信じていなかったわけではないけれど、自分の目で確かめるまで現実味がなかった。
本当に俺が父親になる。
呆然とモニターを見ていた俺を蒼が苦笑しながら話しかけてきた。
「どうしたの?大丈夫?」
「…何か俺が本当に父親なんだなぁってやっと実感した」
「今更?」
「うん…本当に蒼のお腹の中に子供がいるんだな…」
「そうだよ。ここに僕といちの子がいるんだよ」
蒼は微笑みながら自分のお腹を撫でる。
俺も無意識に蒼の撫でている手の上に自分の手を重ねて一緒に撫でていた。
まだまだ未熟な父親だけどお腹の子に笑われないようにこれからもっともっと公私共に充実させていこう。
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