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激闘……そして

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俺たちはそれから詳細な計画を練ってから行動を開始した。攻撃隊はファイブスターと俺とミューである。


 まず、地方にある支部にオババの遠隔転移魔法でゲリラ攻撃を仕掛けて順に各個撃破していった。それぞれに守備兵と魔獣が居て、それらを倒したのちに石板を破壊し最終的には基地をメテオで壊滅させていったのだ。さながら俺達は無敵の8人だ(オババ含む)。


 各支部には特徴的な魔獣が配置されていて、その弱点を的確について攻略をしていたのだが……次第に俺は疑念を持つようになった。あまりにも俺たちが無敵すぎ、順調すぎるのだ。自分の精霊守護騎士時代の経験からして、通常の初見アタックの成功率は精々60%、どんなに頑張って計画しても80%といったところなのだ。


 そして今回は明らかに大組織あいての連続テロなので2回目からは相当に警戒されてしかるべきだと思っていた……。5つ目の支部のファイヤーブルをカイラスの爆発魔法とメロエの水魔法を主体とした攻防で撃破した後、石板を消滅させている時にお調子者のリーフが言った。


 「余裕っすね~、ホント楽勝っす」

 「そうじゃな、さすがセブンスターズじゃのう、ホッホッホ」


 とオババがそれに応えた。オババは、俺とミューを入れて今はセブンスターズと言っていたのだ。だが、俺はオババには同意しかねていた。確かに初めのうちは的確なオババのアドバイスと連携による攻撃がクリティカルにヒットして、奇跡のように爽快とも思える大勝利を収めていた……という風におれには見えていたが、最近はなにかおかしいと感じていたのだ。


 ファイブスターズそれぞれの能力を十全に引き出して見せ場を作り出して、鮮やかに撃破すれば彼らの自信につながる、一見いい事のように思えるのだが慢心の元でもあると感じているのだ。むしろ敵の基地を5連撃破した頃にはメンバーは全員慢心しているようにすら見えた。


 慎重派のグスタフや、冷徹な戦略眼を持つカイラスまでもが「こんな遊びではつまらない」とでも言いたげな表情を浮かべている。それは余裕ともとれるが俺の目には慢心に映っていた。


 しかし、疑問点は多く残った。たとえ敵がわざと手を抜いていたとしても、基地ごと破壊されるのは小規模の街が消滅するのと同等の巨大な被害をもたらすのだ。そこまでして自演するとも思えなかった。



 「なぁ、ミューどう思う?」


 俺はついに我慢出来なくなってミューに訊いてみた。


 「あの……私はよくわからないけど、ラムがね、オババが変だよっていってるの」

 「ラム、オババが変というのをもう少し訊かせてもらいたい」


 「……うん、えっと、まず的確に相手の弱点を見抜いて指示をだしているのが変だってそれに……そもそも、なぜ敵の基地の真ん中に転移出来るの?って」

 「うむ、俺もそれはおかしいと思っていた、だがそれを以前オババに訊いたら”一度行った場所なら転移できる”らしい、つまり前に忍び込んだことがあるというのだ、そしてグスタフやカイラスもそれに同行したことがあると」


 一見それは矛盾していなく、むしろ現場の下見調査として優秀な戦士の証ともいえたわけだが……。あまりにも成功しすぎているのだ。それを同業のカイラスに訊くと「細かい事より、実績こそが全てだ」という。だが俺にはちぐはぐで何かかみ合わない違和感が残った。


 そんな中、いよいよ敵の本拠地の中央軍事基地に突撃することになった。







 いつものように、守備兵を軽く蹴散らして進み魔獣のいると思われる大空洞に入る。すると魔獣はおらず空洞の上部に設置された魔法のシェルターに入っている軍人が見えた。大空洞に入った直後に再度全土感知を行っていたのでそれには気が付いていたが、そのほかに妙な違和感を探知していた。空洞の四隅に何か機械が設置されており”動作”しているのを感じたのだ。


