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2章【告白編】
12 エスコート
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「まぁ、リーシェ様!ここにいらっしゃったのですね」
「ペルルーシュカ様。どうかされましたか?」
クレバス卿をニールと共にどうにか説得し終え、さてやっとこさ食事にありつこうと思っていたときだった。不意にペルルーシュカから声をかけられ、食べようとした食事の手を止める。
「ぜひともダンスを踊ってくださらない?」
「え、えぇ、構いませんよ」
また食事はお預けか、と泣く泣く席を立つ。ペルルーシュカをエスコートしながらホールに行けば、結構な人々がダンスをしていた。曲の合間にバースを見ると、疲れ切った表情をしているのが見えて、彼の方まで近づく。
「バース、大丈夫?」
「リーシェさん。一応休みはちょこちょこといただいてはいるんですが……」
この話ぶりだと、ほぼほぼずっと弾いているのだろう。私もこれだけ忙しくしているのだし、演奏者もあまりいないとなると、変わり手がおらず、特に主催者側ということで配慮があまりされていなさそうだ。
こういうところが、クエリーシェルは配慮に欠けていると思う。私もそれなりに弾けはするが、主賓が弾くというのも変な話だろうか。いや、でもこの疲弊ぶりを見ていると可哀想で見ていられない。
「ダンスが終わったら演奏変わるわね」
「ありがとうございます」
曲が始まり、ダンスのステップを踏む。ダンスはもう過去に腐るほど踊っているので、身体にはステップが染み付き、慣れたものである。男性役も、よく姉やアーシャの相手役をしていたので、慣れていた。
「リーシェ様はダンスもお上手なんですね」
「ありがとうございます。ペルルーシュカ様もお上手ですよ」
「そうですか?ありがとうございます!リーシェ様にお褒めいただけるなんて、嬉しいですわ」
「では、せっかくですから、ちょっと面白いことを致しましょうか?」
「まぁ、楽しみ!」
そう言って喜ぶ彼女を、曲に合わせて回転させたり、軽く振って抱き留めたりする。こういうダンスはよく姉やアーシャに喜ばれていたのだが、ペルルーシュカも例外ではないようでだんだんと顔が赤らんでいくのがよくわかった。
「まぁ、素敵素敵!リーシェ様は王子様のようですわ」
「ありがとうございます。お喜びいただけて」
曲が終わり、パッと顔を上げると、視線が自分に集中しているのがよくわかる。
(ん?私、何かやらかした?)
その誰も彼もが女性であり、皆妙齢の、未婚女性らしき人ばかりなことに気づく。そして、その彼女達は皆、頬を染めていて、まるで熱に浮かされたかのように熱い視線をこちらに向けていた。
(うん、もしやというか、まさかというか……)
ペルルーシュカ嬢をホールからエスコートすると、わっと集まってくる女性達。妙齢のドレス姿の女性に囲まれるというのはなかなかに稀有なことであるが、シュールな光景でもある。
「あの……」
「リーシェ様、ぜひとも私と踊ってくださいませ」
「いえ、ぜひ私と!」
「私もリーシェ様と踊りたいです」
「リーシェ様!」
「リーシェ様!!」
(なんなんだ、この状況)
やけに今日はモテるなぁ、と思いながらも本来モテなきゃいけない人を目で探すと、未だにファーミット卿と話し込んでいるようだ。
(そういえば、考えてみたら未だケリー様とは踊ってないな)
その事実に気づいて、我ながら衝撃を受ける。これだけ一緒にいるのにダンスをしていないというのもなんか変だな、と思いながらもそういう機会も少なかったから仕方ないか、と思考を自己完結させる。
(この感じだと、今日はケリー様と踊るのは難しそうね)
なんとなく残念に思いながら、自分を囲んでる女性達に向けて、「順番に皆さんと踊りますから、お待ちください」と微笑むと、「はぅわ!」と何人かの娘が声をあげて崩れる。
(私、変なフェロモンでも出してるかしら)
