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2人暮らし
しおりを挟む結局ミニーが僕のところに泊まりに来たのは一人で夜を過ごすのが寂しかった、という事がその主な理由だったらしい。
冒険者なら孤独に慣れている人も多いのだけど、ミニーにはもう少し時間が必要なのだろう。
孤児院では集団で賑やかに暮らしていただろうし……周囲の状況の変化に対応するにはもう少し時間が掛かる、そんな風に僕が楽観していたのだけど。
「ずっと一緒に暮らして良いですか?」
ミニーが僕のアパートに転がり込んできてから3日目、彼女は武具製作の作業を手伝いながらポツリと言った。
「ずっとというと?」
「はい、ずっとです」
ミニーは平気な顔で凄い事を言う。それではまるで結婚生活ではないか……。
ミニーは孤児院で幼い子供達の面倒を見ていたので自活力があり、僕との共同生活でも買い出し、料理、掃除、洗濯全てをこなしたので僕は大助かりだ。
部屋に積み上がる完成した大量の武器防具、アイテム類を見て僕は考えた。
ミニーが来てくれたおかげで作業効率が飛躍的にあがり、既に数千アイテムを作り終えていのだ。
「ずっとがいつまでかは別にして、うん、暫くは仕事を手伝って欲しい」
「やったぁ!」
彼女は心底嬉しそうにして喜んだ。
「でもカッツ達の事は良いのかい?」
「良いの、だってあの二人は十分強いのだし、なんかあたしお邪魔みたいで」
カッツ達はすっかり自立して実績を積み、今ではAランクの冒険者としてギルドの認定を受けているらしい。
僕と出会ってから一月も経たずに大変な成長ぶりである。
時々、僕が試作した武具類のテストを兼ねて彼等に探索で使用してもらい、そのレポートを頼んでいた。
「師匠!この新しい鎧すごいっす!」
カッツはクエストから帰ってくると興奮して良くそう言った。
その鎧はなるべく少ない魔宝玉の消費であらゆる状態異常をほぼ完全に防ぐ目的で作ったものだ。
物理攻撃派のカッツにはピッタリな装備でもあった。
そして評価が高い装備はカッツ達にそのままプレゼントして、引き続き長期使用のレポートをしてもらっていた。
そんなある日、王宮の回収部隊がやってきていつものように僕から大量の武具アイテム類を受け取って、馬車に積み込んだ時に隊長が僕へ一枚の要望書を手渡す。
「なになに……バースト水弓を大量に作って欲しい、か」
「へぇ~、何に使うのでしょうね?」
ミニーが訊く。
「王都周辺の農地開拓に使用したいらしい」
僕は王国の要望に応えてその日から大量のバースト水弓を作った。
以前は、王都防衛の為にバースト火炎弓を大量生産していたので、今回はそれで造り慣れていて作業が直ぐに終わる。
それを納品してから暫くすると、毎朝王都周辺でバースト水弓が発射される音が聞こえるようになった。
そして、天気が良い日には毎朝のように王都周辺では巨大な虹が出現して、いつの間にか虹の王都と呼ばれるようになっている。
一月後、一通りのレシピの開発を終了して僕がミニーに礼を言う。
「ありがとう、お陰で仕事が捗ってひと段落したよ」
「いいえ、どういたしまして」
すっかりミニーとの生活に慣れて今ではミニーがそばに居ることの方が僕にとっては自然になっていた。
「それで、どうする?」
「はい?」
「もう仕事はひと段落したから、ミニーの自由にして良いんだよ?」
「ダメです、まだ終わってません!」
何が終わってないのかと不思議に思い訊く。
「何を?」
「1年間は一緒に探索するって言ったじゃないですかぁ?」
「ああ、あれか」
僕の方がすっかり忘れていた。
けれどそれはミニーの中では大事な約束の様で、反故にはできないらしい。
「それじゃ、来年まで頼むね」
「はい!」
ミニーはいつも通り元気に答えた。
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