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第三話 報告
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「受けたの!? そんな理不尽な縁談を!? 信じられない!!」
「だって、可哀想じゃない。まだ十代そこそこの子が家のことを全部担っているというのよ? そんな子が私を母にと切望してくれてるというのだから、力になってあげたいじゃない」
「だからって、だからって、そんな……っ、貴女が苦労するってわかりきってる結婚を受けるだなんて!」
批難混じりの絶叫。
珍しく母が目を潤ませていて、罪悪感で胸が押しつぶされそうになる。
「それに、結婚式もやらないだなんて。シアは初婚だってのに!」
「娘さん達が大きいらしいから、心境的に複雑になっちゃうでしょう? 私は別に結婚式にこだわりはないし、なければないで構わないわ」
「そうは言っても結婚式よ? 大事なお披露目の場じゃない! いくらお子さん達が大きいからって」
「みんな十代というから思春期で複雑なのよ」
「そうかもしれないけど!」
母が言っていることはわかる。
小言のように言いつつも、シアのことを心配しているのはシア自身もわかっていた。
自分だってもし知り合いからこんな条件の見合いを受けると聞いたら反対するだろう。
けれど、シアは自分の考えを改める気はなかった。
「もうよしなさい。シアが決めたことなんだ」
「でも、だって、貴方……っ」
「言いたいことはわかる。だが、シアもとうとう嫁ぐことになったんだ。しっかり祝ってあげようじゃないか」
「……っ、でも……こんなのって、あんまりよ!」
母がわっと泣き出すのを慰めるように頭を撫でる父。昔からこうして仲のよい夫婦の両親を見て、できればこうなれたらいいのになと心のどこかで思うシア。
「シア。母様はこの通りとても心配性だ。小言も多いが、なんだかんだでシアのことを大事に思っている」
「はい」
「正直僕も今回の縁談に関して思うところはあるが、シアの決めたことに口を出す気はない。ただ、もしどうしても逃げ出したくなったり挫けそうになったりしたらいつでも我々を頼ってくれ。僕たちはシアの味方だからね」
「……ありがとう、お父様」
ぽんぽんと頭を撫でられて、涙が滲む。
自分のことを肯定してくれることが何よりもありがたく、信頼してくれることが嬉しかった。
「そうよ! 変に意地張っちゃったから帰れないとかバカなことは考えないのよ! シアは無駄に責任感が強いのだから、無理してしまいがちだけど、何かあったらすぐに戻ってきなさいよ! 公爵家だろうとなんだろうと問題があるなら私だって徹底抗戦してやるんだから!」
「ありがとう、お母様。でも、そこまで好戦的にならないでちょうだい。何かあればすぐにお父様とお母様のことを頼るから」
「えぇ、えぇ、そうしてちょうだい! でも一人で嫁ぐのなら、家事からマナーから全部覚えないとよ! 日数もそんなにないのだから、しっかりと覚えないと。ビシバシ鍛えるから、覚悟しなさいよっ!」
「う。お手柔らかにお願いします」
先程までの涙はどこかへ吹っ飛び、花嫁修行に燃える母。そんな彼女を見つめたあと、父がシアに肩を竦ませると、シアも同様に苦笑するのであった。
◇
「これも持って行ったほうがいいんじゃない?」
「もうそれはさすがに私には着れないわよ」
「じゃあ、これは?」
「もう荷物いっぱいだからまた今度にするわ」
出発前だというのに、突然あれが足りないのではないかこれが足りないのではないかと用意する母。心配性なのはわかるものの、さすがにこのタイミングで色々と用意されてシアも少々うんざりしていた。
「母さん、いい加減になさい。シアの出発が遅れる」
「だって……っ」
「足りなかったら買い足せばいいし、そもそも公爵家に大体のものは揃ってるから大丈夫よ」
「そうかもしれないけど、使い慣れたもののほうが」
「お母様」
咎めるようにシアが言えば、「わかったわよ」と拗ねる母。お節介な性格はきっと母似なのであろうが、ここまで過保護なのはよくないなとシアは心の中で反面教師にする。
「じゃあ行ってきます!」
「あぁ、気をつけて!」
「何かあったら手紙を書くのよ! いえ、何かなくても手紙をちょうだい! いいわね?」
「シア様、いってらっしゃいませ」
「わかりました。またね、お父様。お母様。みんなも、今までお世話になりました」
そう言ってシアは馬車に乗り込む。
