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3人の関係
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サリナ、年齢は11~12歳位らしい。正確な年齢は本人にも分からないようだ、誕生日は4月4日と覚えていた。ミューよりも小柄で顔立ちはどことなくミューに似ている。ピンク髪のミューに近い赤髪というのも似ている理由だったかもしれない。それとサリナは秘密結社バラクーダの団員唯一、俺達の風の精霊と話ができる存在だった。
「この国にサリナの家はあるのかい?」
「ないの……この街に来てからずっと本部に居たから、街の事もよくしらないの」
「そうか……ミュー……」
「大丈夫よ、アキは聖霊の騎士様なんだから」
「騎士様ってなんですか?」
「えっと……」
少し考えてから答える。
「素敵な男性って意味よ」
「キャー」
とサリナは俺に抱き着く。
「よしよし……」
ウーム、困った。正直な所今後どうしようかと思ってカチューシャを外し、ミューにもそれを促し2人で相談しようと思った。
「なぁ、俺達の国に無理やり連れて行くのはやはり誘拐ではないかな……」
「……」
「アタシ、ダメ?」
と元々カチューシャをしていないサリナが片言で話した。
「もしかして、言葉が判るの?」
「うん……少し」
「まさか……出身が同じ国だったりするのかな……元居たおクニの名前は判る?」
俺はドキドキして訊いた。
「えっと、まる、メル、マル……」
「マルター?」
「あ、うん、マルター」
「はは、同郷だったのか……お父さんとお母さんの事は憶えている?」
「オウサマ……だった」
「……お名前は?」
「アルパパとラムママ」
「……」
俺は一瞬ドキっとしてしまった……アルにラムか……と。アルパパもラムママも恐らく正式なものではなくて家族のあいだでの愛称だったのだろう事は判った。現王や親族の中でそんな名前の人は居ないし、マルター国には王女は存在しない。俺の知る限りでは数代前に居たけれど、隣の国へ嫁いでしまっていたのだ。
それにオウサマが王様とは限らないのだ。そういう似た職業や、お店の名前とかなのかも知れない。子供の頃にこちらにきてこちらの言葉になれてしまうと、言葉の壁を超えるのと同時に色々と忘却してしまうのだろう……。どちらにしろ、同郷ならばいっしょに国へ帰るのが良いに決まっていた。
ミューを見ると無言で頷いた。これで決まりだ。
「一緒に国へ帰ろうか」
「うん!」
こうなると話は早かった、まずはオババが占いの露店を出していた場所と連絡場所にしていた漁師の作業小屋を往復して関係者がいないか細かくチェックしてみた。だが、全く誰とも会わずに1週間が過ぎ、とうとう最後には小屋の持ち主の漁師と鉢合わせしてしまう始末だ。
それで困ったが、次の一手としてやはり統合管理庁に乗り込むしかなさそうだった。元々サリナはバラクーダで魔法戦士として育てられたので、荒事には慣れているのだ……と信じて。
・
・
・
一方、帰還作戦の準備の日々、俺たちは楽園の島で過ごした。あまり外に出たこともないというサリナとダイビングをしたり、お魚を獲って食べたりとごく普通の楽園生活を楽しんだ。夜はミューが夜空の星座を教えたりおとぎ話を聞かせたりして、まるで仲のいい姉妹という感じだった。そして皆で川の字になって眠った。
しかし、この子の寝顔をみると誰かによく似ていると思っていたが、ついに誰かが思い出せなかった。起きている時はミューに似ているのだが……。
楽園の生活と共に組織の探索も着々と続けていた。つまり3人で出かけてそこら中で何度も俺とミューがラブラブな全地調査を行ったのだ。それを見ていたサリナもやりたいと言ったが、サリナにはそっちの才能は無かったようだ。それを諦める代わり風っこ達とよく内緒のお喋りをして笑っていた。
「また、何かお喋りしてたね」
「うん、だってアキとミューの内緒のお話面白いんだもん」
風っこたちは俺達の事は大抵なんでも知っていたので、それを洗いざらいサリナに話してしまうのだ。
「困った子たちだな……」
「……」
ミューが真っ赤になっていた。
「どうした?」
「これではまるで……」
「ん?」
「もういいです!」
などと、悠長に敵地でやっている場合ではないのでその日もとっとと箒で飛んで帰った。
最近の調査の結果、この統合管理庁というのはある程度の高レベルの秘密組織のようだったが、それも中央軍事拠点を完全に破壊されてしまった今となっては単なるお飾りに過ぎない様だ。
