行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ

文字の大きさ
54 / 92
第二章 恋

第九話 お願い

「……やっだー! シアちゃん、何よそれ。めちゃくちゃ面白そうじゃない!」
「人間の二面性なんて考えたことなかったですけどぉ、確かにそれなら表現できなくもないですぅ~!」

 シアの提案に食いつく二人。
 先程までの雰囲気とは打って変わって、ビアンカもジュダも目を輝かせていた。

「チグハグかと思いきや、調和できてるデザインなんて最高じゃない! それならあたしやるわ~。あんたはどうか知らないけど」
「ワタシだって、調和くらいできますよぉ~! なんたってプロですからね。化粧師としての腕の見せどころですぅ~!!」

 二人は軽口を言い合いながらも先程のような険悪さはない。どうやらシアの提案によって、いい方向に作用できたようだ。

「ちなみに、この案はセレナが考えたのよ。難しいかもしれないけど、この二人ならきっとできるって信じてるって」
「え? 私そこまで言ってな……」
「すっごーい、セレナちゃん! まだ若いのにそんなこと言ってくれるだなんて~!」
「セレナちゃんありがとうございますぅ~! ワタシ達のことよく見てくださってるんですね、嬉しいですぅ! しかも、おかげでこれ以上無駄な時間を過ごさずに済みましたぁ~!!」
「あ、えっと、あの、お二人のお役に立てたなら嬉しい、です」

 二人から褒められ、照れているのか小さくなっているセレナ。あまり褒められていないからか、どうしたらいいのかわからないようだった。

「って! そういえば今更だけど、シアちゃんとセレナちゃんはここに何しに来たの?」
「はっ! そういえばそうでした。てか、もしかしてもしかしなくても、お客様として来てくださったんですよね!? すみません、ワタシ達の問題に巻き込んじゃって……!」

 問題が解決したところでハッと我に返ったらしい二人。シアがここにいる違和感にやっと気づいたようだ。

「あー、まぁ、そうではあるんだけど。忙しそうだからまた改めて来るわ」

 連れてきたセレナには悪いが、せっかく方向性が決まったなら打ち合わせがあるだろうし、また別日に改めてくるかと考えていると、シアの目の前に立ちはだかるビアンカとジュダ。

「ダメですぅー! せっかくわざわざ来てくださった上にアイデアまで出してくださったんだから、このままは帰しませんよぉー!」
「そうよそうよ。セレナちゃんまで連れてきてるってことはセレナちゃん関連で用事あったんでしょー!? あたし達のために時間使わせちゃったのにそのまま帰らせるわけにはいかないわよー!!」

 ビアンカとジュダにそれぞれ両腕を拘束されて逃げ場を失うシア。二人からがっしりと掴まれてしまっては抜け出すことなどできなかった。

「えっと、じゃあ、セレナに化粧とかヘアメイクとか美の作り方を教えてほしいのだけど。私はそういうの得意じゃないから、本人ができる方法で本人に一番合った方法を教えてあげてもらえるとありがたいわ」
「お任せください! 基礎から応用までしっかりとレクチャーしてあげますよぉ~!」
「あたしもコーディネートのバランスの取り方とか合う色の選び方とか教えてあ・げ・る! 今日はお付き合いしてもらったぶん、大盤振る舞いしちゃうわよ」

 シアのお願いに、二人の視線が一気にセレナに集まる。

「さすがにお二人にそこまでしていただくには……」
「若いんですから、そういう謙遜しなくていいですよぉ~!」
「そうよそうよ~! そんな遠慮したって損なんだからもっとがめつく生きないと! それに、基礎さえ覚えていけばこれから役に立つんだから、今覚えておいたほうが絶対にお得よ~?」

 二人の圧に遠慮気味だったセレナが怖気つきながらも「では、お願いしてもいいですか?」とお願いすると、ビアンカもジュダも「もちろん」とにっこりと微笑んだ。


 ◇


「よかったわね、色々教えてもらって」
「……まぁね」

 あのあと手取り足取り世界的デザイナー二人によるレクチャーを受けたセレナ。パーソナルカラーや骨格に合わせたデザインの選び方など専門的でありながらもわかりやすく教えてもらっていた。
 恐らくこれで、今朝のようなことにはならないはずだ。

「でも、さすがにもらいすぎじゃ……」

 シアとセレナの腕の中には大量の化粧品にファッション用の小物類。どれもこれもビアンカとジュダに持って行けと持たせられたものだった。

「とはいえ、断っても無理矢理ねじ込んでくるんだからどうしようもないわよ。二人共すごく頑固だから」
「それは……確かに」

 こだわりの強さが人一倍なだけあって、一度決めたら譲らない頑固さも人一倍。そのため、二人は言い出したら聞かない性格で、こういうことに関してはいくらシアが言ったところで全く聞く耳を持たなかった。
 そもそもだいぶ固辞してのこの量である。重いしこれ以上持てないから物理的に無理と言い張らなければ、この倍以上持たされるところだっただろう。

「でも、至れり尽くせりすぎな気がする」

 セレナがぽつりと漏らす。
 特上の化粧やヘアメイクを施してもらい、さらに技術も教えてもらった上にお土産まで。何もかももらってばかりいることに罪悪感を覚えているようだ。

「まぁ、でもセレナが実践してあげるのが何よりの恩返しだろうから、今日教えてもらったことこれからやっていかないとね」
「わかってるわよ。あんな凄い人達に教わったのだもの、無駄にするわけにはいかないじゃない」

