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1章 転生勇者は追放される
第六話:死霊の行軍
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王都を脱出し、湿地帯へと抜ける「隠し排水路」の出口、王都を守る結界の向こう側。そこは、静寂ではなく、悍ましい「死の凱歌」に包まれていた。
「……リィン、くるぞ」
アルスの声が、湿った空気を切り裂く。
霧の向こうから現れたのは、数百、いや数千に及ぶ白骨の兵卒(スケルトン)たちだ。その中心、一際濃い死の霧が渦巻く場所に、身の丈5メートルはあろうかという巨影が鎮座していた。
『冥府の騎士(レイス・ロード)』。
かつての戦乱で数千の命を奪い、自らも呪いとなって死地に踏みとどまった「王」の一角である。
「ゆ……う……しゃ」
レイス・ロードが、肉のない顎を鳴らして呻く。
その空虚な眼窩は、アルスの魂に眠る「勇者の輝き」を、そしてリィンが抱える「莫大な魔力の貯蔵庫」を、貪欲に欲していた。
「ギギィィッ!」
一斉に襲いかかる骨の軍勢。アルスは勇者の魔力が込められた重剣を横一文字に薙ぎ払った。
ガキィンッ!
鉄と骨がぶつかり合う、硬質な衝撃音が響く。一振りで十体近くを粉砕するが、敵の数は一向に減らない。それどころか、アルスの剣に宿る魔力が、レイス・ロードの放つ冷気属性に干渉され本来の鋭さを失い始めていた。
「キリがない……」
「アルスさん!」
背後でリィンが叫んだ。彼女の身体から、制御を失った真っ白な魔力が溢れ出している。彼女の「魔導殻」が、周囲の死気とアルスの放つ勇者の覇気に過剰反応し、臨界点に達しようとしていた。
「私の……私の魔力を、使ってください!」
リィンがアルスの背中に駆け寄り、その逞しい腕に、自らの震える手を重ねた。
その瞬間、世界の色が変わった。
「——っ!?」
アルスは息を呑んだ。
リィンの指先が触れた箇所から、冷たい、けれど驚くほど純粋な魔力の奔流が押し寄せる。その魔力はアルスの体内を通り抜け、彼が握る「黒鉄の重剣」へと一直線に収束していった。
キィィィィィィィンッ!!
錆び付いていた黒鉄の表面に、幾何学的な光の紋様が浮かび上がる。
アルスに宿る「勇者の質」を、リィンの「純粋な魔力」が極限まで増幅(ブースト)させる。重剣は眩いばかりの黄金の光を帯びて変貌した。
「これなら……!」
アルスは地を蹴った。
先ほどまでの鈍重さが嘘のように、身体が軽い。黄金の光を纏った一閃が、迫りくるスケルトンの大群を、文字通り「消滅」させていく。触れるだけで塵に還す、圧倒的な浄化の断罪。
「オォォォォォッ!!」
レイス・ロードが、呪いの魔力が込められた大鎌を振り下ろす。
アルスは逃げなかった。光り輝く重剣を、真っ向からその大鎌へと叩きつけた。
ズガーン!!バシュ!
衝撃波が霧を吹き飛ばし、湿地の泥を巻き上げる。
レイス・ロードの「死の力」は、リィンの魔力を上乗せされたアルスの「一撃」に砕け散った。大鎌は粉々に砕ける。
再度切り返す剣で王を気取っていた死霊の胴体は、黄金の閃光によって両断された。
「……ア……、ガ……」
最期の呻きを残し、レイス・ロードは霧散した。
同時に、操られていた数千の骨たちも、糸が切れた人形のように崩れ落ちていく。
バチャバチャバチャバチャ……
「ひゅう……」
アルスは口笛のように息を吐いた。剣から光が消え、再び元の無骨な鉄塊に戻っていく。
隣では、魔力を消耗したリィンが膝を突いて肩で息をしていた。
「リィン、大丈夫か」
「はい……。でも、凄かった。あなたの剣と、私の力が……混ざり合って……」
リィンは自分の掌を不思議そうに見つめた。
二人の資質が組み合わさった時、それは「災厄を呼び寄せる呪い」から、「災厄を打ち砕く唯一の希望」へと変貌したのだ。
しかし、その戦いが生み出した莫大な魔力反応は、遠く離れた場所で、ある男の五感を刺激していた。
「……今のは、なんだ?」
国境の山嶺、暗闇の中で瞳を光らせる影。
「……リィン、くるぞ」
アルスの声が、湿った空気を切り裂く。
霧の向こうから現れたのは、数百、いや数千に及ぶ白骨の兵卒(スケルトン)たちだ。その中心、一際濃い死の霧が渦巻く場所に、身の丈5メートルはあろうかという巨影が鎮座していた。
『冥府の騎士(レイス・ロード)』。
かつての戦乱で数千の命を奪い、自らも呪いとなって死地に踏みとどまった「王」の一角である。
「ゆ……う……しゃ」
レイス・ロードが、肉のない顎を鳴らして呻く。
その空虚な眼窩は、アルスの魂に眠る「勇者の輝き」を、そしてリィンが抱える「莫大な魔力の貯蔵庫」を、貪欲に欲していた。
「ギギィィッ!」
一斉に襲いかかる骨の軍勢。アルスは勇者の魔力が込められた重剣を横一文字に薙ぎ払った。
ガキィンッ!
