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第二章 恋
第二十九話 進展
おはようからおやすみまでの挨拶だけでなく、料理を一緒にしたり刺繍を一緒にしたりするうちに、だんだんと世間話をするほどの関係性になってきたシアとセレナ。
先日、友達にあげると言っていたハンカチも完成して無事に渡すことができたらしく、今もセレナからその報告を受けていた。
「どう? 喜んでた?」
「えぇ。とても器用なんだねって褒めてもらったわ」
「そう。よかったわね」
学校から帰宅し、興奮しながら話すセレナの姿に、かつて勝手に鬱々と悩んでた自分を恥じるシア。
なんだかんだと恋が上手く進んでいるようでホッとする。
「えっと、それで、その友達にお弁当を作ってあげたいと思うんだけど、いいかしら」
「あら、いいんじゃない? とりあえず、好き嫌いがわかるならその辺考えて作ってあげるといいかもね。それから、色々いきなり手が込んだもの作って腐らせてもあれだし、手始めにサンドイッチから作ってみたら?」
「そうね、そうしようかしら」
「じゃあ、何のサンドイッチにするのか考えておいてね」
「わかったわ」
セレナはパッと顔を明るくさせると、そのまま軽やかなステップで自室へと戻っていく。こんなご機嫌なセレナを見るのはここに来てから初めてかもしれない。
シアもつられて鼻歌混じりに家事をしていると、「随分とご機嫌だな」と不意に背後から声をかけられて「うわぁ!」と飛び上がった。
「レオナルドさん!? え、何で? お仕事は!?」
現在まだ夕方だ。普段であればこんな時間に帰ってくることなどないので、シアは混乱する。
「昨日あった土砂降りのせいで資材が届かなくてな。急遽早帰りになった」
「そうだったんですね。現場は雨の影響を受けてませんでした?」
「あぁ。特に支障は出ていない」
「それはよかったです」
「それで? どうして機嫌がよかったんだ? 何かあったのか?」
ずずいっと顔を近づけられて、追及される。レオナルドからのあまりの圧に、シアも思わず後ろに下がった。
「あ、いえ、何かあったというか……ここのところセレナと仲良くできてるのが嬉しくて」
そんなにぐいぐいと聞かれるほど機嫌良さそうにしてた自分を恥じつつ、特に後ろ暗いことがあるわけではないので素直に白状すると、なぜかホッとした様子のレオナルド。
「そうか、それならよかった。言われてみれば……確かに、セレナのほうから話しかける機会が増えた気がするな」
「そうなんですよ! アンナやフィオナからは話しかけられることはあっても、セレナからは全然なかったので! 今まではできなかった会話らしい会話ができるようになったんですっ!」
「そ、そうなのか」
今度はシアが食い気味に言えば、レオナルドが後退る。シアが興奮気味に今までのセレナとのやりとりを話せば、レオナルドは引き気味ながらもシアの話を聞いていた。
「とにかく、セレナと仲がよくなってくれてよかった。シアが来てくれてからというもの、我が家が明るくなった気がする」
「そうですか? そう言ってもらえて嬉しいです。そういえば、ハンカチはいかがです?」
「あぁ、セレナがくれたハンカチのことか。汗を拭くのにすごく重宝している。外で指示することが多いからな」
「それはよかったです。セレナにも言ってあげてください。喜ぶので」
「あぁ、そうしよう」
頷きながら、なぜかシアのそばから離れないレオナルド。普段であればすぐに自室へと戻るというのに、シアのそばを離れる気配がない。
心なしかそわそわしているような気もするが、何か他に言いたいことでもあるのだろうかとシアは考えあぐねる。
「えっと、せっかく早く帰ってきたんですから、今日はいつも頑張ってくださってるレオナルドさんのお好きな夕食にしましょうか。何か希望あります? これから買い物に行くので好きなものをご用意できますよ」
「あぁ、なら久々に焼きたてのステーキが食べたい」
「わかりました。これからもいっぱい働くんですから、精をつけないとですもんね。このあと買いに行ってきますね」
「……あぁ、よろしく頼む」
今度こそ自室へと戻るかと思いきや、レオナルドはそのまま難しい顔をしてシアの前で立ったまま。何か言いたいことでもあるのかと彼の言葉を待つが、沈黙が続くのみ。
このまま待っていても日が暮れそうだと、シアもさすがに痺れを切らして口を開いた。
「えっと、他に何かご要件が? もし何もないようなら、買い出しに行こうと思うのですが」
「あぁ、そうだったな」
「あの、レオナルドさん。もし何か欲しいものがあるなら、おっしゃっていただいたほうが嬉しいのですが。ほら、以前言ってたじゃないですか。会話が大事って。何か言いたいことがあるなら言ってください」
もじもじと何か言いたげにしているレオナルドに直球で聞くシア。ここでうやむやにしてはお互いにしこりが残ると判断したからだ。
