神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎

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別れ

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 その日、王宮から迎えの馬車がやって来た。愈々ホーリータワーの始動式を行うのだ。

「おはよう!」
「わざわざ有難う」

 マールが飛翔魔車で屋敷にやってくると僕はそれに乗り込んだ。

 魔車はゆっくりと飛び進み、その車内で今日のセレモニーの段取りをマールから聞く。

「マール王が開会の言葉を言い、僕が指示を受けて魔力を送ると」

 実に簡単である。

 今回僕は一言も話さずに済みそうだ。

「そうだ、話は違うのだけど帝国の復興はどうなっているのか何か情報はありますか?」
「帝国は今情報を完全にシャットダウンしていて一部の者しか入国できないようだぞ」
「ニア達は?」
「勿論極秘で潜入する事はできるが、今は事を荒立てたくはないからね……」

 ホーリータワーを始動するまでは刺激したくないという、マールの判断は正しいように思えた。


 僕達が魔車で現地に到着するタイミングで楽隊が盛大に音楽を奏でて2人を迎える。

 パチパチパチ……
 パチパチパチ……

 僕とマールが魔車から降りると集まった王族や一般市民から盛大な拍手が送られた。

「本日はようこそ、記念すべき日です」

 マールは手を振って演台に上り、始動式の挨拶を始めた。

 僕は案内係に誘導されてタワーの根本に向かい、そこにある操作台の前に立った。
 そして、演説を終えたマール王が僕の方に手を上げて、予定通り指示を出す。

 それと共に楽隊が盛大に音楽を奏でて盛り上げていた。

 ダダダダダダダ……

「点火!」

 僕は予定通り操作台に両手を置き魔力を流し始めた。

 ズォオオオオオオ……

 穏やかで力強い音が静かに響き、タワーをエネルギーが駆け上っていくのが判る。
 手に伝わってくる感触は巨大なダムに溜まったエネルギーが解き放たれる瞬間を待っているようだ。

「よし!ホーリーシールド!」

 僕が叫ぶと一気にエネルギーがほとばしり、伝送玉から解き放たれ天空へ炸裂する。

 ドドーン!バシューン!

 大きな爆裂音と共に巨大な光の幕が展開していき、王都全土を覆いながら遠方に広がる。

 それは半径100キロを超える巨大なドーム状の幕となって広大なエリアを包み込んだ。

「おおお!!」
「スゴーイ!!」
「なんとなんと!」

 その場の全員が驚きの歓声をあげ、王都の住人全員が驚いて窓から身を乗り出していた。

 だが、僕は閉じた空間の中で精霊の声を聴いていた。

「おめでとう」
「はい……精霊様」
「これで君にもすべてが見えるようになっただろう?」
「これは!……」

 精霊に言われるままに僕はその力を使い大陸全土を見渡していた。

 ふと、帝国が気になって焦点をあてると、そこは気持ちの悪いカビが蔓延する地獄に見えた。

「あの赤黒い点々は何だろう?」

 そう口にすると、帝国のあちこちに沢山あるそれの一つ一つが魔人であることが判る。

「カレン達は!?」

 するとカレン達が今まさにその魔人の軍団と戦闘を行っているのが判る、それもかなりの苦戦で全員が疲労のピークに達している様子であった。彼らを必死でサポートしているマサの姿も見える。

 エアホースは魔人によって破壊されていた。

 そして更に悪い事に帝国の帝城からその魔人が次々と湧いて来ていて、それはまるで悪夢だった。 

 それまで何百と魔人を葬って来たカレン達であったが、無限に湧いてくる魔人の軍勢に絶望しかけているのが見える。

 カレンは肩で息をして、カッツは魔人に囲まれて避けられずに殴られている。

「どうなっている!助けられないじゃないか!」
「なにを言う、君は今我々といるではないか」
「我々って?」

 ふと我に返ってみると、僕は夢幻の世界に居て、そこは僕自身の体内であった。
 そこで僕は精霊達と共にあり、全てを共有していたのだ。

「なるほど、ではこれはこうすれば……」
「すべては君の望むままだ」

 何をどうすれば良いのか、鑑定師の勘で全てを把握した。

「よし、彼らに祝福を」

 そう言うと、カレンやカッツ達全員に大地からの祝福が舞い、全員が疲労やダメージから完全に回復する。

「よし!行ける!やってしまえ!」

 完全回復したカレン達は鬼神のように振る舞い、次々と魔人を倒していく。

「彼らに死を」

 僕が赤い点に命令すると、それらは次々とつぶれて行き魔人は死滅していった。
 大陸全土に拡大しつつあった魔人軍団は徐々に消滅して土に還るのが見える。

「最後……そこに破滅を」

 僕が宣言をすると、帝城は巨大な地割れに飲み込まれて行き地中深くに消滅していく。

「良し!これで良いのだな……」
「うん、全部掃除できているようだね」

 僕の問いに精霊の中でも若い子が答える。

「良かった、これで皆助かる……」
「うん、でももうお別れしないとね」
「そうか、そうなのだね……」

 精霊と全てを共有している僕には判っていた。
 完全に覚醒して精霊と一体化した僕は、精霊そのものとなって人の形を維持できないのだ、と。

「これで良かったんだ」
「おかえり」
「ただいま」

 僕が言うと精霊が両手を差し出して僕を包み込んだ。


 シュン……キン……コロコロ。


 会場では僕が突然消滅して、大地の指輪が操作台の上に転がる音が響く。

 突然ニースが居なくなったことで警備員が騒ぎ初め、マールにそれが伝えられると彼は動揺していた。

「おい!どうしたのだ!?」

 それからニースの大捜索が始まるのだが、全く手がかりすら見つからなかった。


 暫くして、帝国からカレンやカッツ達が王国に帰還したが、カレン達もニースを知らないというのだ。

「どこに行ってしまったのやら……」

 マール王は手の中で転がしている大地の指輪を見つめて呟いた。
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