 「なにか変だ、みんな気を付けろ!」


 俺は思わず叫んでいた。その直後俺の誰何すいかをかき消すかのような大音量の声が響いた。


 「ようこそ!我が闘技場へ!」


 その声はアルダイルの物だった。その声に驚いたサリナが俺のそばに寄って来る。


 「あいつだ!皆気を付けろ、一斉攻撃!アースウォール!」


 全員の前に絶対防御の魔法防壁を立てると、皆一斉に攻撃に移った。


 「グランドチェンジ!」

 「ニードルアイス!」

 「メガボム!」

 「ゴーレムハンド!ハンドオン!」


 それぞれの得意技で大空洞の上部に設置されたその魔法シェルターを攻撃する、凄まじい爆音と衝撃波が大空洞を反響する。だがその魔法シェルターはほとんど無傷のようだった。俺のゴーレムハンドも小さいものしか作れないのでダメージが通らない。そもそもシェルターケージが小さすぎるのだ。


 「それで終わりかな?ハッハッハ、いままでの討伐は楽しんで頂けただろうか?」

 「どういう意味だ?」


 「今までの余興を楽しんでいただけたかと思いますが?」

 「茶番だったというのか?それにしては支部が壊滅して大損害だろう」


 「ハッハッハ、見くびってもらっては困るね、我々の資金力は無限なのだよ」

 「なにを言っている?」


 「金などというものは植民地からいくらでも手に入るものだ」

 「なん……だと!それは異国に侵略して奪ったものだろう!」


 「発展というのは、常に敗者がいてこそのもの、弱肉強食は世の常だろう?なにか問題があるのかね」 

 「なにを言う!この侵略者め!」


 「ハハ、ここでは君たちこそが侵略者だがね」

 「ふざけるな!」


 「君もしつこいね、ではそろそろお別れだ」


 そういうと奴はパチンと指をならす。その瞬間に大空洞の床全面が巨大な転移空間に化けた。


 ヒュォオン!


 と渦巻く黒のグルグルが突如現れて俺達を飲み込もうとする。


 だが、その瞬間に異常を察知した俺は重力魔法で吸引に抵抗し、そして渦に飲み込まれかけていた隣に居るミューとサリナを抱きかかえて上昇する。


 「ほほぅ、これは意外でしたね……」

 「なんて事をするんだ……」


 「君たち全員を捕まえるのは苦労しそうだったのでね、わざわざここまで来てもらったのだよ」

 「こんなものを作っていたとは……」


 周りを見まわすと、グスタフが抵抗をしていたがそれもむなしく渦に飲まれる瞬間だった。その凄まじい吸引力で俺達3人以外は全員飲まれてしまっていた。


 「彼らをどこに飛ばした?」

 「君たちはタフだからね、望む所にお帰り頂いただけだよ。ただし少し昔の時代だがね、フフ」


 「なんだと?」

 「知らなかったのかい?この渦は自らの運命が望む場所に導くものだ、君も遠慮せず入ればいい」


 そういうと更に指をパチンとならす、次第にその渦は形を変え、立体になり俺達を包み込んで球になろうとしていた。


 「やってくれたな!……だが、精霊使いをなめるなよ!」


 俺はこの基地全体を掴むゴーレムハンドを作り出した。


 「ゴーレムハンド!ハンドオン!」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴと凄まじい地響きを立てて大空洞自体が崩壊していくのが分かった。一瞬、天空が見えたので俺はミューに叫んだ。


 「ミュー!いまだ飛べ!」


 俺たちは超高速で飛び上がり間隙を抜けて空に舞い上がる。下を望むと、丁度巨大なゴーレムハンドが何もかもまとめて握りつぶしに掛かっていて、崩れ行く中で魔法のシェルターごと転移空間に飲まれていった。その直後装置が破壊されて転移空間そのものが消滅する。


 ズゴゴゴゴゴ……


 ゴーレムハンドが山ごと基地を全部握りつぶして巨大な噴煙をあげている。


 「ミュー助かったよ……またお前に助けられたな」

 「うん……でも……」


 サリナ以外、助けれなかったことが少し心に刺さっていた。それはミューも一緒だったようだ。



 「さて……これからどうしようかな……」


 俺たちは箒に3人乗りして楽園に戻った。

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