婚約破棄おめでとー!

鳥柄ささみ

文字の大きさ
7 / 7

7 エピローグ

しおりを挟む
 あれから結婚式を挙げ、ベルーナとウィクトルは正式に夫婦になった。宿屋の運営と飲み比べと称して酔った相手から情報を得る情報屋もきちんと夫婦で連携しながらこなしている。
 そして情報屋の仕事をしているうちに、かつてベルーナがいた国ではベルーナの予想通りなことが起きていたことを知った。
 ディデリクス王子は結婚と同時に国王になり、前国王夫妻は隠居。ディデリクス国王が国家運営をすることになったが、結婚したからといってすぐに性格が変わるわけもなく、何か突拍子もないことを思いついては国民を気まぐれに振り回してばかりだった。
 また、ベルーナの代わりに嫁いだカダレ公爵令嬢は自己中心的な性格で、国の運営はもちろん王妃としての勤めも放棄して散財ばかりしていた。また、噂通りの奔放な性格だったようで、世継ぎを次々と産むもののいずれも髪や瞳、肌の色さえバラバラで、誰がどう見てもディデリクス国王の子とは思えない子ども達ばかりだったが、ディデリクス国王は若くて可愛らしく夜伽がうまくて評判のカダレ妃を盲目的に愛し、咎めることなく好き勝手させていた。
 もちろん、このような状態で国家が運営できるわけもなく、国は疲弊し国民は不満を募らせた。そして、とうとう堪忍袋の緒が切れた国民達が決起し一斉に王宮に押し寄せ、国王夫妻を捕縛。王宮前で大勢の国民達の前で大々的に処刑されたのだった。もちろん、ディデリクス国王に寄生するように甘い汁ばかり啜っていた貴族達も次々と捕縛され、ベルーナの両親もその中に入っていたそうだ。
 ちなみに、その打倒国王を最初に掲げたのはかつてのベルーナの領民達であったそうで、国王達亡き今は優良な貴族や国民が国家を運営し、今までとは比べ物にならないほど国が安定しているらしい。
 先日も、ベルーナがアーロン国王のところに用事があって出向いたところ、現在宰相として君臨しているベルーナの元領民がたまたま来ていて感動の再会を果たし、「ベルーナ様! いずれまた国に戻って来てください!!」と熱弁された。ベルーナとしても現在の自国がどのような変化を遂げたか気になったが、アーロン国王はベルーナを手放す気は毛頭なく、どうにか交渉をして旅行だけならいいとの許可は得ることができ、旅行としてだがベルーナ達は国へ戻ることが叶ったのだった。


 ◇


「本当にすごいな、ベルーナは」
「何が?」
「いや、婚約破棄されても、国外追放されても、こうして力強く生きていることに改めて感心してな」
「何よ、急に。……ウィクトルがいてくれたからこうして私が好き勝手できてるのよ」

 あの一件からさらに数年経ち、二人の間には三人の子どもが生まれ、宿屋の運営も順調でたくさんの縁もでき、婚約破棄を受けたときには想像もつかないほど順風満帆だった。

「幸せか?」
「今更何よ、当たり前でしょう? それとも、ウィクトルは幸せじゃないの?」
「それはもちろん、幸せに決まってるだろう。ずっと諦めていたベルーナとの結婚もできたし、子どもまで授かれたんだからな」

 ウィクトルがベルーナに口付ける。
 ベルーナはその口付けを受け入れながら、きっかけである婚約破棄のことを思い出し、心の中で改めて「婚約破棄おめでとー! あのときの私」と思うのだった。





 終
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は反省しない!

