神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎

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暴れ馬

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「して、その椅子は何かな?」

 王子はグラブを外しながらエアホースの事を訊いてくる。

「はい、これはエアホース、空飛ぶ馬です」
「な!空を飛ぶのか?」

 王子は明らかに興味津々として目を輝かせていた。

「こうやります」

 僕がそれに跨って飛ぶ。

 フワッ、ススー……

「おお、これです!先程のものは!」

 近衛が王子に説明をしていた。

「なんて素晴らしいものなのだ!」

 あたりを一周して戻ってくると王子は僕に駆け寄り握手を求めて来た。
 それで王子がこの手の乗り物が大好きなのだと判る。

「乗ってみますか?」
「是非!」

 それで一通り操作の方法を教えると、王子は早速エアホースに跨って飛ばす。

 ブワッ!

 王子が操作するとエアホースは乱暴に浮かび上がり激しく揺れた。

 グラグラとバランスを崩しつつも何とか体制を整えようと王子が奮闘していると、エアホースの挙動は益々激しくなり、最後には暴れ馬の様にしてグングンと王子を乗せて回転し始めた。

「王子、力を抜いてください」

 僕の忠告に従った王子が力を抜くと途端にエアホースはおとなしくなったが、それでもまともには操作出来なかった。

 ドス……バタ

 なんとか無事に着地すると、王子は目が回ったのかその場に座り込んでしまう。

「うえ……」
「王子……」

 王子が気持ち悪そうにしていると近衛の魔法使いが近寄って回復魔法を掛けていた。

「うん……もう大丈夫だ、しかしこれは難しい乗り物だな」

 王子が悔しそうに言う。

 確かに、この試作品は僕が乗れるように作ったので……。
 僕にはアイテムの挙動を細かく理解する鑑定の力があるから、エアホースを簡単に操作出来ただけだった。

 一般人が扱うにはそれなりに細かい調整が必要なのだと判る。

「これを操る事は私には無理なようだ……そうだ、空飛ぶ馬車ならばどうだろう?」

 王子が、エアホースを諦める代わりに馬車を飛ばしてくれと言う。

「馬車ですか」

 それを頭の中で組み立ててみるといくつかの問題点はあるが、可能だと判定できる。

「出来ますか?」
「出来るとは思うけど、相当な量の魔宝玉が必要になりますね」
「そうか!出来るのなら是非お願いしたい」
「良いですよ、少し時間を……それと軽量化した馬車の籠を用意してください」
「そんな事ならば任せてくれ」

 王子が喜んで言い、近衛に指示をだした。

「頼んだぞ!」
「はい……それと一つ訊きたい事があるのですが」
「なんだい?」
「昼くらいに密偵が馬を飛ばして王宮に戻ったと思いますが」
「ああ、そのことか!それならばセスに訊いて欲しい、私よりも彼の方が詳しいのでな」

 王子がそう言うと、ギャラリーの中からセスが現れて僕たちの所にやって来た。

「ではあちらでご説明致します」

 王子に別れを告げ、セスと共に歩き出した。セスが先導して以前来た事のある警備事務所に入る。



 パタン……

 僕たちが部屋に入ると直ぐにお茶が用意されてもてなされた。

「どうぞ」

 セスが何か資料を取り出しながら僕たちにソファーを勧めた。

「実は帝国側の動きを探っていた密偵からいくつかの事実が判明しました」
「へぇ」
「本日、それが纏まった後にニース様にご報告しようと思っておりましたが、ここまでの経過をご説明いたします」

 セスは丁寧に言い、資料を広げながら説明を始めた。

「帝国で起こっておりましたモンスター騒動ですが、一応は解決したようです」
「それで、原因は何か判りました?」
「はい、帝国の暗黒魔術師が魔使を召喚したもようです」
「魔使って……」

 それは僕の知識では、今では伝説として語られることがある魔界の王の使者の事である。

「そんなものを召喚して何をしようとしたのだろう?」
「それが、魔使を操ってモンスターを制御しようとしたようですね」
「なるほど、召喚自体は成功したというのか……」

 帝国は実に恐ろしい実験をしている。

「はい、ただ、魔使の制御を誤り帝国にモンスターが集まるようになってしまったようです」
「ブッ……」

 僕は思わず噴き出した。セスもつられて笑って居る。

「ははは、なんとも締まらない話です」

「あ、それでカレン達、勇者パーティーはどうなったかわかりますか?」
「ええ、勇者パーティーの力でモンスターを全て討伐して、魔使を制御する事に成功したようです」
「はぁ……という事は」
「はい、帝国周辺のモンスターは皇帝の意のままに動くようです」

 それは本当に恐ろしい事であった。
 仮にモンスターを王国に指し向かせたら、王国はモンスター地獄の様になるだろう……。

「不味いね」 
「はい、非常に」

 う~ん、と僕が唸るとセスがそれでも大丈夫だという。

「ニース様から頂いた大量のバースト火炎弓がございますので」
「なるほど、勝算はあると?」
「恐らく問題はないかと、ですが一つ更にお願いがございまして」
「何?」
「非常に心苦しいのですがバースト水弓を輸出用に制作して頂きたいのです」
「交易品という事?」
「はい、一つ金貨1000で売買できる事が判明しました」

 それは面白い考えだった、水弓ならば攻撃力は無いに等しいので武器の輸出ではなく、多用途の便利アイテムとして平和利用できるはずなのだった。

「もう買い手がいるのかい?」
「はい、まだ極秘事項ですが、公国や獣人の国々で高い評価を貰いました」

「へぇ、それなら作る他ないね」
「お願い致します」
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