振り返るとまた母に何か言われそうで、後ろ髪が引かれながらもシアは振り返らずに前だけを見つめるのだった。
「だって、可哀想じゃない。まだ十代そこそこの子が家のことを全部担っているというのよ? そんな子が私を母にと切望してくれてるというのだから、力になってあげたいじゃない」
「だからって、だからって、そんな……っ、貴女が苦労するってわかりきってる結婚を受けるだなんて!」
批難混じりの絶叫。
珍しく母が目を潤ませていて、罪悪感で胸が押しつぶされそうになる。
「それに、結婚式もやらないだなんて。シアは初婚だってのに!」
「娘さん達が大きいらしいから、心境的に複雑になっちゃうでしょう? 私は別に結婚式にこだわりはないし、なければないで構わないわ」
「そうは言っても結婚式よ? 大事なお披露目の場じゃない! いくらお子さん達が大きいからって」
「みんな十代というから思春期で複雑なのよ」
「そうかもしれないけど!」
母が言っていることはわかる。
小言のように言いつつも、シアのことを心配しているのはシア自身もわかっていた。
自分だってもし知り合いからこんな条件の見合いを受けると聞いたら反対するだろう。
けれど、シアは自分の考えを改める気はなかった。
「もうよしなさい。シアが決めたことなんだ」
「でも、だって、貴方……っ」
「言いたいことはわかる。だが、シアもとうとう嫁ぐことになったんだ。しっかり祝ってあげようじゃないか」
「……っ、でも……こんなのって、あんまりよ!」
母がわっと泣き出すのを慰めるように頭を撫でる父。昔からこうして仲のよい夫婦の両親を見て、できればこうなれたらいいのになと心のどこかで思うシア。
「シア。母様はこの通りとても心配性だ。小言も多いが、なんだかんだでシアのことを大事に思っている」
「はい」
「正直僕も今回の縁談に関して思うところはあるが、シアの決めたことに口を出す気はない。ただ、もしどうしても逃げ出したくなったり挫けそうになったりしたらいつでも我々を頼ってくれ。僕たちはシアの味方だからね」
「……ありがとう、お父様」
ぽんぽんと頭を撫でられて、涙が滲む。
自分のことを肯定してくれることが何よりもありがたく、信頼してくれることが嬉しかった。
「そうよ! 変に意地張っちゃったから帰れないとかバカなことは考えないのよ! シアは無駄に責任感が強いのだから、無理してしまいがちだけど、何かあったらすぐに戻ってきなさいよ! 公爵家だろうとなんだろうと問題があるなら私だって徹底抗戦してやるんだから!」
「ありがとう、お母様。でも、そこまで好戦的にならないでちょうだい。何かあればすぐにお父様とお母様のことを頼るから」
「えぇ、えぇ、そうしてちょうだい! でも一人で嫁ぐのなら、家事からマナーから全部覚えないとよ! 日数もそんなにないのだから、しっかりと覚えないと。ビシバシ鍛えるから、覚悟しなさいよっ!」
「う。お手柔らかにお願いします」
先程までの涙はどこかへ吹っ飛び、花嫁修行に燃える母。そんな彼女を見つめたあと、父がシアに肩を竦ませると、シアも同様に苦笑するのであった。
◇
「これも持って行ったほうがいいんじゃない?」
「もうそれはさすがに私には着れないわよ」
「じゃあ、これは?」
「もう荷物いっぱいだからまた今度にするわ」
出発前だというのに、突然あれが足りないのではないかこれが足りないのではないかと用意する母。心配性なのはわかるものの、さすがにこのタイミングで色々と用意されてシアも少々うんざりしていた。
「母さん、いい加減になさい。シアの出発が遅れる」
「だって……っ」
「足りなかったら買い足せばいいし、そもそも公爵家に大体のものは揃ってるから大丈夫よ」
「そうかもしれないけど、使い慣れたもののほうが」
「お母様」
咎めるようにシアが言えば、「わかったわよ」と拗ねる母。お節介な性格はきっと母似なのであろうが、ここまで過保護なのはよくないなとシアは心の中で反面教師にする。
「じゃあ行ってきます!」
「あぁ、気をつけて!」
「何かあったら手紙を書くのよ! いえ、何かなくても手紙をちょうだい! いいわね?」
「シア様、いってらっしゃいませ」
「わかりました。またね、お父様。お母様。みんなも、今までお世話になりました」
そう言ってシアは馬車に乗り込む。
振り返るとまた母に何か言われそうで、後ろ髪が引かれながらもシアは振り返らずに前だけを見つめるのだった。
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