神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎

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引っ越し

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 それから数日後、朝食後の時間にセスがアパートを訪ねてきた。

「ニース様」
「やぁ、セスさん」

 セスは扉を開けるといつもの姿で、どことなく寂しそうにして立っていた。

「内に入りませんか?」 
「いえ、ここで結構です……王からです」

 セスはそう言うと王から僕への手紙を取り出して手渡す。

「へぇ珍しいね」
「では私はこれで」

 セスは口数少なに帰っていった。セスが自分でやってくるとは何か大事に違いないと感じる。

「なんだろう……鑑定」

 それは王の直筆の手紙だった。

 それをリビングに持っていくと朝食後のお茶を飲んでいたミニーが興味深そうにする。

「なんですか?」
「王からの手紙みたいだ……えーと」

 封印を解いて中を読むと王の優しい人柄を思わせる言葉で、今までの僕の王国への貢献に対する感謝の言葉が綴られていた。

 そして、もう自分の寿命があまり残されていないので、王子をよろしく頼むと遺言のようなことが書かれている。

 その為に僕を王宮の最高顧問として軍師に叙任し、同時に伯爵に封じるので今週末に王宮に来るように書いてあった。

「ふぅ……」

 いきなり軍師だなんて言われてもピンとこないが、それ以上に王がもう長くないと知り僕は悲しくなった。

「……」

 僕が深いため息をつくのを見たミニーがそっと後ろにやってきて、椅子に座っている僕の肩に抱き着く。

「あたしが付いてます」
「はは……ありがとうミニー」

 僕はミニーに励まされていた。

 手紙から推測すると今週に僕の伯爵と軍師叙任をしてその後、王子の王位継承の戴冠の儀を行うのだろうと考えられた。

「なんて書いてあるのです?」
「僕を伯爵にして王宮の軍師に任命するらしい」
「ええ!……そんなぁ」

 ミニーに説明すると彼女は驚嘆と落胆が混じった声を上げる。

「……もうお別れなのですね」

 ミニーが寂しそうに言う。

「ミニーが冒険者ならそういう事になるな」
「冒険者ですもの……」

 ミニーは少し不思議そうな顔で答える。

「軍師で伯爵ならそれなりに権限があるから、その気になればミニーを僕の補佐役に着ける事もできるだろう」 
「え!ほんとう!」

 王や王子がそれを許さないなどと言う可能性はゼロだった。

 僕は王国への貢献度が周辺の王国貴族を遥かに凌いでいるし、実績の面からしても反対できるものは存在しないだろう。たとえミニーが孤児院出身の冒険者であっても。

「いままで通りって事なのですか?」
「うん、もう少し大きな家に引っ越す事になるだろうけどね」
「やったぁ!」

 ミニーが可愛らしく喜ぶ。

 このアパートでは帝国の隠密やら工作員への防御が不可能に近いので、以前から引っ越しする事は考えていたのだ。

「よし、今日は買い物に行こうか」



 僕はミニーと一緒に王都の最高級の衣料店に向かい叙任式用の衣装を一揃い2人分注文し、その足で王都の不動産屋へ向かった。

「こんにちわ」
「これはどうもニース様」

 僕が不動産屋に入ると店主はにこにこして立ち上がり店内に2人を招いた。

「王宮の側の家を買おうかと思っていてね」
「はい!?はい!多数ご紹介できますよ!」

 僕のアパート暮らしを知っていた不動産屋の親父は、僕の言葉に一瞬疑問な顔をしてから言い直した。

 親父はそう言うと、引き出しの奥から特別に装飾された豪華で大きな本を取り出して訊く。

「ご予算はいかほどでしょうか?」
「金貨1万枚まででお願いします」
「はは……1万ですか」

 親父は愈々僕をおかしな顔で見る。
 それはいくら何でも若造が手にできる金額ではないのだ。金貨1万枚は地方の城一個が買える金額だった。

 でもそれは僕の予想どおりだったので大きなカバンをテーブルの上に置いて開いて見せた。

「では手付金として1000枚渡して置きますね」

 カバンの中にぎっしりと詰まった金貨を見た親父は目を丸く見開いて言葉を失っている。

「こ……」
「数えますか?多分1000枚と少し入ってます」

 それだけでこのあたりの家なら数軒が買える金だ。

「はい!いいえ!もう結構です」

 すると親父は豪華本の最後の方のページを開いて僕に見せる。

「この辺りの家ですと、丁度ご要望どおりですが見に行きませんか?」
「良いですね、是非」

「あ、あとこの金は金庫にでも仕舞っておいてください」
「はい!」

 親父はそういうとカバンを重そうに持ち店の奥に引っ込んで行った。
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