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幸せな2人
しおりを挟む「見られた以上は帰すわけには行かねえ」
大男の魔人が城壁の上からニア達に言う。
「森の中、連携はDだ」
ザザザザザザ……
ニアが後ろを振り向きもせずに号令をかけると、5人は一斉に走り出して帝城の側の森の中に飛び込んで消えていく。
「逃がさねえぜ!」
魔人が怒鳴り跳び、広がって逃走していく5人の内、中央を爆走するニアを追跡して程なく追いついた。
「捕まえた!」
魔人がそう言った瞬間にニアはスキルを使いすり抜ける。
「流水!」
魔人の手から何度もするすると逃れて行くニアを見て、魔人は捕まえるのを諦めて攻撃に出た。
「ふん!」
ドドド!
森の中、少し開けた場所で対峙したニアに超高速の突きの連打を浴びせるが、ニアは紙一重で避け続ける。
「なんだ?」
魔人が変だと首をひねる瞬間に、いつの間にか集まってきていた4人が魔人を囲み攻撃を仕掛けた。
ドゴゴゴゴ!
ドドーン!
全方位からファントムパンチを浴びて魔人がぐらつく。
「ぐ……ぐげ」
ガガガガガガガガガ!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
動きの止まった魔人に、更に連打を浴びせつづけると魔人は徐々に弱り始めてついにくずおれた。
「ぐはぁ……ぐぉ……」
すると、魔人の口から黒い瘴気が吐き出されて行く。
「やれ」
ニアが号令をかけると、隊員は持っていた小刀を抜き全員で切り裂いた。
バシュバシュバシュ!
それが致命傷となり、全身から黒い瘴気を発して身体がボロボロと崩壊していく。
シューシュー……
「隊長、これは?」
「魔人だ」
「……」
ニアの答えに全員が驚愕していた。
暫くすると魔人は完全に消滅し、地面には魔人が装備していた腕輪や衣服が転がっていた。
「これを証拠に持ち帰る」
ニアが言うと隊員が袋をとりだして残留物を包み、5人は帰還した。
◆
翌日、緊急で王宮に呼び出された僕はニアから報告を聞き、魔人の残留物を見て確信した。
「これは、間違いなくギーグの物だ……」
「やはりそうなのか」
僕が断言するとマールは納得したという顔になる。
ニア達がギーグを倒したのだ。
僕はその腕輪を見て少し悲しくなった。ヤバい奴ではあったが元仲間であったし、悪人では無かったのだ。
「魔人の脅威は減ったと考えて良いのだな?」
「おそらく」
マールの問に僕は適当な事を言った。
それは単なるあてずっぽうだった。ニアの報告を聞いた限りではバーサーカーの将官自体が怪しいと感じるのだ。
そいつも魔人化しているのではないのか?……と。
「一先ずは、脅威は減ったと思いますが今後も調査は必要かと」
「その通りだろうね……ふむ」
僕が補足するとマールも同意する。
今後は外交的に探りをいれるという、遠回りな手段も使う事になるのだろう思われる。
「ニア、ご苦労だった」
「は!有難きお言葉」
ニアは一礼をして謁見の間を去る。それで僕も屋敷に戻った。
「ご主人様お帰りなさいませ」
執事のトーマスがいつものように気持ちよく屋敷に迎えてくれる。
「カレンは?」
「は、カレン様は只今お買い物に出ているようです」
「そう」
僕は自室に戻りアイテムの製作を再開しながら、カレンにギーグの事をどのように切り出そうかと考えていた。
数時間後。
カレンとリーサが楽しそうにおしゃべりをしながら屋敷に戻ってくるのをバルコニーから見た。
その様子からすると化粧品やドレスを買いに一緒に町に出ていたようだ。
2人の楽し気な様子を見ているとやはり僕はギーグの事を言えなくなってしまう。
「ふぅ……急ぐ必要はないか」
そうだ、今のカレンに悲しい顔は似合わない。
「やぁカレン、リーサお帰り」
「ニースちゃん只今ぁ」
2人を笑顔で迎えると、嬉しそうに返事をする。
僕は今の生活が気に入っていたし、これからももっと良くなるはずだ。
「なぁ、今度王宮でパーティーを開くのだけど、2人とも来てくれるかい?」
「ええ!行くわ!」
「私も行くわ!」
すっかり女言葉が板についてきたカレンも嬉しそうに答える。
そう、これで良いのだ。
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