49 / 92
第二章 恋
第四話 ドギマギ
「そういえば、お仕事はあれから順調ですか?」
「あぁ、おかげさまでな。ドゥークー辺境伯の合意を得られたおかげで、だいぶスムーズに進捗している」
「そうですか。それはよかったです」
「これも全部シアのおかげだ」
「いえ、レオナルドさんが頑張った結果ですよ」
褒められるとは思わず、ちょっと照れながらもレオナルドを立てる。自分はあくまできっかけを作ったに過ぎなく、何よりも頑張ったのはレオナルドだと思っていた。
けれど、シアの返しに不満だったのか、レオナルドは複雑な表情をする。
最近気づいたのだが、この表情をするときは、どうやら彼にとって不本意なときらしい。
「そんなことはない。シアがいたから私はパーティーにも行けたし、事業も順調に進められている。正直、家族との団欒も煩わしいと思うこともあったが、今は楽しいと思えるようになった。どれもこれもシアのおかげだ。ありがとう」
まっすぐに見つめられる。
真剣な表情で顔を寄せられながら話すレオナルドになんだか居た堪れなくて、シアはそっと視線を外すと自分用のホットミルクを啜った。
「えっと、お役に立てたならよかったです」
レオナルドがいい方向に変化したことは喜ばしい。だが、だんだんと近づく距離感に、シアは心中穏やかではなかった。
(レオナルドさん、いつもに比べてすごくグイグイくる……!)
以前であれば適当にあしらわれていたのに、こうして積極的に来られるとシアはどうしたらいいのかわからなかった。
というのも、積極的にくる女性の相手は得意だが、積極的にくる男性は経験がない。
そのため、どう対応したらいいのかシアにはまるでわからなかったのだ。
しかも、レオナルドは顔がいい。正直好みのタイプである。
一応、夫とはいえ契約結婚をしている身として恋愛感情を持つ気はないが、色事に不慣れなぶんついドギマギとしてしまう。
「シア」
「っ、……何でしょう?」
緊張しているのを気取られないように、ゆっくりと視線をレオナルドに向ける。
すると、先程よりもさらに距離が近くなっていて、思わずシアは目を白黒させながらも必死に平静を装った。
「もし、シアがよければだが、今後もこうしてお互い一緒に話す時間を設けたいと思うのだが、どうだろうか?」
「え?」
レオナルドからの意外な提案。
確かに、家族として親睦を深めるにはよいことだが、まさかレオナルドから進言してもらえるとは思ってもみなかったシアは、彼の変わりように驚いた。
(目の前にいるのは本物のレオナルドさんよね?)
同じ顔をした別人ではないかと思うほどの変わりよう。あまりの違いにシアが戸惑っていると、レオナルドはシアが何も言わないことにだんだんと意気消沈し、しょんぼりとしていく。
「ダメだろうか? 私は不器用なせいか、つい思考が狭くなってしまいがちだから、少しでも相互理解をしたほうがいいと思ったのだが」
「い、いえ、ダメじゃないです! むしろ嬉しいですっ! 家族として、お互いよく知るのに会話は大事ですから。あ、ではいっそ部屋同じにします?」
「あー、それは……ちょっとまだ時期尚早というか……」
(それはダメなんだ)
イマイチ、レオナルドの線引きがわからない。
けれど、夫婦として、というよりかは子供達の保護者としてまたは家族として、共同戦線を張るという認識でいいのだろうかと勝手に納得する。
こうしてレオナルドが色々と変わったのも、家族のためという意識が芽生えたのかもしれないとポジティブに捉えることにした。
「すまない」
「いえ、私はあくまで子供達の母として、レオナルドさんの妻として家族の一員になれればそれでいいので。これからもよろしくお願いしますね」
シアがそう言うと、なぜか不本意なのか複雑な表情をするレオナルド。
(うーん、人間関係難しい)
かつてたくさんの人を相手にしてきて、それなりにコミュニケーション能力は培ってきている自信はあったが、どうにもレオナルドには通用しないらしい。
自分もまだまだだな、もっと精進せねばと思いながら、シアは残りのホットミルクを飲み干すのだった。
「あぁ、おかげさまでな。ドゥークー辺境伯の合意を得られたおかげで、だいぶスムーズに進捗している」
「そうですか。それはよかったです」
「これも全部シアのおかげだ」
「いえ、レオナルドさんが頑張った結果ですよ」
褒められるとは思わず、ちょっと照れながらもレオナルドを立てる。自分はあくまできっかけを作ったに過ぎなく、何よりも頑張ったのはレオナルドだと思っていた。
けれど、シアの返しに不満だったのか、レオナルドは複雑な表情をする。
最近気づいたのだが、この表情をするときは、どうやら彼にとって不本意なときらしい。
「そんなことはない。シアがいたから私はパーティーにも行けたし、事業も順調に進められている。正直、家族との団欒も煩わしいと思うこともあったが、今は楽しいと思えるようになった。どれもこれもシアのおかげだ。ありがとう」
まっすぐに見つめられる。
真剣な表情で顔を寄せられながら話すレオナルドになんだか居た堪れなくて、シアはそっと視線を外すと自分用のホットミルクを啜った。
「えっと、お役に立てたならよかったです」
レオナルドがいい方向に変化したことは喜ばしい。だが、だんだんと近づく距離感に、シアは心中穏やかではなかった。
(レオナルドさん、いつもに比べてすごくグイグイくる……!)
