アイテムマイスター物語〜ゴミスキルで能無し認定された主人公はパーティーから追放され好き勝手に生きる事に決めました

すもも太郎

文字の大きさ
25 / 52

転職

しおりを挟む
 その日、ラセルは再度ギルマスの前に現れた。

「やあ、また来ました」

「お、お前なんか雰囲気変わったな、そのマントのせいか?」

「はは、そうかも知れないね」

 ギルマスのテッドは朗らかに笑うラセルを見てマントのせいではないような気がした。

「何かいいことでもあったか?もしかしてこれか?」

 ギルマスは小指を立てラセルを揶揄った。

「あー、そっちは全然なんだけどね、今日は転職の相談に来たんだよ」

「転職って急にどうしたんだ?」

「最近気がついたんだよ、ドタバタ頑張らなくてもお金って稼げるよね?」

「まぁ職業にもよるけどな?」

「実は錬金術師か魔法鍛治になろうかと思うのだけど、それに適した冒険者ギルドジョブってあるのかな?」

「なぁにい!」

 テッドは思わず大きな声が出てしまっていた。

 彼はラセルの力を知っているだけに、職人になりたいという彼の言葉がショックであっのだ。

「重戦士のジョブは冒険者ギルドのジョブだから、それをプライマリー(主職業)にしている時は職人にはなれんぞ?」

「どうすればいいの?」

「やるとするならば、一旦冒険者ギルドのジョブを引退して職人ギルドに入るしかねえが……いいのか?」

「その場合、これはどうなるの?」

 ラセルが胸の金のSランクプレートを指差して訊く。

「引退すればそれは没収になるな」

「なるほど……でも、そうするしかないのだよね?」

「まぁな、それと後からサブジョブで冒険者ギルドのジョブを選んでもキャリアはゼロからスタートになるぞ?」

「それは仕方ないのか」

 ラセルは魔法陣を使った錬成がとても気に入ってしまい、アイテムマイスターの称号も活躍するはずだという目論見があったのだ。

「本気か?」

「うん、それで頼む……後でまた重戦士のジョブをサブでお願いすると思うけど」

「……そう……か、ならば仕方ないその地命プレートに手を置いてくれ」

 カウンターに脇に設置されているプレートにラセルが手を置くと、テッドが変更処理の操作をして一瞬だけそれが光り作業は終了した。

「その職業の欄を見てくれ」

 名前  ラセル・ナイトハルト
 年齢  17歳
 ランク 該当なし
 職業  無職

 プレートにそれだけが表示されていた。

「ありがとう、また来るね」

 そういうと胸の金のプレートをテッドに返してギルドを出た。

 そのまま、通りの反対側にある職人ギルドの建物に入っていく。

「こんにちわー」

 内部の作りは冒険者ギルドとほぼ同じ作りである。

「いらっしゃい、おや、こっちは職人ギルドだよ」

 カウンターで受付をしていたギルドマスターは冒険者が間違えて入ってきたのかと思い注意する。
 
「いえ、分かってますよ、職人になりに来ました」

「へぇ、そうなのかい?……どんな職業に就きたいのだい?」

 ギルマスはラセルが腰に剣を2本も下げているのを見て不思議そうな顔をして訊ねた。

「錬成士か魔法鍛冶屋になろうかと思ってます」

「ふーん、ちょっと待ってな」

 ギルマスはそういうとカウンターに設置されている求人台帳を開く。

「ところで、両方とも魔法陣を使う職業だけど魔力はあるのかい?」

「ええ、それは大丈夫だと思います、それに一度錬成のお手伝いをしたこともあるし」

「ほぅ、ならば素質は問題なさそうだね、けれど今のところそのどちらも求人は出てないな」

「ダメなんですか?」

「そりゃ先ずはどこかの工房に弟子入りしないと無理だろう、ここでは見習いのジョブをつけてやる事しかできないからな」

「……ところで、錬成士と魔法鍛冶屋で違う点はありますか?僕はあまり詳しくはなくて」

「そうだな、錬成士は上達すれば様々な錬成や錬金までできるが鍛冶はできないし、魔法鍛冶屋は初めから武器防具が作れて腕次第では錬成も可能な上に武装に関しての特殊スキルが使えるようになる」

「へぇ、それはどんなスキルですか?」

「例えば、リフレスのスキルを使えば武器防具の簡単な補修がその場で出来るし、上級スキルのデュアルなら簡単に複製を作れる」

「それは凄いですね」

「何事も鍛錬だよ、それでどちらにする?」

「魔法鍛冶でお願いします」

「まぁ、求人は出してないだけで人手が欲しい工房は時々あるから、自分の足で探すなら多分どこかに就職できるだろうよ」

「あ!そうなんだね、それでは早速プラマリー(主職業)に魔法鍛冶で登録してください」

「ならそこの地命プレートに手を置きなさい」

 それにラセルが従い、ギルマスが操作をする。

「よし、できたぞ

 名前 ラセル・ナイトハルト
 年齢 17歳
 ランク見習い
 職業 魔法鍛冶(見習い)
 称号 アイテムマイスター

 ほぅ、君は変わった称号を持っているね」

「ええ、そうなんですよ」

「アイテムコレクターとかアイテム使いというのなら見たことがあるが、マイスター?というのは初めてだ」

「そうですかありがとうございました、それじゃまたそのうち来ますね」

 また向かいの冒険者ギルドに戻った。

「戻ってきました」

「おう、早かったな、それで重戦士で良いんだな?」

「はい、サブの所にお願いします」

「よし、っと

 名前 ラセル・ナイトハルト
 年齢 17歳
 ランク F
 職業 重戦士(サブ)
 称号 アイテムマイスター
 HP  12500
 MP  1100
 腕力  4000
 敏捷  3500
 器用さ 4000
 知力  4000
 魔力  4000
 耐魔  5000
 耐物  5000

 プライマリーではないからジョブブーストが落ちて少し変わったな」

 ……それでも相変わらずとんでもないな、とテッドは呆れた。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

処理中です...