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4章【外交編・サハリ国】
19 勉強
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最後の仕上げとばかりに、髪を結い上げるために紐を用意する。私はあまりカジェ国の流行がわからないので、マーラから希望は言われたものの、即座に却下した。
「何でですの!」
「どうしてもなさりたいなら、ご自分でなさってください」
「……っ、ならいいですわ」
ここまでワガママというか自己主張が激しい人を見たことないので、ある意味新鮮である。まだ15だと言っていたし、中身が伴わないまま見た目だけが成長してしまっているのだろう。
身長で言えば私よりも高いし、肉付きもいい。顔立ちもハッキリとしているのと褐色なのもあって、私とマーラを比較したら確実に彼女の方が年上と見られそうだが、中身はまんま子供である。
「そういえば、あの嵐の間よく大丈夫でしたね」
結構揺れたというのに、それを怖がりもせずによくまぁあの後も隠れていられたな、と今更ながらびっくりする。
「びっくりはしましたけど、布団にさえこもっていたら大丈夫でした」
確かに外に出ず、部屋にこもっていたならある程度は大丈夫ではあろうが、それにしたってあの揺れと雷雨だ。
音も室内にいても聞こえてただろうし、打ち付ける雨や風の音で不安が掻き立てられなかったのだろうか、と単純に疑問であったが杞憂だったようだ。
(結構、図太い性格のようだな)
ある意味、さすがではあるが。ただのワガママな皇女ではなさそうだ。
そもそもここの船に密航する時点でガッツがあるのはわかっていたが、行動力も豪胆さも備わっていて、マーラも私と同様変わった姫であることには違いがないように思う。
「そういえば、この船はどこに向かってますの?」
「この船はサハリに向かってます」
「まぁ、サハリ国!ワタクシ、とうとう海外に行けるのですね!!」
なぜか急に気色ばむマーラ。海外に憧れがあったのだろうか。
「サハリ国を知っているのですか?」
「えぇ、地図はよく目にしてますもの!カジェよりも東北に向かったところですわよね?確か染料で有名だとか」
「よくご存知で」
「ふふん、ワタクシ、勉学に関しては長けてましてよ?」
胸を張って自慢げに話す辺り、嘘ではないのだろう。そもそも地図を見て国を知っているというのは、姫にしては珍しい行いだ。
しかも他国の名産物などを知っているということは、相当に勉強したのだろう。他国へ行ったことがないのなら、なおさらだ。恐らく自主学習なのであろうが、それはそれで凄いことである。
「ご自分でお勉強なさったのですか?」
「えぇ、もちろん!ワタクシの憧れはアーシャ様だと申したでしょう?あの方のように美しく、賢く、素晴らしい女王になりたいのです!」
殊勝な心掛けだと、素直に感心する。ただ、彼女がいう自主学習で覚えたということなら、親はあまり彼女への勉学を良しとしていないのではないだろうか。
そもそも、他国語が話せ、さらに国家の配置だけでなく、特産物などの把握ができるほどの賢さがあるにも関わらず、自主学習で学んだというもはおかしな話である。
意欲があるなら普通は王族であれば学ばせるものだと思うのだが、そうではないのだろうか。
(いや、それとも、王族だからこそ自主性を重んじてるのだろうか)
アーシャもどちらかと言うと突き放された教育を受けていたと聞くし、それがカジェ国式なのかもしれない。下手なことを言っても仕方ないから、とりあえず彼女に話を合わせておくことにした。
「それは素晴らしい心掛けですね」
「そうでしょう?」
「えぇ。ちなみに、我が国ペンテレアはもう少し北東に進んだ島国でした」
「ん?それって、もしかして、ゴードジューズ帝国の領地になっている場所?」
「……やはり、帝国領として記載されているのですね」
わかってはいたものの、何となく悲しくなる。そういえば、アーシャと航路について話していたときの地図には上手くペンテレアの位置は取り除かれていた。
(本当、どこまでも気が利くのだから)
私が黙り込んだことで、彼女も何か察したのか黙り込む。髪を結い上げると、全ての身嗜みが整え終えた。
「では、まずは船長にご挨拶に行きますよ」
「えーー!まずはクエリーシェル様にお会いしたいですわ!」
「予め言っておきますが、クエリーシェル様には想い人がいるから無理です」
あえて私がその相手とは言わないが、先手をうつためにも牽制しておく。だが、そんなことでへこたれるような相手ではなかった。
「まぁ!望むところですわ!ワタクシの魅力でクエリーシェル様を落としてみせますわ!」