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢リディス・アマリア・フォンテーヌは18歳の時に婚約者である王太子に婚約破棄を告げられる。その後馬車が事故に遭い、気づいたら神様を名乗る少年に16歳まで時を戻されていた。 性格を変えてまで王太子に気に入られようとは思わない。同じことを繰り返すのも馬鹿らしい。それならいっそ魔界で頂点に君臨し全ての国を支配下に置くというのが、良いかもしれない。リディスは決意する。魔界の皇子を私の美貌で虜にしてやろうと。

婚約破棄ですね、わかりました。

織田智子
恋愛
婚約という名の搾取。 やっと逃れられますね。 定番婚約破棄ものです。 初めて書くもので、結構雑なところがあるかと思いますが、 ご了承ください。 9/4 変な終わり方のまま完結にしてしまっていたため、 一話追加して完結にしました。 後の出来事は、 ご想像にお任せします(笑) 読んでいただき、ありがとうございました。

最難関の婚約破棄

灯倉日鈴(合歓鈴)
恋愛
婚約破棄を言い渡した伯爵令息の詰んでる未来。

幼馴染以上、婚約者未満の王子と侯爵令嬢の関係

紫月 由良
恋愛
第二王子エインの婚約者は、貴族には珍しい赤茶色の髪を持つ侯爵令嬢のディアドラ。だが彼女の冷たい瞳と無口な性格が気に入らず、エインは婚約者の義兄フィオンとともに彼女を疎んじていた。そんな中、ディアドラが学院内で留学してきた男子学生たちと親しくしているという噂が広まる。注意しに行ったエインは彼女の見知らぬ一面に心を乱された。しかし婚約者の異母兄妹たちの思惑が問題を引き起こして……。 顔と頭が良く性格が悪い男の失恋ストーリー。 ※流血シーンがあります。(各話の前書きに注意書き+次話前書きにあらすじがあるので、飛ばし読み可能です)

【完】今流行りの婚約破棄に婚約者が乗っかり破棄してきました!

さこの
恋愛
 お前とは婚約を破棄する! と高々と宣言する婚約者様。そうですね。今流行っていますものね。愛のない結婚はしたくない! というやつでわすわね。  笑顔で受けようかしら  ……それとも泣いて縋る?   それではでは後者で! 彼は単純で自分に酔っているだけで流行りに乗っただけですもの。  婚約破棄も恐らく破棄する俺カッコいい! くらいの気持ちのはず! なのでか弱いフリしてこちらから振ってあげましょう! 全11話です。執筆済み ホットランキング入りありがとうございます 2021/09/07(* ᴗ ᴗ)

【完結】私の事は気にせずに、そのままイチャイチャお続け下さいませ ~私も婚約解消を目指して頑張りますから~

山葵
恋愛
ガルス侯爵家の令嬢である わたくしミモルザには、婚約者がいる。 この国の宰相である父を持つ、リブルート侯爵家嫡男レイライン様。 父同様、優秀…と期待されたが、顔は良いが頭はイマイチだった。 顔が良いから、女性にモテる。 わたくしはと言えば、頭は、まぁ優秀な方になるけれど、顔は中の上位!? 自分に釣り合わないと思っているレイラインは、ミモルザの見ているのを知っていて今日も美しい顔の令嬢とイチャイチャする。 *沢山の方に読んで頂き、ありがとうございます。m(_ _)m

婚約破棄を宣告した王子は慌てる?~公爵令嬢マリアの思惑~

岡暁舟
恋愛
第一王子ポワソンから不意に婚約破棄を宣告されることになった公爵令嬢のマリア。でも、彼女はなにも心配していなかった。ポワソンの本当の狙いはマリアの属するランドン家を破滅させることだった。 王家に成り代わって社会を牛耳っているランドン家を潰す……でも、マリアはただでは転ばなかった。

どうするべきかは心の叫び(前世の後悔)が教えてくれる

ハートリオ
恋愛
チェリー・アーは仮婚約者であるボウ侯爵令息が友人相手にチェリーの印象を悪くする匂わせをしている場面に遭遇する。 怒るチェリーの頭の中で前世ハナコの声が! ボウ侯爵令息の前世はタロウといい、夫だった。 タロウへの怒りを持ち続けるハナコに、チェリーは仮婚約を解消しようと決意する。 前世ではタロウに悲しい思いをさせられたけど、今世ではそうはいかん! 全部で24,223文字、予約投稿してあります。 ・前世は日本人で異世界に生まれ変わっている設定です。 ・異世界はドレス、馬車、騎士の世界観です。

処理中です...