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4章【外交編・サハリ国】
69 憤るマーラ
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「大丈夫?」
「あ、あぁ、大丈夫だ。見苦しいものを見せた。許せ」
前国王夫妻が退出したのを確認したあとブランシェに声をかけると、いつもと違って余裕がなさそうな表情。顔は強張り、声も固いままだった。
一応私に心配をかけまいとしている様子だが、ぎこちないのは誰の目から見ても明らかだった。
「随分と、感じが悪い方々でしたわね」
不意に、マーラが吐き捨てるように言う。そういえば本人に聞いていなかったが、マーラは語学を勉強していたというから、サハリ語はある程度わかるのだろうか。
「マーラ様、言葉がわかるのですか?」
「えぇ、まぁ、全部が全部ではないですけれど、多少ならわかりますわよ。それにしても、親が我が子に接する態度とは思えませんでしたわ」
険しい目つきで眉を顰めるマーラ。珍しくこんなに人のことに対して怒っているなぁ、とちょっとびっくりする。普段は、自分の不利益になることしか怒っているイメージがなかったのだが。
「まぁ、そうですね。でも家庭の事情は人それぞれですから」
「そうかもしれませんけれど、過去に一国の王ともなった方があのような態度というのは……。我が国のアジャ国王と雲泥の差ですわ。……でもまぁ、そうですわね。少なくとも、ワタクシはあんな親でなくてよかったとは思いますわ」
(随分とけっちょんけっちょんな言い方だなぁ)
そもそも、ブランシェと何かあったのだろうか。あまり接点はなかったようには思うが、自分が目にしているものが全てではないし、もしかしたら私が知らぬ間に彼らの間に何かあったのかもしれない。
「そうやって率直に物事を口に出せるのはマーラ様の美点ですね」
「何ですの?ワタクシに対しての嫌味ですの!??」
「褒めてるんですよ」
実際、こういうことを素直に言えるのは悪いことではない。もちろん、時と場合によるが。
私も少なからず考えなしに発言することもあるが、マーラはいたって純粋だからこその率直な意見なのだろう。私みたいに捻くれているのとは訳が違う。
「そろそろ席についたら?」
「あ、あぁ……そうだな」
立ちっぱなしだったブランシェに声をかける。近くで見ると、酷い顔色だった。
「朝食をやめて、部屋で休んだら?」
「あぁ、そうさせていただこうかな」
「私もついていくわよ」
「どういう風の吹き回しだ?明日は雪かな?」
「言ってなさい」
心配しているのを茶化される。だが、それも彼の強がりだとはわかっていた。
「では、僕は先に失礼させていただくよ。マーラ嬢、ありがとう」
「別に。自分の意見を申し上げただけですわ」
ぷい、と顔を背けるマーラ。なんだかそのやりとりが初々しくてつい口元が緩んでしまう。
「何をニヤニヤなさってますの?気持ち悪いですわね……。ほら、国王陛下が行ってしまいましたわよ?ついていくなら早く行きなさいな」
じろじろ見られたからか、それとも感謝されたことでバツが悪いからか、つっけんどんに言われた。
「そうですね。では、また」
そう言うと、しっしと手で払うように振られる。
(素直じゃないなぁ……)
こういうところはやはり思春期特有の若さだな、と微笑ましく思うのだった。
「あ、あぁ、大丈夫だ。見苦しいものを見せた。許せ」
前国王夫妻が退出したのを確認したあとブランシェに声をかけると、いつもと違って余裕がなさそうな表情。顔は強張り、声も固いままだった。
一応私に心配をかけまいとしている様子だが、ぎこちないのは誰の目から見ても明らかだった。
「随分と、感じが悪い方々でしたわね」
不意に、マーラが吐き捨てるように言う。そういえば本人に聞いていなかったが、マーラは語学を勉強していたというから、サハリ語はある程度わかるのだろうか。
「マーラ様、言葉がわかるのですか?」
「えぇ、まぁ、全部が全部ではないですけれど、多少ならわかりますわよ。それにしても、親が我が子に接する態度とは思えませんでしたわ」
険しい目つきで眉を顰めるマーラ。珍しくこんなに人のことに対して怒っているなぁ、とちょっとびっくりする。普段は、自分の不利益になることしか怒っているイメージがなかったのだが。
「まぁ、そうですね。でも家庭の事情は人それぞれですから」
「そうかもしれませんけれど、過去に一国の王ともなった方があのような態度というのは……。我が国のアジャ国王と雲泥の差ですわ。……でもまぁ、そうですわね。少なくとも、ワタクシはあんな親でなくてよかったとは思いますわ」
(随分とけっちょんけっちょんな言い方だなぁ)
そもそも、ブランシェと何かあったのだろうか。あまり接点はなかったようには思うが、自分が目にしているものが全てではないし、もしかしたら私が知らぬ間に彼らの間に何かあったのかもしれない。
「そうやって率直に物事を口に出せるのはマーラ様の美点ですね」
「何ですの?ワタクシに対しての嫌味ですの!??」
「褒めてるんですよ」
実際、こういうことを素直に言えるのは悪いことではない。もちろん、時と場合によるが。
私も少なからず考えなしに発言することもあるが、マーラはいたって純粋だからこその率直な意見なのだろう。私みたいに捻くれているのとは訳が違う。
「そろそろ席についたら?」
「あ、あぁ……そうだな」
立ちっぱなしだったブランシェに声をかける。近くで見ると、酷い顔色だった。
「朝食をやめて、部屋で休んだら?」
「あぁ、そうさせていただこうかな」
「私もついていくわよ」
「どういう風の吹き回しだ?明日は雪かな?」
「言ってなさい」
心配しているのを茶化される。だが、それも彼の強がりだとはわかっていた。
「では、僕は先に失礼させていただくよ。マーラ嬢、ありがとう」
「別に。自分の意見を申し上げただけですわ」
ぷい、と顔を背けるマーラ。なんだかそのやりとりが初々しくてつい口元が緩んでしまう。
「何をニヤニヤなさってますの?気持ち悪いですわね……。ほら、国王陛下が行ってしまいましたわよ?ついていくなら早く行きなさいな」
じろじろ見られたからか、それとも感謝されたことでバツが悪いからか、つっけんどんに言われた。
「そうですね。では、また」
そう言うと、しっしと手で払うように振られる。
(素直じゃないなぁ……)
こういうところはやはり思春期特有の若さだな、と微笑ましく思うのだった。
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