ただ、人事的にはまだ使える情報があるようでその中でも暫くマークしていた人物を今晩追跡することにしていた。事前に得た情報によれば、彼の名前はマーク・スミズ、職業は諜報員で階級は中の上位、今晩遅くに転移装置の研究所に向かうという予定らしい。
「この国にサリナの家はあるのかい?」
「ないの……この街に来てからずっと本部に居たから、街の事もよくしらないの」
「そうか……ミュー……」
「大丈夫よ、アキは聖霊の騎士様なんだから」
「騎士様ってなんですか?」
「えっと……」
少し考えてから答える。
「素敵な男性って意味よ」
「キャー」
とサリナは俺に抱き着く。
「よしよし……」
ウーム、困った。正直な所今後どうしようかと思ってカチューシャを外し、ミューにもそれを促し2人で相談しようと思った。
「なぁ、俺達の国に無理やり連れて行くのはやはり誘拐ではないかな……」
「……」
「アタシ、ダメ?」
と元々カチューシャをしていないサリナが片言で話した。
「もしかして、言葉が判るの?」
「うん……少し」
「まさか……出身が同じ国だったりするのかな……元居たおクニの名前は判る?」
俺はドキドキして訊いた。
「えっと、まる、メル、マル……」
「マルター?」
「あ、うん、マルター」
「はは、同郷だったのか……お父さんとお母さんの事は憶えている?」
「オウサマ……だった」
「……お名前は?」
「アルパパとラムママ」
「……」
俺は一瞬ドキっとしてしまった……アルにラムか……と。アルパパもラムママも恐らく正式なものではなくて家族のあいだでの愛称だったのだろう事は判った。現王や親族の中でそんな名前の人は居ないし、マルター国には王女は存在しない。俺の知る限りでは数代前に居たけれど、隣の国へ嫁いでしまっていたのだ。
それにオウサマが王様とは限らないのだ。そういう似た職業や、お店の名前とかなのかも知れない。子供の頃にこちらにきてこちらの言葉になれてしまうと、言葉の壁を超えるのと同時に色々と忘却してしまうのだろう……。どちらにしろ、同郷ならばいっしょに国へ帰るのが良いに決まっていた。
ミューを見ると無言で頷いた。これで決まりだ。
「一緒に国へ帰ろうか」
「うん!」
こうなると話は早かった、まずはオババが占いの露店を出していた場所と連絡場所にしていた漁師の作業小屋を往復して関係者がいないか細かくチェックしてみた。だが、全く誰とも会わずに1週間が過ぎ、とうとう最後には小屋の持ち主の漁師と鉢合わせしてしまう始末だ。
それで困ったが、次の一手としてやはり統合管理庁に乗り込むしかなさそうだった。元々サリナはバラクーダで魔法戦士として育てられたので、荒事には慣れているのだ……と信じて。
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一方、帰還作戦の準備の日々、俺たちは楽園の島で過ごした。あまり外に出たこともないというサリナとダイビングをしたり、お魚を獲って食べたりとごく普通の楽園生活を楽しんだ。夜はミューが夜空の星座を教えたりおとぎ話を聞かせたりして、まるで仲のいい姉妹という感じだった。そして皆で川の字になって眠った。
しかし、この子の寝顔をみると誰かによく似ていると思っていたが、ついに誰かが思い出せなかった。起きている時はミューに似ているのだが……。
楽園の生活と共に組織の探索も着々と続けていた。つまり3人で出かけてそこら中で何度も俺とミューがラブラブな全地調査を行ったのだ。それを見ていたサリナもやりたいと言ったが、サリナにはそっちの才能は無かったようだ。それを諦める代わり風っこ達とよく内緒のお喋りをして笑っていた。
「また、何かお喋りしてたね」
「うん、だってアキとミューの内緒のお話面白いんだもん」
風っこたちは俺達の事は大抵なんでも知っていたので、それを洗いざらいサリナに話してしまうのだ。
「困った子たちだな……」
「……」
ミューが真っ赤になっていた。
「どうした?」
「これではまるで……」
「ん?」
「もういいです!」
などと、悠長に敵地でやっている場合ではないのでその日もとっとと箒で飛んで帰った。
最近の調査の結果、この統合管理庁というのはある程度の高レベルの秘密組織のようだったが、それも中央軍事拠点を完全に破壊されてしまった今となっては単なるお飾りに過ぎない様だ。
ただ、人事的にはまだ使える情報があるようでその中でも暫くマークしていた人物を今晩追跡することにしていた。事前に得た情報によれば、彼の名前はマーク・スミズ、職業は諜報員で階級は中の上位、今晩遅くに転移装置の研究所に向かうという予定らしい。
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