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祝賀会にて
しおりを挟むその後の祝賀会の会場は事前に用意してあった別の大広間で執り行われた。
一部の気分が悪くなった女性を除くほとんどの王侯貴族達は会場を移してパーティーにそのまま参加した。
「本当に今日は何から何まで君の想定通りで驚きの連続だよ」
王子が僕をべた褒めにする。
「卿、知っているかね?このニース君はね、今や王国に無くてはならない柱なのだよ」
王子の所に次々とやってくる地方の豪族や貴族に僕の事を褒めそやして自慢気に紹介してまわるのだ。
「スタンリー叔父さんお久しぶりですね、是非後で父上に会って貰えませんか?」
やって来た白髪の老貴族に王子が挨拶をした。そのスタンリーと言う名前にどこか覚えがあり、思い出してみたらそれは引っ越し先に選んだ屋敷の現持ち主のスタンリー・フォードJrだった。
「やあやあ元気そうだね、今日はとても色々なことがあったけれど……」
「はい!このニース君のお陰で命拾いしましたよ」
「これは軍師様、ぼっちゃまを助けて頂きありがとうございます」
「務めですので」
僕はスタンリーの熱烈な握手を受ける。
王子が叔父さんと呼んでいるスタンリー卿は王子の遠縁の親戚なのだった。
「そういえば、そこの私の屋敷を購入したいという方がニースさんと言ったような」
「はい、僕ですよ」
「やはり!奇遇な事ですな」
「はい、僕も驚いております」
王子が何の事だ?と首を傾げていると次の客がやってきて王子に挨拶を始めて謀殺される。
「良ければ僕に金5000でお譲りして頂きたいのですが」
「ええ!ええ!勿論ですよ、あの家で良ければ軍師様に進呈いたします、お金なんて要りません」
なんとも太っ腹な御仁だった。
いくらなんでも只というわけにも行かず、僕は手付金として払った1000金で話を進めるとスタンリー卿は、僕がどうしてもと言うのなら1000で良いと言ってくれた。
「ありがとうございます」
「いやいや、なんのなんの、それでは私は国王に挨拶してきましょうや」
そう言ってスタンリーは会場から出ていく。
僕の隣では王子が相変わらず自分の事を放置して、僕の自慢話を客にしていた。
会場を改めて見回すとミニーが少し離れた場所で同年代の貴族の娘達とおしゃべりを楽しんでいた。
生まれも育ちも違うのに、大した順応力だと思って感心しているとそこに王子が歩み寄って行き、ミニーと話している貴族の娘達に今度はミニーの自慢話を始めた。
それを見て僕は思わず笑ってしまった。
王子のそういう人好きがする性格があちこちに縁を結んで人々とのつながり、王国のなかの絆があるのかもしれないと感じる。
「敵わないなぁ」
王子のそういう特質はある種の才能に見え、それは僕にはない物で少し羨ましく思う。
その後、一人になった僕の所に貴族の子女達がニ人連れ、三人連れでやってきて自己紹介をしてきた。
彼女たちに無難に挨拶をして一応は顔と名前を覚えておくように努めたのだけど、それは僕には少し負担に思える。
軍師ともなればこういう事もしなければならないのだなぁと、漠然とながら自分には不似合いな事に感じていた。僕はやはり冒険者として気ままに生きてきた、その生き方が気に入っていたのではないか……。
そう思うと自然と足が会場の外に向き、僕は王宮のバルコニーから夕焼けを眺めて酒のグラスを煽っていた。
ふと、モンスター軍団の事が気になり精霊の力で遠方を探っていく。
すると、隠し街道の方での対モンスター軍団との戦闘は警備兵の圧勝で終わっていた。
バースト火炎弓の威力は想定通りあるいはそれ以上の物があり、今頃は皇帝も驚いているだろうと思うと自然とにやけてしまう。
今回の勝負は戦略、戦術、戦闘、全ての面で一応は僕らの勝利であった。
皇帝の考えたような、王国での王子暗殺、内乱、そしてモンスター軍団による壊滅作戦は全て失敗し、僕にとっては兵器の運用テスト成功というおまけまでついてきたのだ。
それを思うと酒が旨い。
「ニース様」
僕がにやにやしていると側にやってきていたミニーが呼ぶ。
「パーティーは楽しいかい?」
「はい」
「友達も沢山できたみたいだね」
「はい」
ミニーも嬉しそうに答える。
「ニース様、乾杯」
「おお、乾杯」
ミニーはそれをやりたくてここに来たのだと気が付いてお互いのグラスを軽くあわせる。
チン……
「お酒、大丈夫なのかい?」
「はい、こんな日に飲まないなんてもったいないですよ」
そういうミニーの顔は既に赤く見えた。
夕日で赤く染まっていたのか、酒の酔いなのか鑑定せずに考えていると、ミニーは少し恥ずかしそうにして僕から目をそらし夕焼けに染まる王都を眺める。
「そんなに見ちゃだめですよ」
「そうかい?今日の衣装はバッチり決まっていて可愛いよ」
「へへへ……ありがとう」
ミニーは年齢相応の女子らしく笑った。
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