行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ

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第二章 恋

第四話 ドギマギ

「そういえば、お仕事はあれから順調ですか?」
「あぁ、おかげさまでな。ドゥークー辺境伯の合意を得られたおかげで、だいぶスムーズに進捗している」
「そうですか。それはよかったです」
「これも全部シアのおかげだ」
「いえ、レオナルドさんが頑張った結果ですよ」

 褒められるとは思わず、ちょっと照れながらもレオナルドを立てる。自分はあくまできっかけを作ったに過ぎなく、何よりも頑張ったのはレオナルドだと思っていた。
 けれど、シアの返しに不満だったのか、レオナルドは複雑な表情をする。

 最近気づいたのだが、この表情をするときは、どうやら彼にとって不本意なときらしい。

「そんなことはない。シアがいたから私はパーティーにも行けたし、事業も順調に進められている。正直、家族との団欒も煩わしいと思うこともあったが、今は楽しいと思えるようになった。どれもこれもシアのおかげだ。ありがとう」

 まっすぐに見つめられる。
 真剣な表情で顔を寄せられながら話すレオナルドになんだか居た堪れなくて、シアはそっと視線を外すと自分用のホットミルクを啜った。

「えっと、お役に立てたならよかったです」

 レオナルドがいい方向に変化したことは喜ばしい。だが、だんだんと近づく距離感に、シアは心中穏やかではなかった。

(レオナルドさん、いつもに比べてすごくグイグイくる……!)

 以前であれば適当にあしらわれていたのに、こうして積極的に来られるとシアはどうしたらいいのかわからなかった。

 というのも、積極的にくる女性の相手は得意だが、積極的にくる男性は経験がない。

 そのため、どう対応したらいいのかシアにはまるでわからなかったのだ。

 しかも、レオナルドは顔がいい。正直好みのタイプである。
 一応、夫とはいえ契約結婚をしている身として恋愛感情を持つ気はないが、色事に不慣れなぶんついドギマギとしてしまう。

「シア」
「っ、……何でしょう?」

 緊張しているのを気取られないように、ゆっくりと視線をレオナルドに向ける。

 すると、先程よりもさらに距離が近くなっていて、思わずシアは目を白黒させながらも必死に平静を装った。

「もし、シアがよければだが、今後もこうしてお互い一緒に話す時間を設けたいと思うのだが、どうだろうか?」
「え?」

 レオナルドからの意外な提案。
 確かに、家族として親睦を深めるにはよいことだが、まさかレオナルドから進言してもらえるとは思ってもみなかったシアは、彼の変わりように驚いた。

(目の前にいるのは本物のレオナルドさんよね?)

 同じ顔をした別人ではないかと思うほどの変わりよう。あまりの違いにシアが戸惑っていると、レオナルドはシアが何も言わないことにだんだんと意気消沈し、しょんぼりとしていく。

「ダメだろうか? 私は不器用なせいか、つい思考が狭くなってしまいがちだから、少しでも相互理解をしたほうがいいと思ったのだが」
「い、いえ、ダメじゃないです! むしろ嬉しいですっ! 家族として、お互いよく知るのに会話は大事ですから。あ、ではいっそ部屋同じにします?」
「あー、それは……ちょっとまだ時期尚早というか……」

(それはダメなんだ)

 イマイチ、レオナルドの線引きがわからない。

 けれど、夫婦として、というよりかは子供達の保護者としてまたは家族として、共同戦線を張るという認識でいいのだろうかと勝手に納得する。

 こうしてレオナルドが色々と変わったのも、家族のためという意識が芽生えたのかもしれないとポジティブに捉えることにした。

「すまない」
「いえ、私はあくまで子供達の母として、レオナルドさんの妻として家族の一員になれればそれでいいので。これからもよろしくお願いしますね」

 シアがそう言うと、なぜか不本意なのか複雑な表情をするレオナルド。

(うーん、人間関係難しい)

 かつてたくさんの人を相手にしてきて、それなりにコミュニケーション能力は培ってきている自信はあったが、どうにもレオナルドには通用しないらしい。
 自分もまだまだだな、もっと精進せねばと思いながら、シアは残りのホットミルクを飲み干すのだった。
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