悪の帝王の恋

鳥柄ささみ

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第二十三話 ウソでしょ

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「お待たせー! ごめんね、リアム。ジャスパー。ちょっと遅くなっちゃった……って、あれ?」

 いつものように食事専用の部屋へと入ろうと扉を開いたら、なぜかそこは見知らぬ部屋。リアムもジャスパーもいない上に、あるのはベッドと机のみだ。

 オフェリアは「あれ、間違えたかな」と引き返そうとするも、先程まであったはずの扉は綺麗さっぱり消えていて、いわゆる部屋の中に閉じ込められた状態になってしまった。

「ウソでしょ」

 自分の置かれた状況に一気に青ざめる。
 散々リアムに大丈夫だと言ったくせにこのザマで、これはお説教コース間違いなしだとオフェリアは頭を抱えた。

「とにかく、ここを出ないと! 何かしら方法はあるはず……!」

 オフェリアは攻撃魔法や転移魔法など、あらゆる魔法を使って脱出を試みるも、魔力を消費するだけで出られる気配はまるでない。
 いくら攻撃魔法を使っても部屋の中のもの傷一つつけることができず、異空間に閉じ込められたみたいに転移魔法は全てかき消されてしまう。
 まるで幻影の中にいるようだった。

「はぁはぁはぁ……信じられない! 普通、ここまでする!?」

 脱出できない焦燥感に駆られて、思わず声を荒げるオフェリア。
 恐らく、犯人はまたあの親衛隊のメンバーだろう。

 だが、いくら何でもここまでするのはさすがに手が込みすぎではなかろうか。目障りで憎い存在だからって閉じ込めるって……とオフェリアは考えて、そういえば前回は存在を消される魔法薬を使われていたことを思い出し、ここまでされるのもあり得なくはないかと思い直した。

「あーもー! 立て続けにこの仕打ちはどうなのよ!? 存在を消すだけで飽き足らず、監禁だなんて。でも、さすがに一生このまま閉じ込められるってことはないはず……っ!」

 一般的な考えでいうと、一生閉じ込める空間を作り出すのは相当難易度が高いはずだ。
 リアムのようにかなり優秀な高等魔法使いだとしても、至難の業と言えるだろう。

 魔法はある意味等価交換だ。

 もし、一生という制約を課した拘束をするなら、それと同等の代価を術者も支払わねばならない。

 自分の命を捧げるか、はたまた一生をかけて魔力を捧げるか。

 さすがに嫌がらせでそこまでするとは考えられないので、これはきっと一時的なものだと考察する。

 けれど、その一時的の時間が全くわからない。

 数分なのか数時間なのか、数日なのか数ヶ月なのか。さすがに数年はないとは思いたいが。

(てか、このまま飲まず食わずとなると、今日一日が限界な気がする)

 部屋の中にはベッドと机以外何もなく、トイレすらない。どう考えても、ここで飲み食いせずに時を待つのはつらすぎる。

「うーん、どうしたものか……」

 何もない机とベッドの前で立ち尽くし、そう溢したときだった。

「あれ、オフェリア?」
「……っ! グラン!? あ、扉閉めるのちょっと待っ……」
「え?」

 __バタンッ、ドカンッ!

 不意に入ってきたグランに気づき、オフェリアがすかさずその扉の隙間に向かって魔法を放つも、時すでに遅し。無常にも扉は閉じられた瞬間に消滅し、オフェリアの魔法は何もない空間で爆発した。

「うわっ、どうしたの!? ボク、何かした!?」
「あ、ごめん! 別にグランに攻撃するつもりじゃなくて!」

 オフェリアが慌てて弁明すると、グランは訳がわからないといった様子で眉間に皺を寄せていた。

 実際、いきなり自分に向かって破壊魔法を放たれたら誰もが驚くだろう。
 オフェリアがグランに魔法を当てる気はなかったとはいえ、やらかしてしまったことに対して、オフェリアは素直に謝罪した。

「本当にごめん。部屋に閉じ込められてたから、扉を破壊したら出られると思って」
「え、どういうこと? 閉じ込められてたって?」
「あー、そうだよね。いきなり言われてもわけわかんないよね。とりあえず、簡単に説明するね」

 オフェリアは今までの出来事をかいつまんで話す。

 一応、朝食をリアム達と一緒に別でとっていることなどは隠して説明すれば、「そうだったんだ」とグランは困惑したように眉を下げた。

「ごめんね、なんか巻き込んじゃったみたいで」
「いや、いいんだよ。むしろボクが扉を閉めちゃったせいってのもあるし」
「いやいや、あれは仕方ないよ。私ももっと早く反応してればこんなことにはなってなかっただろうし。とはいえ、まさかグランまで閉じ込めるだなんて、一体彼女達は何を考えてるのか」

 オフェリアだけならまだしも、まさか無関係のグランまで閉じ込めるだなんてとオフェリアが内心憤っていると、「あれ?」とグランが不意に何かに気づいたようで声を上げた。

「どうしたの?」
「こんなのさっきまであったっけ?」

 言われてグランが指差した方向を見れば、そこには先程までなかったはずのメモ書きが机の上に置かれていた。
 オフェリアが慌てて駆け寄ってそのメモを読むと、あまりの内容に思わず「はぁ!?」と唸るような声を漏らした。

「オフェリア? 大丈夫?」
「あ、ごめんなさい。ちょっと書かれている内容が突拍子もなさすぎて」
「うん? なんて書いてあったの?」

 グランに聞かれて黙り込むオフェリア。
 そんな彼女の様子を不思議そうに見つめるグランに、オフェリアは渋々といった様子で口を開いた。
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