アイテムマイスター物語〜ゴミスキルで能無し認定された主人公はパーティーから追放され好き勝手に生きる事に決めました

すもも太郎

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激闘

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「エッカーズヒルか」

 ラセルは前方の広大な山岳地帯を眺めてつぶやいた。



 その日の夕方、王都から20キロほど東方にあるエッカーズ地方に到達した。

 ここは彼の祖国イシュタール王国の東方の辺境に位置していてさらに東方と北方に存在する帝国と皇国との交易路が交差する場所である。

 尤も、今は魔族による襲撃が頻発しており交易が途絶えていた。

 イシュタール王国にとっては重要な交易路であったが、帝国や皇国にとってイシュタール王国は所詮辺境の小勢力の一つに過ぎない。

 交易の取引先としての優先順位は低かった。

 そのため、一旦魔物が出没し始めると交易路ごと切り捨てられるのである。

 イシュタール王国は元々大陸の西端に位置しており東方からの交易が絶たれると困窮する弱小国家だ。

 更にここ数十年で国民が急増したため自前の田畑では食を賄い切れなくなりつつあり、また度重なる魔族の襲撃と旱魃が追い討ちをかけて今は食糧のインフレが急速に進んでいる。

 
 解決策として国軍による交易路魔物討伐部隊を派遣すればいいのだが、実際そうはならなかった……。

 算術に疎いラセルは、ソレは単に国家財政のせいなのだろう……と考えていた。




 夕闇が迫るなか、遠くの少し開けた場所に複数の人影が見えた。

 王都から大分離れた地点にソロでいると、誰か他人であっても人影を見ただけで何か嬉しくなっていた。


 ドーン……バリバリ……ドドドド


 その瞬間、落雷し爆音と煙が立ち緊張が走る。

 それはラセルの冒険者としての経験上大型のモンスターとのパーティー戦闘だと瞬間に悟った。

「事故の類ではない、か……行ってみるか」

 ラセルに誰かを救助するなどという考えはなく、単に自分のクエストの障害になり得るかどうかが最重要であった。

 以前の白の牙所属時代であれば、誰かを救助するという美談作りの為という行動原理もあったのだが……。

 今は人間不信がラセルを支配していた。

「万が一であれば離脱すればいいだけだ」

 口に出すと利己的で無情に響くその言葉にラセル自身少しギョッとしていた。

 人間不信であっても長年染み付いた「弱者を助けろ」という騎士の精神を放棄するその考えはラセルを驚かせた。

「いや、僕が命を張るのは金の為に決まっている」

 そう自分に言い聞かせながらラセルは戦闘の現場に走っていく。



 そこでは見慣れない装備の冒険者が4名とガーゴイル3体、少し離れた場所に商隊のものと思われる馬車が4両。

 馬車の装飾からしてもイシュタールの所属ではないと見てとれる。

 ……他国からイシュタールに来てくれた旅商人……ラセルにはそう見えた。

 
 戦闘は冒険者側が圧倒的に押されていて、今にも前線の剣士が崩れて半壊するように思われた。

 ガーゴイルの連携による剣士への集中攻撃は凄まじく、カウンター攻撃を狙う剣士から盾をもぎ取る。

 2体目のガーゴイルの空中からの爪攻撃が剣士の大剣を潜り抜けてクリーンヒットしてしまう。

 ガシーン!!

 そして3体目のガーゴイルが止めの特攻を掛けようとしている。

「ああ、終わった……」

 その瞬間、ラセルは呟きながらも剣士の前に飛び出してタワーシールドを構えた。

 ラセルの内側から湧き出る衝動が瞬間に彼を動かして剣士の援護に回っていた。

「カウンターバッシュ!」

 ドゴーン!

 凄まじい爆音がなり、会心のカウンターがガーゴイルの頭部に入った手応えを感じる。


 ズズーン……


 轟音を発してガーゴイルは頭部を完全にへし折られて地面に激突し動かなくなる。

「今だ!ライトニング!」

 間髪を入れずに後衛の黒魔術士が電撃攻撃の魔法を叩き込む。

 バリバリバリバリ、ドドーン!

 空中を旋回していた2体のガーゴイルは落雷魔法でダメージを受け、更に幻惑の付帯効果で機動力を大幅に削がれ地面に墜落していた。

「よし」

 ラセルはそういうと墜落したガーゴイルに突進してシールド攻撃を叩き込む。

「アンカーバスター!」

 ズドン!ズドン!ズドン!……

 重戦士のスキルを発動するとタワーシールド下部の鋭利な先端部を巨大な杭のようにしてガーゴイルの弱点である首の付け根に叩き込んだ。

 3連発の打撃を受けて2体目も完全に動きが止まり死亡。

 ソレを見た3体目は勝ち目が無くなったことを悟り慌てて飛び去っていった。

 グギャー!グワー!

 バサササ……バサッ!バササ!

 モンスターにしては異様に賢いやつだ。

 バシュー……

 戦闘が終わると死亡したガーゴイルは気化し、コアの魔石を残して消えていった。

「た、助かった!」

「やったわ!!」

「今治癒する!」

 ラセルの援護で助けられたパーティーはそれぞれが歓声を上げ、負傷している剣士の治療にあたる。

 振り返り見ると、立派な武装で固めた剣士と女魔術師3人が砂塵まみれで喜びの顔をこちらに向けていた。

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