「そうだな、すまない。その、図々しいお願いかもしれないが、シアからも……ハンカチをもらうことはできないだろうか」
「え?」
レオナルドからのお願いがあまりに不意打ちすぎて一瞬思考が停止する。
すると、それを拒絶だと思ったのか、レオナルドはあわあわと慌て出した。
「いや、もちろんダメならいいんだ。すまない、忘れてくれ」
そのまま踵を返して自室へと向かおうとするレオナルド。そこで我に返ってシアはすぐさまレオナルドに抱きつき引き止めた。
「いやいやいやいや、待ってください! そんなの全然いいですよ! というか、もっと早く言ってくださいよ。それで、いくつ必要ですか?」
「え? ……いいのか?」
「もちろんですよ。好きなデザインとかあります? お時間はいただくかもしれませんが、希望のデザインに合わせて刺繍しますよ」
まさか了承をもらえると思ってなかったらしいレオナルドは、動揺しているようだった。
そして、すぐに希望のデザインが思いつかないからか、うんうんと唸っている。
「もう少し考えてからお願いしてもいいか?」
「もちろんです」
「あと、もう一つお願いがあるんだが」
言いにくかったことを一つ言ったからか、それを口火にもう一つお願いをしてくるレオナルド。
彼が頼ってくれるなんて珍しいと思いながら、頼られることが好きなシアはレオナルドが頼ってくれることが嬉しかった。
「何でしょう」
「ここのところ多忙でシアと話す機会がなかったから、今夜は長めに話をしたいんだがいいだろうか」
まさかのもう一つのお願いが自分と喋るたいということで、胸がときめくシア。
確かに、ここ最近多忙なせいで早朝に出て深夜に帰宅する生活を送っていたため顔を合わせる時間が少なく、会話らしい会話をしていなかった。
「いいですよ。私もセレナのこととか色々と話したかったので。じゃあ、そのとき一緒にデザインを決めませんか?」
「あぁ、そうしてもらえると助かる」
無事に言いたいことが言えたからか、安堵した表情を見せるレオナルド。可愛らしい。
「では、レオナルドさんといっぱいお話するために早速買い出し行ってきますね。夕食ができるまでゆっくりしててください」
「わかった。待ってる。気をつけて行ってきてくれ」
「はい」
なんだか新婚みたいなやりとりだなと考えながら、そういえばまだ一応自分達は新婚だったんだということを思い出す。
(レオナルドさんともセレナともいい感じ。この調子でずっと過ごせたらいいな)
あくまで希望的観測ではあるが、この想いが実現すればいいなと思いながら、シアは買い出しのために市場へと向かうのだった。
先日、友達にあげると言っていたハンカチも完成して無事に渡すことができたらしく、今もセレナからその報告を受けていた。
「どう? 喜んでた?」
「えぇ。とても器用なんだねって褒めてもらったわ」
「そう。よかったわね」
学校から帰宅し、興奮しながら話すセレナの姿に、かつて勝手に鬱々と悩んでた自分を恥じるシア。
なんだかんだと恋が上手く進んでいるようでホッとする。
「えっと、それで、その友達にお弁当を作ってあげたいと思うんだけど、いいかしら」
「あら、いいんじゃない? とりあえず、好き嫌いがわかるならその辺考えて作ってあげるといいかもね。それから、色々いきなり手が込んだもの作って腐らせてもあれだし、手始めにサンドイッチから作ってみたら?」
「そうね、そうしようかしら」
「じゃあ、何のサンドイッチにするのか考えておいてね」
「わかったわ」
セレナはパッと顔を明るくさせると、そのまま軽やかなステップで自室へと戻っていく。こんなご機嫌なセレナを見るのはここに来てから初めてかもしれない。
シアもつられて鼻歌混じりに家事をしていると、「随分とご機嫌だな」と不意に背後から声をかけられて「うわぁ!」と飛び上がった。
「レオナルドさん!? え、何で? お仕事は!?」
現在まだ夕方だ。普段であればこんな時間に帰ってくることなどないので、シアは混乱する。
「昨日あった土砂降りのせいで資材が届かなくてな。急遽早帰りになった」
「そうだったんですね。現場は雨の影響を受けてませんでした?」
「あぁ。特に支障は出ていない」
「それはよかったです」
「それで? どうして機嫌がよかったんだ? 何かあったのか?」
ずずいっと顔を近づけられて、追及される。レオナルドからのあまりの圧に、シアも思わず後ろに下がった。
「あ、いえ、何かあったというか……ここのところセレナと仲良くできてるのが嬉しくて」
そんなにぐいぐいと聞かれるほど機嫌良さそうにしてた自分を恥じつつ、特に後ろ暗いことがあるわけではないので素直に白状すると、なぜかホッとした様子のレオナルド。
「そうか、それならよかった。言われてみれば……確かに、セレナのほうから話しかける機会が増えた気がするな」
「そうなんですよ! アンナやフィオナからは話しかけられることはあっても、セレナからは全然なかったので! 今まではできなかった会話らしい会話ができるようになったんですっ!」
