アイテムマイスター物語〜ゴミスキルで能無し認定された主人公はパーティーから追放され好き勝手に生きる事に決めました

すもも太郎

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アンロック

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「まぁ……いいか……」

 いつの間にか指輪が無くなっていた事に気がついて、初めは驚いていたラセルもポケットを探り予備の指輪が有ることを確認して落ち着いた。

「無くていいの?大事なものじゃなくて?」

「町中ではそもそも不要だしね……」

「ふ~ん」



 その後、二人は高級ワインで乾杯しながら一年間の冒険のアレコレを話した。

 リーナの話は概ね同僚の女の子の恋バナに終始していたがリーナ本人の話はパッとしない。

「その……顎髭オジサン好きな子は……少し変わっているとは思うなぁ」

「そうかな?」

「うん、だってオジサンてだけでね……」

「ええ、でも~渋い顔しながら顎髭をコリコリするのは可愛いのよ」

「え?同僚の話だよね?」

「ええ、でもそこはあたしも分かるから……」

 ラセルが突っ込むとリーナは慌てて弁解じみる。

「ふ~ん、そっか顎髭かぁ……若者でも時々伸ばしてる冒険者がいるけど」

「それじゃ駄目!……みたいなのよ」

「へぇ、あくまでもオジサンが良いんだね」

「オジサンというか、本人限定らしいけどね」

「誰でも良いわけでは無い……のか」

「当然よ」

「ははは、なんかムキになってないか?」

「そんな……事はないわよ」

「ふ~ん、ま、好みは人それぞれだねぇ」

「ラセルにはそう言う関係の女の子とかいないの?」

「白の牙の時代は……パーティーはニコルのハーレムだったしね」

「なにそれ、感じ悪いわね」

「うん、多分僕はハーレムの邪魔者だったんだろうな」

「僻みはかっこ悪いわよ?」

 リーナが意地悪そうにニヤリとして言う。

「……ニコルはイケメンな上に上位騎士階級の子弟で、僕なんてとっくに平民落ちした元騎士の末裔だから」

「……騎士様がモテるのは仕方ないわよね……」

 リーナもそれには同意する。

「名家だから、貴族社会にも繋がりがあるし……ね」

「そこは勝てないわね、貴族と知り合いが多いなんて優雅に見えるわ」

 リーナは周りの席を見渡して納得した顔になる。

 どんな社会でも肩書が物をいう事は多いのだ。

「そんなわけで……いま僕と話をしてくれる女子なんてリーナくらいなもんだ」

「へ?ああ、そうね!だからあたしを大事にしなきゃね」

「あははは」

 リーナの態度はラセルにとって不可解であった。

 上機嫌でくっついてきたと思いきや、次の瞬間には上の空のようになる。

 ……やはりリーナはわからないや……

 それがラセルの感想だった。

「それで、リーナ自身はどうなの?」

「あたしは何もないわよ」

「あ~、年中冒険者パーティーを渡り歩いてるからか」

「そうなの、飽きっぽい性格だから……」

 ラセルはなんとなくリーナの言葉に違和感を覚えていた。

「ふーん……所で、これを見せびらかしたら女の子は僕に靡くと思う?」

 ラセルは胸のSランクプレートを指さして言う。

「どうかしら……確かに強い証明にはなるし、実際にそれで将来も安泰……なのかも知れないけどそれで靡く女の子はあたしは嫌かな」

「え、なんで嫌なの?」

「だって、力強(ちからず)くみたいじゃない、それに下品に見えるわよ」

「はは……下品かよ、その考えは無かったよ、リーナに訊いて良かった……」

「ええ?見せびらかすつもりだったの?」

「いや、ほら、冒険者男子の夢っていうかさ……」

 リーナに突っ込まれてあたふたしてしまう。

 欠片くらいは疚しい気持ちがあるのは事実であった。

「呆れた」

 そう言いながらもリーナはクスクスと可愛らしく笑った。

 ……やはり、リーナは判らない……



 その後は、ラセルがソロ活動で初めて冒険者達を救った話などをして食事の一時は終わった。


「今日は楽しかったわ」

「こちらこそ」

 店を出ると、もうリーナは腕を絡ませてきたりはしなかった。
 
 逆サイドに周り、ラセルの剣をジロジロと見ている様子だ。

「あの大きな盾はどうしたの?」

「あれはデカくて邪魔だったから置いてきた」

 魔人城クエストの時に盾の出番が全く無く、自分には今後盾は不要と判断して宿屋に残置していたのだ。

「へー、変わったわね」

「そう……」

「コイツではないぞ……」

 ラセルが「そうだね」と返事をしようとした瞬間、通りすがりの目つきの鋭い黒マントの男が小さい声で呟いたのが聞こえた。

「……え」

「どうかした?」

 リーナには全く聞こえていない様子からして、ラセルの超感覚はまだ有るように思えた。

「……リーナ、なにか嫌な予感がする」

 ラセルは振り向きもせずに小声で伝えた。

「どうしたの?」

「ハッキリとは判らないけど……」

 それは超感覚から得られた答えとしか言いようがない予感である。

「ふ~ん……それじゃあたしは帰るね、またねバイバイ~」

 彼女はそう言うと小さく可愛らしく手を振り足早にあるき去った。

「……ま、気の所為ってこともあるかな」

 ラセルは無理やり自分を納得させてあるき出す。

 その瞬間、また視られている感覚に襲われた。

「……またか……」

 ラセルは指輪の消えた手を見つめながら、その手で額をゴシゴシと擦った。

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