ちょっと気になりつつも、1人1人恭しくエスコートをしながら、ダンスホールへと向かうのだった。
「ペルルーシュカ様。どうかされましたか?」
クレバス卿をニールと共にどうにか説得し終え、さてやっとこさ食事にありつこうと思っていたときだった。不意にペルルーシュカから声をかけられ、食べようとした食事の手を止める。
「ぜひともダンスを踊ってくださらない?」
「え、えぇ、構いませんよ」
また食事はお預けか、と泣く泣く席を立つ。ペルルーシュカをエスコートしながらホールに行けば、結構な人々がダンスをしていた。曲の合間にバースを見ると、疲れ切った表情をしているのが見えて、彼の方まで近づく。
「バース、大丈夫?」
「リーシェさん。一応休みはちょこちょこといただいてはいるんですが……」
この話ぶりだと、ほぼほぼずっと弾いているのだろう。私もこれだけ忙しくしているのだし、演奏者もあまりいないとなると、変わり手がおらず、特に主催者側ということで配慮があまりされていなさそうだ。
こういうところが、クエリーシェルは配慮に欠けていると思う。私もそれなりに弾けはするが、主賓が弾くというのも変な話だろうか。いや、でもこの疲弊ぶりを見ていると可哀想で見ていられない。
「ダンスが終わったら演奏変わるわね」
「ありがとうございます」
曲が始まり、ダンスのステップを踏む。ダンスはもう過去に腐るほど踊っているので、身体にはステップが染み付き、慣れたものである。男性役も、よく姉やアーシャの相手役をしていたので、慣れていた。
「リーシェ様はダンスもお上手なんですね」
「ありがとうございます。ペルルーシュカ様もお上手ですよ」
「そうですか?ありがとうございます!リーシェ様にお褒めいただけるなんて、嬉しいですわ」
「では、せっかくですから、ちょっと面白いことを致しましょうか?」
「まぁ、楽しみ!」
そう言って喜ぶ彼女を、曲に合わせて回転させたり、軽く振って抱き留めたりする。こういうダンスはよく姉やアーシャに喜ばれていたのだが、ペルルーシュカも例外ではないようでだんだんと顔が赤らんでいくのがよくわかった。
「まぁ、素敵素敵!リーシェ様は王子様のようですわ」
「ありがとうございます。お喜びいただけて」
曲が終わり、パッと顔を上げると、視線が自分に集中しているのがよくわかる。
(ん?私、何かやらかした?)
その誰も彼もが女性であり、皆妙齢の、未婚女性らしき人ばかりなことに気づく。そして、その彼女達は皆、頬を染めていて、まるで熱に浮かされたかのように熱い視線をこちらに向けていた。
(うん、もしやというか、まさかというか……)
ペルルーシュカ嬢をホールからエスコートすると、わっと集まってくる女性達。妙齢のドレス姿の女性に囲まれるというのはなかなかに稀有なことであるが、シュールな光景でもある。
「あの……」
「リーシェ様、ぜひとも私と踊ってくださいませ」
「いえ、ぜひ私と!」
「私もリーシェ様と踊りたいです」
「リーシェ様!」
「リーシェ様!!」
(なんなんだ、この状況)
やけに今日はモテるなぁ、と思いながらも本来モテなきゃいけない人を目で探すと、未だにファーミット卿と話し込んでいるようだ。
(そういえば、考えてみたら未だケリー様とは踊ってないな)
その事実に気づいて、我ながら衝撃を受ける。これだけ一緒にいるのにダンスをしていないというのもなんか変だな、と思いながらもそういう機会も少なかったから仕方ないか、と思考を自己完結させる。
(この感じだと、今日はケリー様と踊るのは難しそうね)
なんとなく残念に思いながら、自分を囲んでる女性達に向けて、「順番に皆さんと踊りますから、お待ちください」と微笑むと、「はぅわ!」と何人かの娘が声をあげて崩れる。
(私、変なフェロモンでも出してるかしら)
ちょっと気になりつつも、1人1人恭しくエスコートをしながら、ダンスホールへと向かうのだった。
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