アイテムマイスター物語〜ゴミスキルで能無し認定された主人公はパーティーから追放され好き勝手に生きる事に決めました

すもも太郎

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ソロクエスト

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 王都を出てから東方に向かう街道はなだらかな丘陵に続いている。

 依頼書の略地図からすると王都から馬車で1日、徒歩だと2日といった所だ。

 王都を出る途中で運良く手に入ったドライフルーツと木ノ実を口に放り込み、ラセルは丘陵に向けて歩き始めた。

 王都の周辺は田園が広がっていたのだが、長期間のモンスターの出没で田畑はすっかり荒れ地になっていた。

 それでも、僅かに生き残り半野生化した芋のツルが幾つか弱々しく伸びているのが見て取れる。

「あれでは実は付いていないだろうな」

 そうは言っても有り金が殆ど無い今となってはアレを掘り出して齧るのも有りな気がしてくる。

 それでラセルはとあるアイテムについて思い出していた。

「なんて言ったかな、そうだ成長の宝珠!」

 それは国宝級のレアアイテムであり簡単には手に入らないらしいのだが。

 それを畑の作物に使うとあっという間に葉が茂り実がつくと言われている。

「いつか手に入れたいなぁ、僕なら……」

 そんな夢のような事を考えていたらアイテムマイスターのセンサーが発動した。

 ラセルが視線を伸ばした先には黒い光る石が転がって居るのが見えた。

「变化の魔石?」

 ラセルはそれをつまみ上げてしげしげと眺めているとおかしな事にきがつく。

「これは……今さっきまで使用されていたのか」

 变化の魔石はその名の通り、術師のイメージを対象に投影して姿を一時的に変化させるものだ。

 しかし、こんなところでそれを使う理由があるだろうか?

「考えていても仕方がないね」

 ラセルは立ち上がり再び速歩きで歩み始める。

 何せクエストの指定地点は遙か先なのだ、もたもたしている暇はない。


 だが、暫くして今度は記憶に新しい袋が破れて転がっているのを見つけた。

 それは先程パン屋で見かけたものによく似ている。

「まさか……さっきの子供達が?いやそれはないか」

 ラセルの脳内におかしなイメージが定着するのを振り払うようにあたまを振り、歩き始める。

 だが、夜露に濡れた様子すらないその破れた袋が気になっていてその後も暫くひっかかりを感じていた。

 暫らく歩くと今度はパンの食いかけのクズがアチコチに散乱している様子が見て取れた。

「……ふぅ……これは……あれだな」

 ラセルは背中に背負っていたタワーシールドを手に取り臨戦態勢になり周囲を伺う。

 街道は昼の陽光に照らされてツヤツヤと輝く腰丈の雑草を分けるようにしてずっと先、丘の上まで続いている。

 その牧歌的で長閑な平和そのものの空気に僅かに違和感を覚える。


 ラセルの実家は落ちぶれたとはいえ元は王族につかえていた騎士の家系である。

 その末裔のラセルは幼少期から武芸を仕込まれて育っていた。

 いま、冒険者をしているのも父から課された最終試練であるのだ。


 本当はニコルなんて大嫌いだし直ぐに白の牙なぞ辞めて他の誰かと冒険がしたかったのだが……。

 ……それを父は許してはくれまい……という思いからクビになるまで何とか耐えていた。

「決して仲間を裏切らず、クビになるまでは忠義をつくせ」

 それが父のいう騎士の心得の1つであったからだ。

 あの時にニコルからクビを宣告されて、悔しいという気持ちと共に何処か救われた気分ですらあった。

 ガサガサ……

「やはり……か」

 音がする方を注視すると数匹のゴブリンが草の茂みから飛び掛かってくるのが見えた。

「ギギギ!」

 それぞれが手に短剣を装備している所を見ると、魔術で操られている……のだろうと察する。

 この手のゴブリンは多少知恵もあり危険度は高めであるがラセルの敵ではない。

「カウンターバッシュ!」

 ドバン!ガンガン!

 重戦士の盾スキルを発動すると頑丈なタワーシールドがゴブリン達の頭にヒットして瞬殺してのけた。

 シューシュー……

 魔族は死亡するとその核となる魔石を残して気化して消滅していく。

 ゴブリンが消えた後には3つの魔石と短剣が転がっていた。

 只のゴブリンの魔石では大した金には成らないが無いよりはマシで、ラセルはそれを摘んで腰に下げた魔石袋に収納する。

 ついでに短剣を拾いタワーシールドの裏の皮に差し込み固定した。

「ゴブリン事件、何かありそうだが……」

 しかし、今の所解っている事は少ない。

「推測1……何者かによってゴブリンが操られ、王都に子供姿で侵入し街で騒動を起こさせた……」

 だが、それはなにかしっくり来ない推測だった。

 そこには大事ななにかが欠けている……ラセルにはそう感じられていた。
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