神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎

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Sランク昇格祝い

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 その夜、ミニーがアパートに帰ってくるとカッツ達のレポートを嬉しそうに話した。

「それでね!カッツもついにSランクに認定されたのよ!」
「それは快挙だね、お祝いをしなくてはな」

 僕はアイテムを自在に使いこなすカッツが、Sランク以上の実力があるのを知っているので特に驚きはなかったが、ミニー達は冒険者としての目標をSランクにしていたのでとても嬉しいのだろう。

 その気持ちは僕にもよく判る。

「けれど、王宮での叙任式は今週末だからお祝いをやるとするなら明日しかないな」
「はい!」

 それで、翌朝は少し忙しくなる。



 僕はあらかじめ予定していた通り、先に一人で王宮に納品に向かいその後王子と相談する事になった。

「軍師を辞退したいとはどういう事なのです?」

 王子の執務室の中で僕の話を聞いた王子は少し戸惑っていた。

「このままだと王国が危機に陥るのが僕には見えているからです」
「……まさか、王国を捨てるという訳ではあるまい」

 勿論そうではない。

「その逆です王子」
「……」
「軍師ともなれば国王の代わりに国家に号令をかける絶大な権力を持つわけですが」
「それだからこそ軍師になって欲しいと父上は願っているのだ」
「はい、ですがそれは諸刃なのです」
「……ふむ、詳しく聞かせて欲しい」

「僕の国家に対する貢献度は群を抜いているとしても知名度はどうでしょう?」
「ふむ」
「僕の近所の住人の爺さんですら僕の存在を知りません、ただの若造のニースだとしか思っていない」
「なるほど」
「そして、地方の王侯貴族にとっては僕は帝国から来た何やら怪しいスパイとも見えているかもしれません」
「それは……そうかもしれん」
「それでいきなり軍師になって自由に振る舞い始めたら内乱の種になりかねません」
「ではどうすれば良いというのだ?」
「しかるに、一度軍師として叙任された後に戦略担当補佐官の地位に降格して頂ければ良いと考えます」

「しかし……これは極秘の事なのだが、父上はもう長くないのだ」
「はい存じて居ります」
「なんと!」
「僕には寿命の人は大体判ります」
「底知れぬお力であるな……」

「はい、それで言いたくはありませんが王が死去された後に降格して頂ければよいのです」
「なるほど、父上に安心して頂くというご配慮であるか」
「爵位に関しても同じ様に子爵でお願いします」
「はぁ、ニース様は本当に欲がないのだな」
「今後はニースと呼び捨てでお願いします」
「いやしかし、グランドロード様を呼び捨てとは……」
「良いですよ、特別に」
「それは有難い」

 王子には判っていた。
 僕の事をグランドロードであると他の貴族達へ紹介して回りたい。けれどそれをやってしまえば同時に沢山の敵をも内外に作ってしまうという矛盾に。
 伝説の存在ともいえるグランドロードの権威を示せばそれに平伏するか、それとも謀反を起こすかの二択に迫られることになるのだ。

 そして世界は複雑だ。どのような反動が起こるのか王子の立場であっても明確ではないのだ。

 さらに、公の場で僕をニース様と呼べばただならぬ事態である事が公然の秘密となる。
 そこに王子が苦悩している事が僕には判っていた。

「本当に子爵で宜しいのだな?」
「ええ勿論、どのみち領地無しなので大して変わりません」
「ははは、それは私の胸にグサッとささるぞ」

 王子はそう言って笑った。彼は根っからの善人なのだ。
 直轄地を割譲しては目立ってしまい、内外に不信の目を向けられかねない。

 ゆえに金銭の支払いのみの実質、技官扱いにしなければならない事になる。

「では、式当日は予定通りでお願いします」
「解った、本当に感謝します」

 王子は僕に抱き着いて謝意を伝えた。



 その日は午後からカッツ達のSランク昇格祝いを酒場貸し切りで行った。
 費用はカッツが全て自腹でやる自分自身のお祝いである。

「カッツ、マーシー、ミニー、Sランク昇格おめでとう!」
「ありがとうございます、ニースさん」

 祝賀会の冒頭で僕が3人を短い言葉で祝う。

「カッツおめでとう」
「ミニーちゃんこっちむいてー」
「マーシーちゃん可愛い!」

 貸し切りの酒場に集まった冒険者ギルトの仲間達が一斉に3人を冷やかす。

 その後は、一日中飲んだくれて大騒ぎで夜になる頃には皆酔いつぶれて家に帰るか、猛者は回復薬を飲んで更に呑みまくっていた。

 僕は翌日の準備があるので家に帰り久しぶりに一人で眠る。

 いつも隣のベッドに寝るミニーの姿が無いのはやはり寂しい気がした。
 習慣とはこういう物かと、その時に再認識するのだ。

 大抵はゆっくりと変わる方が無難なのだ……と。
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