アイテムマイスター物語〜ゴミスキルで能無し認定された主人公はパーティーから追放され好き勝手に生きる事に決めました

すもも太郎

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決意

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「私はずっと籠の中の鳥だったのね」

 ミレーネは自身の過去を語り最後にそう呟いた。

 ラセルは彼女の告白を聞いて、人間の世界と魔獣の跋扈する世界のどちらも同等に深い闇があるのだと感じた。

 ミレーネははっきりと言わなかったが、彼女の両親が病死したというのは恐らく捏造なのだろうとラセルは思った。

 護られているはずの皇室のトップが簡単に二人も同時に病死するわけがないのだ。

 その後、彼女が親族に良いようにされて最後は迫害され国から逃げなければならなかったのは偶然のわけがない。

 ……全部仕組まれている。

 そう考えた方が自然に思われた。

「そうか」

 ラセルの内で何かのスイッチが入り短く呟いた。

 ……どうしようもない人の世の闇を払いたい。

 今までは無視し続けていたが、これからは積極的に関わり……破壊者となろう……とラセルは決めた。

 ラセルはこれまでの事をつらつらと思い返していた。

 ……白の牙に差別的扱いを受けて追い出された事。

 ……命を狙われて暗殺者を送り込まれた事。

 ……ダークエルフと帝国がグルになって冒険者をおもちゃにしていた事。

 それら、社会の理不尽がミレーネの悲劇と重なってラセルの心の深いところに火を灯した。

 ……良いだろう、そういう事なら自分がぶち壊してやる。

 ……もし権力がまた同じ事を繰り返すというのなら、何度でも壊してやろう。

 

 その晩、彼女が眠ったのを確認してからあらかじめ魔法の文字を彫っておいた岩をテントの周りに配置して簡易的な魔法陣を作った。

 シューン

 ラセルが魔法陣を発動するとテント毎空間が遮蔽され周囲から隔離された。

「ミレーネ、ちょっと行ってくるね」

 ラセルは呟くと暗闇の中を猛然と走り出した。



 数時間後、ラセルは帝宮の正面から突入して暴れ回った。

 ドドーン!

 ズガーン!

 ラセルが次元刀を振ると宮廷の建物の柱が次々に切断粉砕されて建物が自重で崩壊していく。

 巨大災害のように暴れまわるラセルを見つけた魔道士達はその姿に恐怖し、反撃すらせずに逃げ惑っていた。

 ラセルは暴れまわりながら地下を進んでいく。

 以前入ったところとは反対側の地下の入り口を見つけて進む。

 暫くすると厳重な防壁魔法で囲われたエリアを発見し、それを次元刀で破壊して踏み込むと通路を塞いでいた魔法仕掛けの扉はラセルに反応して静かに開いた。

 シューン……


 すると、内部の異常な光景にラセルは怒りを忘れて息を呑む。

 研究施設のようなそこでは、多数の見たことのない魔法機材が壁一面に並び裸の意識を無くした冒険者達が金属の板の上に寝かされている。

 板から人体にはなにか得体のしれない管が繋がっていて魔光を放っていた。

「これは……」

 管の一つを手に取るとラセルのアイテムマイスターのスキルに反応して正体が判る。

 それは人工的な生物兵器の製造工場だった。

 それはラセルの怒りに再点火し、彼はそこを滅茶苦茶に破壊しながら地上に舞い戻った。


 モクモクと立ち上る砂塵のなか、悲鳴を上げながら逃げ惑う官僚が建物から必死で出て行こうとする。


 ズガーン!ガラガラボコボコボコ……


 その建物の入り口を瓦礫で塞いで閉じ込める。


「ハハハ!お前がやったのだなラセル!」

 不意にテラスの上から声がする、ラセルにはそれはダリウス王子の声だと分かった。

「悪いな」

「何をいう、俺は嬉しいぞラセル!」

 王子はアハハハハと哄笑しながらラセルに礼を言っていた。

「良いのか?」

「そうさ、こんな腐敗した国は焼かれるべきなのだ」

「僕は君の帝国を破壊するのだぞ」

「手伝おうか?」

「本気か?」

「ああ、そうとも」

 ラセルが王子の言葉に唖然としていると、王子は魔法を唱えて飛翔し自らの宮殿に破壊魔法を唱える。

「俺の最大魔法だ、腐敗と共に消滅しろ!オーバーフレア!」

 王子は巨大な光の球を両手で作り出してそれを宮廷に放った。


 ドォオオオオオオオン!

 王子の破壊魔法は大魔道士レベルの威力を持って宮廷に大きな穴を開けていく。


 ゴゴゴゴゴ……

 それが帝宮を支えていた柱を破壊して、帝宮は内側に崩壊しながら細かい瓦礫の山に変貌していった。


「凄い……」

 ラセルは彼の破壊魔法の威力に言葉を飲んでいた。

 彼は剣士よりも、魔道士の方の才があるのではないかと思った。


 完全に崩壊した宮廷から悲鳴すら聞こえず死の沈黙があった。

 トン

 ラセルの隣に降り立った王子は清々しい顔に見えた。

「すまない……」

「良いのだ、俺の迷いを払ってくれたことに礼を言いたい」

 ラセルと王子は深いところで理解しあっていた。

 どんなに正当な理由があろうが、親殺しは重罪だ。

 そのくびきが王子をこれまで腐敗した帝宮に止まらせたのだったが、ラセルがそれを破壊するキッカケを作ってくれた。

 その事に王子は感謝していた。


「これからどうすのだ?」

「僕は……皇国をぶっ壊しに行こうと思う」

「それは楽しそうだな、一緒に行っていいか?」

「勿論」

 二人は瓦礫の前で握手をして歩き出した。


 
 数時間後、瓦礫の一部が崩れて下部から空洞が覗くと、一人の屈強な男が肩に人を担いで這い出してくる。

「ふぅ、帝国ももう終わりだな」

 
 シードは重傷を負ったサラテを担いで瓦礫を降っていった。

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