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発明品
しおりを挟む「運命か……」
そういう事もあるのかもしれないと考えつつも、僕は日課のアイテム製作に取り掛かった。
先日、王国から大量生産を依頼されたブースト水弓が農業に使われるという事を知り、戦闘とは無関係な用途での便利なアイテムの考案を進めていたのだ。
バシュン!
「何を創っているのですか?」
「これは魔法の手だよ」
試作品が一つ出来たので実演してみせる。
その完成したグラブを自分の右手に装着して魔力を集中した。
「こうやって……」
ボシュ!
僕が魔力を使うと前方の空間に巨大な手が現れた。その手のグラブは魔力線でつながっている。
「ええ!なにこれ~」
「で、これをこうやって」
空間に現れた巨大な右手をグローブで操るとそれで作業部屋の重量のあるテーブルを鷲掴みにして持ち上げる。
「わぁああ、すごぉいい!」
テーブルは無造作に持ち上がり、自由自在に動かせた。
「成功だな」
僕の鑑定では一応対モンスター戦用にも使えるはずだけれど、元は土木工事や引っ越し作業など力仕事を想定して創ってみたのだ。
「これはなんて言う名前なのです?」
「そうだな、幻の手だからファントムグラブかな」
それを何度か出したりひっこめたりを繰り返しているうちに、手の大きさを調節するコツが掴める。
「これは楽しいな、よし、これをいくつか作って自主納品しよう」
バシュ!バシュ!バシュ!バシュ……
作り続けているとつい楽しくなってあっという間にグラブの材料を使い果たす。
「ミニー悪いのだけど、雑貨屋に行って園芸用の皮手袋を買ってきてくれないか?」
「はい!いくつ買います?」
「そうだな50程、なければ10でも良いよ」
少しすると近所の園芸用品店から大袋一杯の皮手袋を持って帰って来た。
「おお、ありがとうミニー」
「へへ~」
それから午前中は延々とファントムグラブを作り続け、気が付いたら山のように大量に出来上がっていた。
「ふぅ……とりあえずこのくらいあればいいだろう、お昼ご飯を食べに行こうか」
「うん」
◆
近所の定食屋でお昼を食べて店を出ると、丁度早馬がやってきて駆け抜けて行った。
ドドドドドドド……
「あぶないなぁ……鑑定」
馬は王宮への密使の物だった。何かあったのだろうか?あとで納品がてら訊いてみようかと思う。
「ねぇニース様、馬って魔宝玉で創れません?」
「流石に馬は……いや待てよ」
ミニーの提案を即却下しようとして考え直した。
「魔法で動く馬か……うん、面白いかもしれないな」
それで午後いっぱいは馬の小型の模型を作りそこに魔重力操作の魔宝玉をバランスをとり設置してみる。
フワフワ……
「おお!浮かんだ!」
「ええ、飛ぶの!?」
僕の想定通りそれは魔力で操作できる空飛ぶ馬の模型だった。
前後左右に着けてある魔宝玉で方向を自由に制御し、その小型の馬の模型はテーブルの上を僕の手の操作に従って動いて居た。
「これなら出来るわ」
ただ、重量の問題があるので馬の模型から不要なものをどんどんはぎ取って省略していく。
すると人が2人乗れるサイズの制御棒付きの座面と着地用の足だけが残った。
次に実物大のそれを、部屋に放置されて使っていない木製のベンチを材料に組み上げる。
邪魔になる背もたれを取り外し、操作用のハンドルを取り付ける。そして各所に魔宝玉を設置して最後に全体のバランスを見る。
「出来た……」
それは想定よりは簡単に出来上がった。そもそもベンチが座る用途で造られているものなので流用すれば簡単だった。
「さて」
それに跨りハンドルに魔力を込めると、ゆっくりと浮かぶ。
フワッ……
「おお!」
「すごーい」
部屋の中で操作すると割と直ぐにコツを掴み自由に滑るように低空を飛んだ。
沢山の魔宝玉を使っても低空しかとべないと言う事がそれで判り、おまけに大量生産には向かない代物である。
ついで、本体の周囲を高級な布で覆い、飾りをつけるとちょとした贅沢な家具に見える。
「ミニー、僕の後ろに乗ってごらん」
「いいの!」
彼女がドキドキして跨ると声を掛ける。
「行くぞ」
フワフワ~~ススー
「わぁ!わぁ!」
それはゆっくりと浮かび滑るように動いた。
「あははこれは楽しいな、あとでこれで王宮へ納品に行こう」
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