「そ、そうなのか」
今度はシアが食い気味に言えば、レオナルドが後退る。シアが興奮気味に今までのセレナとのやりとりを話せば、レオナルドは引き気味ながらもシアの話を聞いていた。
「とにかく、セレナと仲がよくなってくれてよかった。シアが来てくれてからというもの、我が家が明るくなった気がする」
「そうですか? そう言ってもらえて嬉しいです。そういえば、ハンカチはいかがです?」
「あぁ、セレナがくれたハンカチのことか。汗を拭くのにすごく重宝している。外で指示することが多いからな」
「それはよかったです。セレナにも言ってあげてください。喜ぶので」
「あぁ、そうしよう」
頷きながら、なぜかシアのそばから離れないレオナルド。普段であればすぐに自室へと戻るというのに、シアのそばを離れる気配がない。
心なしかそわそわしているような気もするが、何か他に言いたいことでもあるのだろうかとシアは考えあぐねる。
「えっと、せっかく早く帰ってきたんですから、今日はいつも頑張ってくださってるレオナルドさんのお好きな夕食にしましょうか。何か希望あります? これから買い物に行くので好きなものをご用意できますよ」
「あぁ、なら久々に焼きたてのステーキが食べたい」
「わかりました。これからもいっぱい働くんですから、精をつけないとですもんね。このあと買いに行ってきますね」
「……あぁ、よろしく頼む」
今度こそ自室へと戻るかと思いきや、レオナルドはそのまま難しい顔をしてシアの前で立ったまま。何か言いたいことでもあるのかと彼の言葉を待つが、沈黙が続くのみ。
このまま待っていても日が暮れそうだと、シアもさすがに痺れを切らして口を開いた。
「えっと、他に何かご要件が? もし何もないようなら、買い出しに行こうと思うのですが」
「あぁ、そうだったな」
「あの、レオナルドさん。もし何か欲しいものがあるなら、おっしゃっていただいたほうが嬉しいのですが。ほら、以前言ってたじゃないですか。会話が大事って。何か言いたいことがあるなら言ってください」
もじもじと何か言いたげにしているレオナルドに直球で聞くシア。ここでうやむやにしてはお互いにしこりが残ると判断したからだ。
「そうだな、すまない。その、図々しいお願いかもしれないが、シアからも……ハンカチをもらうことはできないだろうか」
「え?」
レオナルドからのお願いがあまりに不意打ちすぎて一瞬思考が停止する。
すると、それを拒絶だと思ったのか、レオナルドはあわあわと慌て出した。
「いや、もちろんダメならいいんだ。すまない、忘れてくれ」
そのまま踵を返して自室へと向かおうとするレオナルド。そこで我に返ってシアはすぐさまレオナルドに抱きつき引き止めた。
「いやいやいやいや、待ってください! そんなの全然いいですよ! というか、もっと早く言ってくださいよ。それで、いくつ必要ですか?」
「え? ……いいのか?」
「もちろんですよ。好きなデザインとかあります? お時間はいただくかもしれませんが、希望のデザインに合わせて刺繍しますよ」
まさか了承をもらえると思ってなかったらしいレオナルドは、動揺しているようだった。
そして、すぐに希望のデザインが思いつかないからか、うんうんと唸っている。
「もう少し考えてからお願いしてもいいか?」
「もちろんです」
「あと、もう一つお願いがあるんだが」
言いにくかったことを一つ言ったからか、それを口火にもう一つお願いをしてくるレオナルド。
彼が頼ってくれるなんて珍しいと思いながら、頼られることが好きなシアはレオナルドが頼ってくれることが嬉しかった。
「何でしょう」
「ここのところ多忙でシアと話す機会がなかったから、今夜は長めに話をしたいんだがいいだろうか」
まさかのもう一つのお願いが自分と喋るたいということで、胸がときめくシア。
確かに、ここ最近多忙なせいで早朝に出て深夜に帰宅する生活を送っていたため顔を合わせる時間が少なく、会話らしい会話をしていなかった。
「いいですよ。私もセレナのこととか色々と話したかったので。じゃあ、そのとき一緒にデザインを決めませんか?」
「あぁ、そうしてもらえると助かる」
無事に言いたいことが言えたからか、安堵した表情を見せるレオナルド。可愛らしい。
「では、レオナルドさんといっぱいお話するために早速買い出し行ってきますね。夕食ができるまでゆっくりしててください」
「わかった。待ってる。気をつけて行ってきてくれ」
「はい」
なんだか新婚みたいなやりとりだなと考えながら、そういえばまだ一応自分達は新婚だったんだということを思い出す。
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◇◇◇
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もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!