以前であれば適当にあしらわれていたのに、こうして積極的に来られるとシアはどうしたらいいのかわからなかった。
というのも、積極的にくる女性の相手は得意だが、積極的にくる男性は経験がない。
そのため、どう対応したらいいのかシアにはまるでわからなかったのだ。
しかも、レオナルドは顔がいい。正直好みのタイプである。
一応、夫とはいえ契約結婚をしている身として恋愛感情を持つ気はないが、色事に不慣れなぶんついドギマギとしてしまう。
「シア」
「っ、……何でしょう?」
緊張しているのを気取られないように、ゆっくりと視線をレオナルドに向ける。
すると、先程よりもさらに距離が近くなっていて、思わずシアは目を白黒させながらも必死に平静を装った。
「もし、シアがよければだが、今後もこうしてお互い一緒に話す時間を設けたいと思うのだが、どうだろうか?」
「え?」
レオナルドからの意外な提案。
確かに、家族として親睦を深めるにはよいことだが、まさかレオナルドから進言してもらえるとは思ってもみなかったシアは、彼の変わりように驚いた。
(目の前にいるのは本物のレオナルドさんよね?)
同じ顔をした別人ではないかと思うほどの変わりよう。あまりの違いにシアが戸惑っていると、レオナルドはシアが何も言わないことにだんだんと意気消沈し、しょんぼりとしていく。
「ダメだろうか? 私は不器用なせいか、つい思考が狭くなってしまいがちだから、少しでも相互理解をしたほうがいいと思ったのだが」
「い、いえ、ダメじゃないです! むしろ嬉しいですっ! 家族として、お互いよく知るのに会話は大事ですから。あ、ではいっそ部屋同じにします?」
「あー、それは……ちょっとまだ時期尚早というか……」
(それはダメなんだ)
イマイチ、レオナルドの線引きがわからない。
けれど、夫婦として、というよりかは子供達の保護者としてまたは家族として、共同戦線を張るという認識でいいのだろうかと勝手に納得する。
こうしてレオナルドが色々と変わったのも、家族のためという意識が芽生えたのかもしれないとポジティブに捉えることにした。
「すまない」
「いえ、私はあくまで子供達の母として、レオナルドさんの妻として家族の一員になれればそれでいいので。これからもよろしくお願いしますね」
シアがそう言うと、なぜか不本意なのか複雑な表情をするレオナルド。
(うーん、人間関係難しい)
かつてたくさんの人を相手にしてきて、それなりにコミュニケーション能力は培ってきている自信はあったが、どうにもレオナルドには通用しないらしい。
自分もまだまだだな、もっと精進せねばと思いながら、シアは残りのホットミルクを飲み干すのだった。
あなたにおすすめの小説
【完】出来損ない令嬢は、双子の娘を持つ公爵様と契約結婚する~いつの間にか公爵様と7歳のかわいい双子たちに、めいっぱい溺愛されていました~
夏芽空
恋愛
子爵令嬢のエレナは、常に優秀な妹と比較され家族からひどい扱いを受けてきた。
しかし彼女は7歳の双子の娘を持つ公爵――ジオルトと契約結婚したことで、最低な家族の元を離れることができた。
しかも、条件は最高。公の場で妻を演じる以外は自由に過ごしていい上に、さらには給料までも出してくてれるという。
夢のような生活を手に入れた――と、思ったのもつかの間。
いきなり事件が発生してしまう。
結婚したその翌日に、双子の姉が令嬢教育の教育係をやめさせてしまった。
しかもジオルトは仕事で出かけていて、帰ってくるのはなんと一週間後だ。
(こうなったら、私がなんとかするしかないわ!)
