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再会
しおりを挟む久しぶりに出向いた酒場は相変わらず大賑わいだ。
あらかじめ精霊の感知力でアリアとリジーが来ているのを知っていた僕は、彼女達の隣のカウンターに座る。
「やぁ、元気?」
「ああ!ニースしゃまぁ」
「どこ行ってたのよぉ、寂しかったわよ……」
すっかりへべれけになっている2人がろれつが回らない舌で言う。
「ははは、仕事が忙しくてね」
「うそよぉ!うそうそ!絶対に王族とちゅっちゅしていたのよ」
相変わらずリジー節が炸裂して僕をからかう。
「ええ!ニースさま王族と結婚されるのぉ?」
アリアも乗っかってきて僕は笑う。
「あはは、すっかりご機嫌だね、マスター僕にもボトルで」
そう言って前のように金貨1枚を置き、最高の酒ボトルを受け取る。
「王族と結婚はしないし、僕は……はは」
「え……ミニーちゃんは?」
僕が少し寂しそうに笑うと酔っ払いの癖にリジーが鋭く反応する。
「うん、ミニーもカレン達と一緒に旅に出て行ってしまったよ」
自分の言葉がチクリと胸を刺す。
「え……一緒って?」
「そうだね、屋敷に住んでいた全員一緒に行ってしまった」
「ふーん、あ、そう……アリア!チャンスよ!」
リジーは少し疑いの酔った眼差しで僕を見てからアリアにけしかける。
「え!でもぉ、ニース様は軍師様で伯爵様ですものぉ」
アリアが可愛らしく言う。
「そうだね、僕は偉くなってしまったのだ、あはは」
「ちょっとぉ、そんなのダメよ、ダメダメよ!」
「あたしたちの手の届かない所に行ってしまわれたのねぇ」
「くくく」
僕は彼女らとの軽口を楽しんだ。
「ついこの前、王都に来た時は只のお兄さんだったのにぃ」
リジーが少し悔しそうに言った。
「僕がリジーをナンパすれば良かったのかい?」
「う、でもその時はあたし落ち込んでたのよねぇ、もしニース様に押されてたらヨロケテいたかも」
「もう、やっぱりなんだかんだ言ってリジーがニース様を一番好きなんじゃないのぉ?」
「そ、そんな事はないわよ!」
もっとも、今またリーサロスに陥っていて誰もナンパするような気分でもない。
僕には精神安定剤としてリーサが必要なのだなぁと、彼女が居なくなってからしみじみするのだ。
「悪いね……僕はもう心に決めた人がいるから」
「ええ~誰?」
「へへ、誰でしょう?」
リジーをからかうように言うと少しむっとして、それから話を変えた。
「あ、うちの弟どうしてます?」
「ああ、マサにはカレン達の護衛と連絡要員を頼んであるよ……そういえば帰ってこないな」
彼が出てからすでに1週間以上経っていた。
「まさか、マサちゃんサボってるのかしら」
「まぁそれは無いだろうけどね」
何となく僕は気になって来て適当に酒場を切り上げて帰る事にする。
「それじゃ、またね」
「ええええ、もう帰っちゃうの?」
「2人共有難う」
それで酒場を出て中央公園に聳え立つホーリータワーを見に行く。
「よく造ったものだな」
側のベンチに腰かけて夜空に聳えるタワーを見上げながら、改めて石工職人の作業に感嘆する。
タワーの周囲は大きな塀で囲われていて簡単には中に入れなくなっている。
タワーには奥深くに僕がホーリー魔宝玉を沢山埋め込んであるので、タワー自体が国宝級の存在だった。
それは金銭的な価値で表すと天文学的な値打ちがあるだろう。
けれど、その王都全員の命を守る超アイテムに値段は付けられなかった。
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