 セレナの言葉に安心するシア。レオナルドに似て変なところで気負いすぎるきらいがあったので心配していたが、どうやらシアの杞憂だったらしい。

「あんまり遅くなったらアンナが心配するだろうし、早く帰りましょうか」
「そうね。アンナはお父様の次に心配性だから」

 もらった化粧品を持ち直すと、先程より帰宅の足を速めようとするシア。

 しかし、なぜかついてこないセレナ。

「セレナ、どうしたの? 疲れた?」
「違うけど」
「うん? あ、もしかして持つのつらいとか? 重たいならもう少し私が持ちましょうか?」
「そうじゃなくて……」

 煮え切らない態度のセレナ。何か言いたげではあるものの、口をまごまごさせていた。

「あの……今日は、その……連れてきてくれてありがと」

 だんだんと小さくなる言葉。けれど、確かに最後までシアの耳に届いた。

「どういたしまして」

 思わずにやけそうになりながらもシアがにっこりと笑って返すと、ふんっとそっぽを向いて歩き出すセレナ。
 そのスピードは思いのほか速くて、シアは慌ててセレナのあとを追いかけるのだった。
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完】出来損ない令嬢は、双子の娘を持つ公爵様と契約結婚する~いつの間にか公爵様と7歳のかわいい双子たちに、めいっぱい溺愛されていました~

夏芽空
恋愛
子爵令嬢のエレナは、常に優秀な妹と比較され家族からひどい扱いを受けてきた。 しかし彼女は7歳の双子の娘を持つ公爵――ジオルトと契約結婚したことで、最低な家族の元を離れることができた。 しかも、条件は最高。公の場で妻を演じる以外は自由に過ごしていい上に、さらには給料までも出してくてれるという。 夢のような生活を手に入れた――と、思ったのもつかの間。 いきなり事件が発生してしまう。 結婚したその翌日に、双子の姉が令嬢教育の教育係をやめさせてしまった。 しかもジオルトは仕事で出かけていて、帰ってくるのはなんと一週間後だ。 (こうなったら、私がなんとかするしかないわ!) 腹をくくったエレナは、おもいきった行動を起こす。 それがきっかけとなり、ちょっと癖のある美少女双子義娘と、彼女たちよりもさらに癖の強いジオルトとの距離が縮まっていくのだった――。

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

【完結】貧乏令嬢のポジティブすぎる契約結婚〜継母としてもがんばります!〜

●やきいもほくほく●
恋愛
没落寸前、貧乏男爵令嬢ディアンヌ・メリーティーは家族を守るために援助を求めて結婚相手を探しに向かうが大失敗。 その場で転んで頭をぶつけた拍子に前世の記憶を思い出すが、友人だと思っていたシャーリーに騙されて会場で大恥をかくこととなる。 しかし、そんなディアンヌを助けてくれたのは女性たちの憧れ宰相で公爵家の当主、リュドヴィック・ベルトルテだった。 そこでディアンヌは契約結婚を持ちかけられる。 その理由はピーターというベルトルテ公爵家に引き取られた子どもが懐いたからだった。 実はディアンヌは、ピーターをパーティー会場で助けていた。 慣れない生活中、リュドヴィックを慕う侍女に嫌がらせを受けながらもピーターの心を開き、周囲から認められていくディアンヌ。 次第に公爵夫人としての自覚も芽生えていく。 ある事件をきっかけにリュドヴィックとの距離も近づいて……!? 神頼みするしかない大ピンチの状況から、粘り強さとしたたかさで大逆転。 互いの利益だけを求めた契約結婚から、溺愛されていくポジティブラブストーリー! *他サイトにも掲載中

【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~

夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」 婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。 「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」 オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。 傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。 オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。 国は困ることになるだろう。 だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。 警告を無視して、オフェリアを国外追放した。 国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。 ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。 一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。

【完結】白い結婚を終えて自由に生きてまいります

なか
恋愛
––アロルド、私は貴方が結婚初日に告げた言葉を今でも覚えている。  忘れもしない、あの時貴方は確かにこう言った。  「初めに言っておく、俺達の婚姻関係は白い結婚として……この関係は三年間のみとする」 「白い結婚ですか?」 「実は俺には……他に愛する女性がいる」   それは「公爵家の令嬢との問題」を理由に、三年間だけの白い結婚を強いるもの。 私の意思を無視して三家が取り決めたものであったが、私は冷静に合意を決めた ――それは自由を得るため、そして『私自身の秘密を隠すため』の計算でもあった。 ところが、三年の終わりが近づいたとき、アロルドは突然告白する。「この三年間で君しか見えなくなった。白い結婚の約束をなかったことにしてくれ」と。 「セシーリア、頼む……どうか、どうか白い結婚の合意を無かった事にしてくれ」 アロルド、貴方は何を言い出すの? なにを言っているか、分かっているの? 「俺には君しかいないと、この三年間で分かったんだ」 私の答えは決まっていた。 受け入れられるはずがない。  自由のため、私の秘密を守るため、貴方の戯言に付き合う気はなかった。    ◇◇◇ 設定はゆるめです。 とても強い主人公が自由に暮らすお話となります。 もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。

夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。 辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。 側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。 ※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。

無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています

如月ぐるぐる
恋愛
「お前の様な役立たずは首だ! さっさと出て行け!」 何年も仕えていた男爵家を追い出され、途方に暮れるシルヴィア。 しかし街の人々はシルビアを優しく受け入れ、宿屋で住み込みで働く事になる。 様々な理由により職を転々とするが、ある日、男爵家は爵位剥奪となり、近隣の子爵家の代理人が統治する事になる。 この地域に詳しく、元男爵家に仕えていた事もあり、代理人がシルヴィアに協力を求めて来たのだが…… 男爵メイドから王宮筆頭メイドになるシルビアの物語が、今始まった。