腹をくくったエレナは、おもいきった行動を起こす。
それがきっかけとなり、ちょっと癖のある美少女双子義娘と、彼女たちよりもさらに癖の強いジオルトとの距離が縮まっていくのだった――。
【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~
夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」
婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。
「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」
オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。
傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。
オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。
国は困ることになるだろう。
だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。
警告を無視して、オフェリアを国外追放した。
国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。
ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。
一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。
【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!
白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。
辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。
夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆
異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です)
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆
【完結】貧乏令嬢のポジティブすぎる契約結婚〜継母としてもがんばります!〜
●やきいもほくほく●
恋愛
没落寸前、貧乏男爵令嬢ディアンヌ・メリーティーは家族を守るために援助を求めて結婚相手を探しに向かうが大失敗。
その場で転んで頭をぶつけた拍子に前世の記憶を思い出すが、友人だと思っていたシャーリーに騙されて会場で大恥をかくこととなる。
しかし、そんなディアンヌを助けてくれたのは女性たちの憧れ宰相で公爵家の当主、リュドヴィック・ベルトルテだった。
そこでディアンヌは契約結婚を持ちかけられる。
その理由はピーターというベルトルテ公爵家に引き取られた子どもが懐いたからだった。
実はディアンヌは、ピーターをパーティー会場で助けていた。
慣れない生活中、リュドヴィックを慕う侍女に嫌がらせを受けながらもピーターの心を開き、周囲から認められていくディアンヌ。
次第に公爵夫人としての自覚も芽生えていく。
ある事件をきっかけにリュドヴィックとの距離も近づいて……!?
神頼みするしかない大ピンチの状況から、粘り強さとしたたかさで大逆転。
互いの利益だけを求めた契約結婚から、溺愛されていくポジティブラブストーリー!
*他サイトにも掲載中
【完結】白い結婚を終えて自由に生きてまいります
なか
恋愛
––アロルド、私は貴方が結婚初日に告げた言葉を今でも覚えている。
忘れもしない、あの時貴方は確かにこう言った。
「初めに言っておく、俺達の婚姻関係は白い結婚として……この関係は三年間のみとする」
「白い結婚ですか?」
「実は俺には……他に愛する女性がいる」
それは「公爵家の令嬢との問題」を理由に、三年間だけの白い結婚を強いるもの。
私の意思を無視して三家が取り決めたものであったが、私は冷静に合意を決めた
――それは自由を得るため、そして『私自身の秘密を隠すため』の計算でもあった。
ところが、三年の終わりが近づいたとき、アロルドは突然告白する。「この三年間で君しか見えなくなった。白い結婚の約束をなかったことにしてくれ」と。
「セシーリア、頼む……どうか、どうか白い結婚の合意を無かった事にしてくれ」
アロルド、貴方は何を言い出すの?
なにを言っているか、分かっているの?
「俺には君しかいないと、この三年間で分かったんだ」
私の答えは決まっていた。
受け入れられるはずがない。
自由のため、私の秘密を守るため、貴方の戯言に付き合う気はなかった。
◇◇◇
設定はゆるめです。
とても強い主人公が自由に暮らすお話となります。
もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!
裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。
夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。
辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。
側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。
※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
【本編完結】初恋のその先で、私は母になる
妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
第19回恋愛小説大賞にて、奨励賞を受賞いたしました。読者の皆様のおかげです!本当ありがとうございます。
王宮で12年働き、気づけば28歳。
恋も結婚も遠いものだと思っていたオリビアの人生は、憧れの年下公爵と一夜を共にしたことで大きく動き出す。
優しく守ろうとする彼。
けれどオリビアは、誰かに選ばれるだけの人生を終わらせたいと思っていた。
揺れる想いの中で、彼女が選んだのは――
自分の足で立ち、自分の未来を選ぶこと。
これは、一人の女性が恋を通して自分を取り戻し、母として、そして一人の人間として強くなっていく物語。
※表紙画像はAI生成イラストをつかっています。