神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎

文字の大きさ
12 / 58

邂逅

しおりを挟む

「お待ちしてました」

 僕がアパートを出るとそこには僕が事前に関知していた通りに王宮の馬車が待っていた。

 深紅の塗装に黒と金の装飾が施された豪奢な馬車だ。その扉を正装をして白手の着けた御者が案内する。

「お邪魔します」

 軽く言って中に入ると、知覚したとおりセスが座って待っていた。

「本日はよろしくお願いします」
「はい」

 セスは特別な礼装をしており、今日がいかに大切な日なのかを表している。

「良い夜ですね」
「はい、とてもいい夜になります……ですが本日は危険物の持ち込みは出来ませんので、門の所で預からせて頂きたく思います」

 セスが僕の鞄をチラリと見て言う。

 やはり、この男は僕の知らない知覚能力を持っているようだ。

「これですか、実は手土産で王に献上しようと思い持ってきました」

 僕は鞄を開けて炎玉と氷玉を取りだしてセスに見せる。

「これは……?」

「はい、もう感じて居ると思いますが非常に強力な物で、僕が開発した炎魔法強化玉と氷魔法の強化玉です」

「なんと!」

「これを献上したく思います」

 セスはその二つを見て心底驚いている。

「とても危険な物のようですね」
「ええ、扱い方を間違えたらですが……でもそれは宮廷魔法使い達も同じでしょう」
「確かに」

「どうぞ」

 と言ってそれをセスに手渡す。

「これはどうやって扱うものなのですか?」

「火炎の杖というものがあるでしょう?この玉を杖などに装着して術者が扱うと良いでしょう」

 火炎の杖というのは国宝級のマジックアイテムである。
 それと同等に扱えるという、その玉を見てセスは黙り込んでしまった。

「……」

 国宝級アイテムが2個彼の手の中にあるのを見、セスは考え込みながら丁寧にそれを自分の鞄に仕舞う。

「これのお礼は別に後程させていただきますが……」

「いや礼なんて良いのですよ、他にも沢山あるので」

「は!?」

 セスは絶句していた。国宝級のアイテムが沢山あるだなどと想像の遥か外だったようだ。

「その一つで、ホーリーボールを開発しました、今度お見せしましょう」

「ホーリー……?」

「はい、究極魔法のホーリーを発射できる魔宝玉です」

「ホーリーを……ははは……ご冗談を」

 セスは信じて居なかった。誰だって信じないだろう。作った僕ですらいまだに信じられないのだから。

「ですがそれが真実であるならば、ニース様の警護を強化しなければなりませんね」

 セスは現実家だ。そんな危険な物を僕が多数所持しているとなれば盗難を危惧するのは当然である。

「大丈夫ですよ、盗難対策もしてあります」

 僕は魔宝玉を開発する段階で一応は盗難防止の多段トラップの効果を持つ玉を開発していたのだ。

 それは開発者の命令がないと開かない魔法が掛かっているものだ。無理にこじ開けようとすると毒とマヒ、と記憶障害を引き起こす極悪なトラップが作動する仕組みなっている。

 宝玉を仕舞ってあるテーブル自体にトラップを設置してあるので迂闊に触ると死ぬ可能性が高い。

「そう、ですか」

 そんな話をしているとあっという間に王宮に到着した。

 王宮の正面には多数の兵士が整列して出迎えてくれる。

 馬車を降りると、真っ赤な絨毯をセスと進みあけられた扉の中は二つ小部屋と通路を挟んで直ぐに王の謁見の間になっている。

 中には大勢の近衛兵が正装をして剣を掲げて出迎えてくれた。

 そして玉座には王と王妃、それと王子が座って待っていた。

「ようこそ我が王宮へ、さぁさぁ……そばでお顔を拝見させてください」

 王はそういうと玉座を立ち上がり僕の側にやって来た。

 王はもう引退が近いのだろうか、白髪に染まった髭を伸ばしおぼつかない足取りで、それでも気丈にふるまい一人で歩いてやってくる。

 王妃と王子も後をついてきた。

「初めましてニース・グラハムです」

 ふと横を見るとセスが跪いていた。

 僕もそれに習おうとすると王が直ぐに止める。

「おやめください!グランドロードよ」

「そうですか?」

「ええ、そうしてください」

 僕が訊くと隣に立っていた王子が会釈して答える。

「我が国へ来ていただいただけで光栄であります、さぁ、こちらへどうぞ」

 王がそういうとセスが立ち上がり全員を引き連れて別室へ向かう。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。 その一員であるケイド。 スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。 戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。 それでも彼はこのパーティでやって来ていた。 彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。 ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。 途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。 だが、彼自身が気付いていない能力があった。 ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。 その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。 自分は戦闘もできる。 もう荷物持ちだけではないのだと。 見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。 むしろもう自分を卑下する必要もない。 我慢しなくていいのだ。 ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。 ※小説家になろう様でも連載中

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...