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アイテムの力
しおりを挟む王宮前で飛翔魔車を停めて、僕以外が屋敷に歩いて帰った。
1人で謁見の間に納品の知らせに行くと、丁度セスとマールが深刻そうな顔をして話をしている最中だった。
「やぁ、飛翔魔車が完成したから納品しに来たよ」
「おお!それは素晴らしい、いつもありがとう……」
マールが口では喜んでいたがいつものノリではなく、何か大事があったのを直感した。
「何かあったのかい?」
「はい、ニース様……実は」
セスが僕の方を向き真剣な表情で話し始めた。
帝国に潜入している情報部員からの知らせで、帝国で異変が起きているようだ。
「帝国政府高官が次々と失踪していて体制が瓦解しつつあり、更に皇帝が病気で引きこもってしまったとの事です」
なんだ、そんな事かと正直思った。
「ですがおかしな事に、隣接する公国からは帝国からの大部隊での侵略が始まっているので助けて欲しいと」
王国へ救援要請があるようだ。
「確かにちぐはぐですね……では、我が国のバースト火炎弓部隊を派遣し、撃破しながら情報を集めてみてはいかがでしょう?」
僕がマールに提案する。ここのところ急激に戦力が増加しているので正直少し余っているくらいだった。
「だが、それが帝国の手に渡ったら困るのではないか?」
「そうですね、ですので派遣する部隊には神威の服とファントムグラブ、それに闘神の靴のフル装備で向かわせましょう」
それだけ揃うと一人の一般兵であっても、大部隊の突撃兵以上の打撃力をもつ。併せて逃走能力も最高であるので、万が一にも捕まる可能性はない。
「おお……」
「そうですね……5人もいれば十分でしょう」
それなら余裕をもって派遣させることができる。
「であれば、我が情報部員にお任せいただけませんか?」
セスが提案する。
一般兵よりは情報部員の方が敵地で臨機応変な対応ができるだろうと。
「うん、僕もそれで良いと思う」
「隊長はニアで宜しいでしょうか?」
「そうだな、うん、それで行こう」
僕とセスが話を進めると最後にマールが決断した。
「では」
と言ってセスが一礼して出ていく。直ぐに行動に移るのだ。
「ふぅ……」
ため息をつくマールの顔色がさえなくて、元気がない。
「大丈夫かい?」
「ふむ……ここのところ色々と立て続けでね」
僕の就任式、マールの戴冠式、父上の葬儀と忙殺されて流石の楽天家のマールも少しくたびれていた。
「これをどうぞ」
「うん?」
そう言って僕は一つの指輪をポケットから出してプレゼントした。
「まだ開発段階ですが生命の指輪のコピー品です」
「なんと!」
マールはそれを僕の手から受け取り右手の指に嵌める。
「おおお、これは!力が湧いてくるな!」
まだ改良の余地があり、将来的には魔力の回復も兼ねるものを創りたいのだけど、今はまだ難しい。
「これを使えばあまり体力のない兵士でも前線で戦闘を継続できると思う」
「確かにこれは良い!」
マールは自身の体力の回復と共に気力も戻ってきて元気になった。
「では早速量産に掛かろうと思う」
そう言って王宮を出ようとするとマールがついて来て言う。
「私もお邪魔してよいかな?」
「ええ、なにも準備してないけどそれで良ければ」
「うん、準備など結構!」
マールは大喜びで一緒に歩き、ついで宮廷の前に停めてあるピカピカの飛翔魔車を見てしきりに感心していた。
「おお、いい仕上がりではないか、これで行こう」
マールが魔車に乗り込むと、近衛の1人が僕から操作方法を学び早速浮かばせる。
フォオオン……
飛翔魔車は少し唸るような心地よい音を発して浮かび飛んだ。
やはり近衛は並外れた能力の者が多く、僕が1を教えると直ぐに3つ飲み込んだ。
「ははは、これは全く素晴らしい乗り心地だね!」
「だろう?」
飛翔魔車は振動が全くない。そのどこまでも滑らかで静かな乗り味にマールは感動していた。
そして直ぐに僕の屋敷にマールと共に戻ると、屋敷で出迎えた面々は驚いていた。
「やぁ皆さん初めまして、かな?」
マールがにこにこして言うと全員が最敬礼の姿勢で固まってしまう。
「まぁそう固くならず、今日はニース君の友人としてお邪魔するよ」
僕とマールは僕の私室に入り、そこで製作中のいくつかのアイテムを見せる。
「これがさっき渡した命の指輪のレプリカだよ、全部で5個あるから全部持って行ってくれていい」
「ほうほう、そんなに作れるのかい?」
「最近は採掘が進んでいるから材料が沢山あるのだよね」
それは僕が以前納品したファントムグラブによる採掘作業の効率化の為だった。
それで今回飛翔魔車を完成させる事に至ったのである。
「これは何だい?」
マールが製作中の腕輪を持ち上げて訊く。
「それは以前見せたホーリーリングの逆の効果を持つものです」
「というと?」
「ホーリーは爆発燃焼だけれど、これは爆縮冷却の効果を持たせて開発中の……」
「名前は有るのかい?」
「はは、そう、いまいちセンスが無くてね、まだ名前はないのだ」
「それならばこれを命名させてくれないか?」
「ええ、勿論」
「うーん、爆縮?よく判らんが爆発の反対の物か……絶対の無、悪夢のような……ナイトメアリングでどうかな?」
王子のネーミングセンスも僕とそう変わらなくて少し安心した。
「ではナイトメアリングで、ただ、これは少し危ないので今はまだ納品できません」
「いいよ、危なくないように出来たら宜しく」
マールはその他のアイテム類も目を輝かせながら次々と手に取り僕を質問攻めにした。
それで少しはマールの気晴らしにはなったかと、僕も安心する。
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