アイテムマイスター物語〜ゴミスキルで能無し認定された主人公はパーティーから追放され好き勝手に生きる事に決めました

すもも太郎

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創作

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「ギルマス、監視魔法から隠れられる……そんな便利な装備は無いだろうか?」

 相変わらず監視の目が自分に張り付いているのを感じ、ラセルはそれが堪らなくなりギルマスに訊ねた。

「なんだラセル、お前誰かに監視されてんのか?……まぁ、その手のアイテムなら帝国か皇国だろ」

「たしか両国とも通商があったはずだよね」

「ここ数年は街道の魔物が出没するから商人は殆ど来ていないぞ」

 それで一応隣の武器防具屋とアイテム屋にも聞いてみたが在庫切れとのことだった。

「なるほど、となると手に入れるには自分で作るか買いに行くしかないか」

 買いに行くには余りにも遠いのでどうにかハンドメイド出来ないかと考え、ダメ元でそのレシピを魔法鍛冶屋に魔法石を納品したついでに訊ねた。

「ふむ……リフレクション系であればドロップアイテムで有るはずだがね……あれは確か最果ての洞窟だな……もし素材が有っても、ワシは作ったことは無いが」

 その老職人はそんなことまでよく知っていた。

 西の最果てにある魔封じの洞窟で魔物からレアドロップするらしいとのことである。

「もしそこにいくのなら……これをやる、只でいいよ」 

 ガサガサ

 老職人は古びて日焼けした地図をテーブルの引き出しから取り出してくれた。

「良いのかい、ありがとう」

 そこは魔法が通じない厄介な魔物の棲家で、ギルドのクエストにすらなっていない魔窟だ。

 ラセルも一度も行ったことがなく今回初めて知る。

 老職人に礼を言い、早速走って取りに行った。

 魔窟までは一本道なので簡単だ……そう考えていたのだが、実際には殆ど荒野であった。

 その今では誰も通らない廃道を数時間掛けて爆走すると魔窟に到着。

 王都から推定200キロ程度だ。

 途中、弱い魔物と沢山遭遇したが全てガントレットハンドで蹴散らして走り抜いた。

「ここみたいだな……」

 洞窟の周辺は巨大な岩山と岩地で草木も生えてなく、生命を感じない荒涼とした土地だった。

 以前魔人城で手に入れた散光魔法石のペンダントを胸から取り出して洞窟の内部に進入する。

 少し奥に進むと見たこともない鋼鉄のギラギラと光るスライムが現れた。

「出たな、ガントレットハンド」

 ブン!ドガ!バーン!

「うおっ!」

 それを殴りつけると物凄い手応えを残して一撃で爆散する。

 剣でやっていたら直に駄目になるだろう……そんな硬さだった。

 その音に反応して次々にワラワラとスチールスライムが集まってきてあっという間に囲まれてしまう。

「……これでは誰もやりたがらないな」

 けれど今のラセルには一撃で倒せるため爆発になれると楽しい作業になった。

 バーン!バーン!バーン……

「あはは、こりゃいいや」

 5体目以降、段々調子に乗ってきて「バンバンバーン」と口ずさみながら片っ端から撃破していく。


 気がつくと周囲のスライムは全滅していて、数十のレアドロップアイテムがキラキラと輝き散乱していた。

 その一つを指でつまみ上げて見る。

「……これがレフレクトの欠片だな」

 初めてみるそれがリフレクトの欠片であることが、アイテムマイスターのパッシブスキルで感じ取れた。

 試しにそれに魔力を送ると付着もせずに散乱して弾かれる。

「これは面白い」

 それはスライムが爆散する時に一緒に消滅してしまうことが多い為、欠片として残るのは少数であったが今回大量に倒したので結構な数の欠片が集まった。

 ラセルは両手に山盛りの欠片を手に入れて嬉しくなる。

「ふふ、これだけあればいいのでは?」

 それを革袋に全てしまい、もと来た道を爆走して帰った。


「ちわ~戻りました」

「おお!早かったな、もう戻るとは」

 老職人はラセルの早すぎる帰還に驚いていた。

「ええ、走るのも特技なので……早速お願いが有るのですがこれを何とか加工して貰えませんか?」

 ラセルが革袋からリフレクトの欠片を取り出すと老職人は目を丸くする。

「ほうほう……これじゃろうな、じゃが加工したことがないからのう……」

「そこは僕もお手伝いしますのでなんとかなりませんか!」

「そこまで言うのなら試すだけなら良いぞ、こっちだ」

 老職人に連れられて工房の奥に設置されている魔法陣へ行く。

「先ず、なにを加工したいのかによるぞ」

「このマントで試して貰いたい」

 ラセルが少し前に購入した黒のショートマントを手渡す。

「体積、面積からして相当の魔力が要るぞ、次に……」

 老職人は魔法陣の真ん中にマントを折りたたみ置き、合成用の素材のリフレクトの欠片を山盛りにしてマントの四方に配置する。

「あとはお主の魔力を注ぎ込むのじゃ」

 指示された魔法陣の箇所に両手をかざしてラセルが魔力を注ぎ込むと魔法陣が急激に輝きを増す。

 キーーン!

 高周波のような音が振動して響く中、老職人が呪文のようなスキルを唱えた。

「これこのモノの元混ざり合わさり……ありあるモノとなれ、コァレツェン!」

 バシュン……

 瞬間、魔法陣に竜巻が起こり爆発したように輝いた。

「ふむ……どうかな」

 魔法陣には黒いショートマントが少し乱れて有る。

 老職人がそれを手に取りシゲシゲと観察した。

「なかなか良いかもしれぬ、ほれ」

 そう言うと老職人が指先に作ったファイアボールを飛ばすとマントはそれを弾いた。

 パシッ!

「おお、出来たのですか!」

「うむ、着てみなさい」

 促されて早速装着すると直に監視の目が消えるのを感じた。

「あは!これは凄い!」

「なにか感じるのかな?」

「なにも感じません!」

「ほ?ホッホ」

 老職人はラセルの返事に意味がわからず笑った。

「ありがとう!ありがとう!」

 ラセルは大喜びで老職人の手を取り礼を言う。

「ホッホ、ホッホ」

 その後、ラセルは余ったリフレクトの欠片を工房にプレゼント寄付した。
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