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4章【外交編・サハリ国】

11 セイレーン探し

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「というわけで、捜索をします」
「実は本当にセイレーンという可能性は?」
「え、ケリー様信じるタイプですか?」
「いや、そういうわけではないが……」

モゴモゴとまごついているところを見ると、心霊系の類は苦手らしい。こんなんで大丈夫なのか、国軍総司令官……とちょっとコルジール国が心配になる。

「え、と特徴としては髪が長い女性ってことだけですか?」
「えぇ。あとは日中ではなく夜に活動してることが多く、みんなが寝静まってから移動してるようです」
「なるほど。でも、隠れるって言ってもどこに……」

ヒューベルトの指摘は最もである。狭い船内で隠れられる場所は限られている。甲板には常に人がいるので、いるとしたら確実に船室であるだろうことが予想される。

だが、正直船室もあまり無人になることは少ないし、船室にはほぼ荷物を置いていた。そのため、基本的に今使用している客室以外は客室として機能していない。

(ん、待てよ……?)

客室として機能はしていないが、全く使用できないわけではない。そもそも荷物を取りに行く以外は基本使用していない部屋が多い。ということは、隠れようと思えば隠れられるというわけだ。

(荷物をそれぞれ把握していれば普段使う物、使用頻度の低い物、とそれぞれわかるはず)

しかも、使用頻度の高低差によって部屋分けをしているので、使用頻度が低いところには滅多に足を運ばない。先日の嵐でいくつか移動はさせたが、その時はその時でどこかに姿を隠していたのかもしれない。

「あくまで憶測ですが……可能性としては客室かと」
「客室?」
「客室ですか……。それって、今はあの荷物置きになっている……?」
「えぇ、そうです。荷物、特に香油や調味料、酒や武器などの交易品が置かれているところはあまり人が出入りをしていませんので、可能性が高いかと」

言うと2人とも納得したのか、ふむふむと頷いている。確信は持てないものの、可能性としてはそこが最も高いので、とりあえずそこを調べてみる価値はあると思う。

「まずはリーシェが言ったところを探すか」
「そうですね」
「えぇ、できればそうしていただけると助かります。下手にまた夜になってしまうと面倒ですし、そこでトラブルになっても困りますから」

まだ昼に差し掛かるくらいなので時間の猶予はあるものの、いつまでもいるかどうかもわからない「セイレーン」探しをするわけのもいかないので、やるなら短期決戦である。

ここは手分けして一気にカタをつけてしまいたい。

「では、時間も惜しいですし手分けして探しましょうか」
「俺は酒類のところを探します」
「では、私は香油や調味料などの部屋を探そう」
「承知しました。では私は武器関連のところを確認しておきますね。見つけたら確保をよろしくお願いします」

万が一、ないとは思うが情報収集のためにスパイが紛れて脱出艇などを利用して脱出する可能性もなきにしもあらずだ。あと、ただの泥棒で海のど真ん中だというのに海に飛び込んで逃げようとする可能性もある。

下手にそれで亡くなってしまったら後味が悪いし夢見も悪いので、なるべくなら逃げ出す前に確保してしまいたい。

「ちなみに、もし確保困難な場合は?」
「というと?」
「そ、それは……実際にセイレーンだったりオバケだったり」
「そのときはそのときで臨機応変に対応していただければと。まぁ、食糧品がなくなってることを考えると、限りなく可能性としては低いですが」

(やはり心霊系が苦手なんだな)

正直、意外な一面である。自宅だって正直「出そう」と言えば出そうだったが、それは気にならないのだろうか。

今度その辺きいてみよう、と思いながら私は武器を保管している部屋に向かうのだった。
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