神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎

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仲直り

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 その日、エアホースで飛んで帰ると早速バースト水弓の製作に入った。

「これが1個1000金だなんて信じられる?」

 僕はやや呆れながらミニーに言う。

 それは僕の手の中で十秒に1個作れるもので、特産品としても高すぎる気がしていた。

「これを作れるのはニース様だけですし」
「それはそうか」

 希少価値という意味ではその通りかも知れなかった。

 ただ、部屋の中に無造作に積みあがるそれを見るととても価値が有るような気がしない。

 その日、あっという間に数百のバースト水弓を作り終えて材料が無くなった。

「よし、水弓は終わり」

 それで次に飛行車の模型作りに入る。
 ありあわせの木材で簡単な模型をつくり、最後には脚部をどうするか考えた。

「このホイールを捨てれば軽量化できるし、思い切って捨てるか」

 馬車のホイールを全部取り外して単なる箱型のシンプルなデザインになる。

 下部に着地用のソリ板を設置して完成とした。そこに魔宝玉を取り付けていくと簡単に出来上がる。

「エアホースよりも簡単だわ」

 シンプルを極めたようなデザインと構造で、試作するとその模型は安定して浮かんでいた。
 これなら、御者が素人でも簡単に操作できる事が判る。

 ただし、重量が非常に大きいので魔宝玉の使用量が一台を完成させるために500個必要と計算された。

「これは王宮専用車だなぁ」

 自分用ですら作る気が起こらないほど手間と材料を消費するのだ。

「よっし、これも終わった、呑みにでるぞー」
「え~」

 いつものように宣言するとミニーが嫌という。彼女は酒に弱いので酒場が苦手なのだ。
 それでもいつも一緒にくっついて来るのでおかしな子である。
 その日は比較的酒場が空いていて、見回すと商業ギルドのアリアさんがカウンターに座っていた。

 アリアの後ろ姿を発見した僕は彼女の隣に陣取った。

「こんばんわ」
「え、やだニース様……」

 アリアは不意に僕が現れて驚いていた。

「待った?アリア……」

 少ししてリジーがやってきてアリアの隣に座る。
 どうやら彼女たちは酒場で待ち合わせをしていたようだ。

「やぁリジー」
「あらやだニースさんじゃない!え?アリアと?」

 僕がアリアを挟んでリジーに声を掛けるとリジーは驚いていた。そして何か勘違いしそうになっている。

「いや、偶然だよ、僕も今来たところだし」
「あ、そうなの」
「そうよ」

 僕が説明するとリジーは少しガッカリしたような顔で笑い、アリアもそうだと言う。

「アリアさんとリジーさんが仲良しだったとは知らなかったよ」
「そうよ、凄く仲いいものねー」
「あ、はい」

 僕が訊くと2人はどことなくぎこちなく同意する。
 いや、仲良くないわと思った。

「……」
「……」

 その後、奇妙な沈黙があり2人が押し黙ってしまう。

 それで僕がマスターに酒瓶を注文してテイクアウトして外で呑むことにした。

「あれ、もう出ちゃうのですか?」

 酒場を出るとミニーが訊いてくる。

「ああ、大人の話があるみたいだからね、僕が居たら邪魔なんだ」

 それは鑑定をするまでもなく僕には勘で判った。


 中央公園にやってきてベンチに腰を掛けて夕日を眺めながら酒を呑む。これも決して悪くないのだと、再認識する。

 たとえ隣にミニーがいなくても僕はこうやって呑んだろう……。

「なぁミニー、例えばの話だけどさ」
「はい」
「僕がいなくなったらミニーはどうする?」
「え!?それは嫌です」

 答えに成ってなくて笑いそうになった。

「はは、例えばだよ」
「ええ~、そうですねぇ~~、うーん……一人でここに来ます」
「どうして?」
「だって、ニース様を思い出せるから」
「あはは、では仮に僕と出会ってなかったら?」

 それは彼女にとって意地悪な質問だったかもしれない。
 ちらっとミニーを見ると寂しそうな顔で考えて居た。

「そうですねぇ、やっぱりカッツ達と一緒にいると思います」
「そうか、それは良いね」
「え、どうしてなの?」
「自分の帰る場所があるという事だろう?」
「そうですね……」

 僕には帰る場所なんて無かった。
 今日、セスから勇者パーティーの話を聞かされた時に心底ほっとしたのだ。あのまま、もしリーサに何かあったら僕は後悔の気持ちで押しつぶされただろう……。

 それで、いつかはリーサに会ってあの時の事を謝ろうと決意していた。そこが当面の僕の帰る場所であったが……。やっぱり、そこは帰るべき場所とは言えないと感じていたのだ。

 場所ではなく通過地点なのだと。

「なぁ、用事を頼んでいい?」
「はい!」
「カッツ達の所に行って昨日の報告を聞いて来てくれないか?」
「え?」

 いつもカッツの方からやってくるので敢えて出向く必要は無かったのだけど、今日はカッツ達が遠征から帰って来た翌日でまだ彼らが家に来ていなかったのだ。

「あと、これを渡してやってくれ」

 ファントムグラブを一揃いミニーに手渡して頼む。

「はい」

 ミニーは行ってきますと言い、急いでカッツ達の家に向かって行った。

 もっともらしい理由をくっつけてミニーをカッツの所にやったけど、本当の理由は別にあった。

「ミニーだって自分の帰る場所を確保しておかないとね」

 僕には判っていた。一度寸断された絆は中々戻らないと。
 今なら彼らはまだ切れていない。僕が彼らの絆を弱めているというのなら……。

 僕は逃げ出す代わりに、ミニーをカッツ達に積極的に合わせる事を選んだ。

 そして、酒場のアリアとリジーの2人。
 僕には判っていた。2人は男の事で揉めて居て今日、その仲直りで酒場に来たのだという事が。

 なんでも分かってしまう精霊の力を今は少し疎ましく感じていた。

「知れば良いってものでもないね……」

 そろそろ酒場に戻る頃合いだと感じ、僕はベンチから立ち上がった。
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