(先が思いやられるな……)
これ以上言ったところでどうにかなるわけでもなし、とりあえず船長のところへ彼女を連れ立って向かうのだった。
「何でですの!」
「どうしてもなさりたいなら、ご自分でなさってください」
「……っ、ならいいですわ」
ここまでワガママというか自己主張が激しい人を見たことないので、ある意味新鮮である。まだ15だと言っていたし、中身が伴わないまま見た目だけが成長してしまっているのだろう。
身長で言えば私よりも高いし、肉付きもいい。顔立ちもハッキリとしているのと褐色なのもあって、私とマーラを比較したら確実に彼女の方が年上と見られそうだが、中身はまんま子供である。
「そういえば、あの嵐の間よく大丈夫でしたね」
結構揺れたというのに、それを怖がりもせずによくまぁあの後も隠れていられたな、と今更ながらびっくりする。
「びっくりはしましたけど、布団にさえこもっていたら大丈夫でした」
確かに外に出ず、部屋にこもっていたならある程度は大丈夫ではあろうが、それにしたってあの揺れと雷雨だ。
音も室内にいても聞こえてただろうし、打ち付ける雨や風の音で不安が掻き立てられなかったのだろうか、と単純に疑問であったが杞憂だったようだ。
(結構、図太い性格のようだな)
ある意味、さすがではあるが。ただのワガママな皇女ではなさそうだ。
そもそもここの船に密航する時点でガッツがあるのはわかっていたが、行動力も豪胆さも備わっていて、マーラも私と同様変わった姫であることには違いがないように思う。
「そういえば、この船はどこに向かってますの?」
「この船はサハリに向かってます」
「まぁ、サハリ国!ワタクシ、とうとう海外に行けるのですね!!」
なぜか急に気色ばむマーラ。海外に憧れがあったのだろうか。
「サハリ国を知っているのですか?」
「えぇ、地図はよく目にしてますもの!カジェよりも東北に向かったところですわよね?確か染料で有名だとか」
「よくご存知で」
「ふふん、ワタクシ、勉学に関しては長けてましてよ?」
胸を張って自慢げに話す辺り、嘘ではないのだろう。そもそも地図を見て国を知っているというのは、姫にしては珍しい行いだ。
しかも他国の名産物などを知っているということは、相当に勉強したのだろう。他国へ行ったことがないのなら、なおさらだ。恐らく自主学習なのであろうが、それはそれで凄いことである。
「ご自分でお勉強なさったのですか?」
「えぇ、もちろん!ワタクシの憧れはアーシャ様だと申したでしょう?あの方のように美しく、賢く、素晴らしい女王になりたいのです!」
殊勝な心掛けだと、素直に感心する。ただ、彼女がいう自主学習で覚えたということなら、親はあまり彼女への勉学を良しとしていないのではないだろうか。
そもそも、他国語が話せ、さらに国家の配置だけでなく、特産物などの把握ができるほどの賢さがあるにも関わらず、自主学習で学んだというもはおかしな話である。
意欲があるなら普通は王族であれば学ばせるものだと思うのだが、そうではないのだろうか。
(いや、それとも、王族だからこそ自主性を重んじてるのだろうか)
アーシャもどちらかと言うと突き放された教育を受けていたと聞くし、それがカジェ国式なのかもしれない。下手なことを言っても仕方ないから、とりあえず彼女に話を合わせておくことにした。
「それは素晴らしい心掛けですね」
「そうでしょう?」
「えぇ。ちなみに、我が国ペンテレアはもう少し北東に進んだ島国でした」
「ん?それって、もしかして、ゴードジューズ帝国の領地になっている場所?」
「……やはり、帝国領として記載されているのですね」
わかってはいたものの、何となく悲しくなる。そういえば、アーシャと航路について話していたときの地図には上手くペンテレアの位置は取り除かれていた。
(本当、どこまでも気が利くのだから)
私が黙り込んだことで、彼女も何か察したのか黙り込む。髪を結い上げると、全ての身嗜みが整え終えた。
「では、まずは船長にご挨拶に行きますよ」
「えーー!まずはクエリーシェル様にお会いしたいですわ!」
「予め言っておきますが、クエリーシェル様には想い人がいるから無理です」
あえて私がその相手とは言わないが、先手をうつためにも牽制しておく。だが、そんなことでへこたれるような相手ではなかった。
「まぁ!望むところですわ!ワタクシの魅力でクエリーシェル様を落としてみせますわ!」
(先が思いやられるな……)
これ以上言ったところでどうにかなるわけでもなし、とりあえず船長のところへ彼女を連れ立って向かうのだった。
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