鉄と骨がぶつかり合う、硬質な衝撃音が響く。一振りで十体近くを粉砕するが、敵の数は一向に減らない。それどころか、アルスの剣に宿る魔力が、レイス・ロードの放つ冷気属性に干渉され本来の鋭さを失い始めていた。
「キリがない……」
「アルスさん!」
背後でリィンが叫んだ。彼女の身体から、制御を失った真っ白な魔力が溢れ出している。彼女の「魔導殻」が、周囲の死気とアルスの放つ勇者の覇気に過剰反応し、臨界点に達しようとしていた。
「私の……私の魔力を、使ってください!」
リィンがアルスの背中に駆け寄り、その逞しい腕に、自らの震える手を重ねた。
その瞬間、世界の色が変わった。
「——っ!?」
アルスは息を呑んだ。
リィンの指先が触れた箇所から、冷たい、けれど驚くほど純粋な魔力の奔流が押し寄せる。その魔力はアルスの体内を通り抜け、彼が握る「黒鉄の重剣」へと一直線に収束していった。
キィィィィィィィンッ!!
錆び付いていた黒鉄の表面に、幾何学的な光の紋様が浮かび上がる。
アルスに宿る「勇者の質」を、リィンの「純粋な魔力」が極限まで増幅(ブースト)させる。重剣は眩いばかりの黄金の光を帯びて変貌した。
「これなら……!」
アルスは地を蹴った。
先ほどまでの鈍重さが嘘のように、身体が軽い。黄金の光を纏った一閃が、迫りくるスケルトンの大群を、文字通り「消滅」させていく。触れるだけで塵に還す、圧倒的な浄化の断罪。
「オォォォォォッ!!」
レイス・ロードが、呪いの魔力が込められた大鎌を振り下ろす。
アルスは逃げなかった。光り輝く重剣を、真っ向からその大鎌へと叩きつけた。
ズガーン!!バシュ!
衝撃波が霧を吹き飛ばし、湿地の泥を巻き上げる。
レイス・ロードの「死の力」は、リィンの魔力を上乗せされたアルスの「一撃」に砕け散った。大鎌は粉々に砕ける。
再度切り返す剣で王を気取っていた死霊の胴体は、黄金の閃光によって両断された。
「……ア……、ガ……」
最期の呻きを残し、レイス・ロードは霧散した。
同時に、操られていた数千の骨たちも、糸が切れた人形のように崩れ落ちていく。
バチャバチャバチャバチャ……
「ひゅう……」
アルスは口笛のように息を吐いた。剣から光が消え、再び元の無骨な鉄塊に戻っていく。
隣では、魔力を消耗したリィンが膝を突いて肩で息をしていた。
「リィン、大丈夫か」
「はい……。でも、凄かった。あなたの剣と、私の力が……混ざり合って……」
リィンは自分の掌を不思議そうに見つめた。
二人の資質が組み合わさった時、それは「災厄を呼び寄せる呪い」から、「災厄を打ち砕く唯一の希望」へと変貌したのだ。
しかし、その戦いが生み出した莫大な魔力反応は、遠く離れた場所で、ある男の五感を刺激していた。
「……今のは、なんだ?」
国境の山嶺、暗闇の中で瞳を光らせる影。
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