追放されたおっさんは最強の精霊使いでした

すもも太郎

文字の大きさ
12 / 52

魔女とランデブー

しおりを挟む
「アキさんは不思議な方ね」


 とラムは言った。


 「それだけの力があるのに謙虚なのよね」

 「そうですか?」


 「もう一つ訊いていいかしら?アキさんは昨日、元精霊守護騎士と言われましたけど、それは昔のお話よね?」

 「そうですね、今は只の遊び人ですよ」


 「ん?」


 と、ラムは不思議そうな顔をして自分の右手の親指を見せ、ひらひらさせる。その美しく輝くホライズンブルーの親指の爪を見せてくれる。そして俺の左手を指さす。ハッとして、左手の親指と人差し指でカーキ色に地味に輝く爪を確認して分かった。


 「ラムさんも風のお守りを貰ったのですね」 

 「そうなのだけど、これは魔法使いの証よ、そして風の精霊の魂なの」


 「……と言う事は」

 「土の魂を貰っている大魔法使いなのに遊び人なんて……変よね」


 「知らなかった……どおりで、やたらと力が強いと思っていた」

 「二つも貰えるなんて貴方愛されているのね、羨ましいわ」


 「そうなんだな……」


 俺は土の大精霊にこれを貰ったときに魔法使いになって居たという事なのだった。そんな事も知らずに大きな力を振るっていたのだ。


 「もし、あなたが精霊とのつながりを意識したいのなら精霊使いを自称してもいいのよ」

 「その優しい心遣いに感謝します」


 ラムは元々ミューなので、やはり心根はやさしい娘のままなのだろうと感じた。今はミューとラムがダブって見えていた。


 「では精霊使いで行こうと思います」 

 「よろしくね、大精霊つかいさん」







 食事が終わったので町をぶらつき雑貨屋を探す事にした。いくら地図を見ても現在地すらよく分からないので実際に自分の目で上空から確認しようと思っていたのだ。


 そのためには、先日町で見た揺り籠を手に入れようと考えていたのだ。雑貨屋をめぐると3店舗目には赤ん坊用の揺り籠があったが、大人用のものは無いという。それは中央の交通センターに行かないと売っていないし、第一免許が必要なのだ、と。


 「免許だってさ」

 「へんなのー」


 と風の精霊が2人で笑っていたがこの町の人には風の精霊が見えないようだ。


 「どうしようか?」

 「箒一択ね」


 即、その店で一番大きな竹箒を銅貨5枚で購入して店の外に出てラムが箒に跨り、それを通行人が不思議な目で見ている。


 「後ろに乗って」


 街ゆく人々が見つめる中、言われるままにラムの腰を両手で支えて箒に跨るとフワっと浮かび急速に跳び上がった。


 「おわ!」


 と思わず叫ぶと、ラムがクスクスと悪戯っ子のように笑うのが聞こえた。そのままグルグルと旋回して辺りを俯瞰ふかんしながら素晴らしい速度で上昇していく。そして大分高空に上って来たのだが、そこから見える風景は見慣れないものだった。遠くに山脈が見えるが、それすら見た事もない山々であった。


 それで気が付いたのだがこの町では上空を飛行している人やモノは何もない。街で見かけた揺り籠もあくまでも多少浮かんで飛んでいるというレベルのもので上空には1つも飛んでいないのだ。


 「大きな山脈がみえるけど、あそこに行ってみない?」


 と前のラムが言う。それに二つ返事で答えると、またしても素晴らしい速度で流星の如く飛んだ。


 暫く飛んで雪がまだ積もっていない山腹に降り立つ。そこは素晴らしく良い空気と精霊気に満ちていた。ここに駐屯していればミューも戻ってこれるのではないかと思われた。


 「ああ!すごくいい空気だ」


 と俺がやや大げさに言うと、ラムも同意してくれた。風の精霊達も喜んでいる。下界とは何もかも違っていたのだ。ただ少し寒いので土魔法ヒートウェーブでラムにもエネルギーを回して温める。


 土の精霊気もここには満ち溢れていて、どれだけ使っても使いきれないくらいあるのだった。それで早速ここに家を建てようと提案する。


 「ここに拠点を作ろうと思うのだけど」 

 「良いわね、私も協力するわ」


 大魔法使い2人によってその拠点の山荘はあっという間に組み上がった。そのあと、何度か街で物資を購入して運び込んで俺達の城が完成した。その日はそれで日が暮れて休む事になった。


 木の香りがするその出来立ての山荘で俺たちは囲炉裏の焚火に当たり、温めたスープを飲んで眠った。


 「でも、すぐにお別れなんて寂しいわ……」


 と眠り際に隣のベッドでラムが独り言のように言うのが聞こえた。……いくら何でもそんなに早くチェンジしたりはしないだろう……と思っていたのだがそれは甘かった。


しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として

たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。 だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。 一度目では騙されて振られた。 さらに自分の力不足で全てを失った。 だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。 ※他サイト様にも公開しております。 ※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※ ※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※

処理中です...