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コイバナ
しおりを挟む酒場に戻るとアリアとリジーはすっかり酔って気分が良いらしく、ご機嫌で笑い合っていた。
「お待たせ」
僕が軽いノリで彼女達の隣に座る。その席がずっと空いているという事はつまり、男を寄せ付けないという意味でそれは僕にとっても都合が良かった。
「あれ?ニースさんじゃない!なんでさっき帰っちゃったのよ~」
「そうよそうよ!」
ご機嫌のアリアとリジーが僕を責める。
「あはは、ご機嫌ですね、何かあったの?」
「あったのよ!聞いてくださいよ~、この子の悲しい恋の話を!」
アリアがリジーの肩を抱きしめておどけて言う。
短時間の間に2人は仲直りしてしまっていた。
「それは大変だったね」
「聞いてくださる?ねぇ?聞いてくださるの?」
リジーが酔った目で僕に迫る。
「はいはい、聞きますよ」
「よっし、じゃぁ特別にお姉さんが告白しちゃうからね心して聞くように」
酔った勢いで振れ幅が大きいリジーが僕に言う。
「どうぞどうぞ」
「あの、王宮の男がね!私を振ったのよ!許せないでしょ!」
「うんうん」
「そうなの許せないの、あのセスって……えーと情報技官だってぇ」
「うんうん」
「セスったらね『私にはまだやらねばならない使命があるのだ』ってフザケてるわよねー」
リジーがセスの口真似をして男っぽく言って僕が笑った。少し似て居てお腹のそこからジワジワと笑いがこみあげてくる。
「プ……似てる、ごめん笑ってしまった」
「似てるでしょう!?似てるわよねぇ?」
「凄く似てる」
つまり、セスに告白をしたけどリジーが振られたという事なのだ。
「まだあるのよ!『私には思いを寄せる人がいるから、今は貴女との特定の関係には及べない、済まぬ!』とか言うのよ!」
「それで、リジーったらあたしがその相手だと勘違いしてたらしいわ」
「だってぇ、セスったら良く商業ギルドに行くのを皆が見ててアリアと親しそうに話してたっていうの!」
僕にはそれが何か大体予想がついた。
セスが鉱山開発の為に商業ギルドへ出向いて、職人の手配をしたりして奔走していたのだろう。
「でね、リジーったらあたしがセスを奪ったとか」
「なるほど、勘違いですね」
「ほんと嫌になっちゃうわよね、あはは」
でもリジーが振られたというのは事実だったので、僕は笑えなかった。
セスの思い人が誰かは知らないが、この王都界隈でそんな恋愛話があるとは世間は狭いものだと感じる。
「セスさんは、普通にただのお仕事で商業ギルドに通って来ていただけなのよねぇ~」
そこで話を変える。
「アリアさんとリジーさんは元々旧知なのかい?」
「そうよ」
旧知の仲の美女2人、酒場でそれは良い眺めだった。なんとも贅沢な存在だ。
「アリアさんは、誰か良い人は居ないのかい?」
「ええ~あたしは~、うーん居ない!」
「ええぇ!」
リジーがアリアの告白を聞いて驚いていた。
「本当の事をいいなさい!」
リジーがアリアに迫る。
「え~、怖いよ~」
アリアがおどけて言う。
「はぁん?さてはアリアはニースさんがお好きなのね!」
リジーが急に僕へ話を振る。
「ええ、マジですか?」
「あはは~」
僕が道化るとアリアも合わせる。
僕は真実がどうであれ今はそんな気分になれなかったのだ。
「でも、ニースさんはダメよ!アリア!ニースさんはミニーちゃんのものなのよ!」
「ええ!?そうなの?」
リジーが悪乗りで言うとアリアが半分真顔になっていた。
「そんな訳ないわ、っていうか僕はモノではないし」
「あはは~ごめんなさい……」
明らかに呑みすぎの2人に僕は少し手に負えなくなってきた。
「それじゃ、帰りますねー」
「えええ!もう帰っちゃうの?」
「うん、まぁ仕事もあるし」
僕は適当な事を言って誤魔化した。
「絶対に嘘よ!ミニーちゃんとチュッチュする為に帰るのよ!」
「あはは、それはした事もないよ、ではお休みなさい~」
「あら本当なの?」
「やだ、あたしったら!」
手を振って店を出ると、2人の声が聞こえて来てしまう。
「なーんだ、本当にミニーちゃんと何もないのね」
「だって、奥手も奥手だしぃ、一目見て判ったわ」
「なにそれー!」
彼女達の楽しい話のネタになった僕は家に帰った。
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