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第十六話 制度という根
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第十六話 制度という根
西部二州半の編入は、静かに進んでいた。
騒ぎはない。
反乱もない。
むしろ、落ち着いている。
それが一番恐ろしい。
「徴税凍結の効果でございます」
財務官が報告する。
「商人の流入が増えております」
「王家直轄時代より?」
「明らかに」
私は頷く。
「税は低く、法は明確に」
「それだけで、人は動きます」
騎士団長が言う。
「駐屯兵の再編も完了」
「制服は変えず、指揮系統のみ統一」
「混乱はありません」
当然だ。
奪ったのではない。
組み替えただけ。
私は地図を見つめる。
西部二州半。
今はまだ“王国内の公爵領”。
だが。
中身が変わっている。
「司法は?」
「公爵法典を基準に統一」
「王家法との矛盾は最小限」
「公的には従属」
「実態は自律」
財務官が小さく息を呑む。
「……準国家のようでございます」
私は視線を上げる。
「国家とは何ですか?」
誰も答えない。
「税を取り」
「法を整え」
「軍を持ち」
「教育を与える」
一拍。
「機能が整えば、それは国家に近づきます」
騎士団長が低く言う。
「独立を?」
「宣言はいたしません」
私は即答する。
「宣言は感情」
「機能は現実」
静寂。
「王家は制度」
「公爵家も制度になるだけ」
私は新しい書類を広げる。
「教育院設立」
「商業特区指定」
「司法監査院創設」
財務官が驚く。
「早すぎます」
「遅いくらいです」
一拍。
「王家が揺れた今、秩序を求める者は増える」
「受け皿が必要です」
窓の外、商人の馬車が列をなす。
西部二州半に向かっている。
人は流れを読む。
安定に向かう。
「陛下は警戒なさいます」
「当然です」
「ですが、私は反旗を翻しておりません」
私は淡く笑う。
「責任を引き受けただけ」
一拍。
「王家が削った威信を、私は積み上げている」
騎士団長が膝をつく。
「当主」
「まだです」
私は首を振る。
「私は女王ではございません」
だが。
制度は整う。
税が回り。
法が通り。
軍が動き。
教育が始まる。
名乗らなくても。
人は気づく。
西部二州半は、王都より秩序がある。
王家はまだ上にいる。
だが。
足場は揺れている。
「独立とは」
私は小さく呟く。
「宣言ではない」
「選択肢でございます」
騎士団長が問う。
「選ぶ日が来ますか」
「来るかもしれません」
「来なくても構いません」
一拍。
「選べることが重要です」
王家はまだ王家。
だが。
公爵領は、もう単なる領地ではない。
制度だ。
根を張った。
深く。
静かに。
確実に。
西部二州半の編入は、静かに進んでいた。
騒ぎはない。
反乱もない。
むしろ、落ち着いている。
それが一番恐ろしい。
「徴税凍結の効果でございます」
財務官が報告する。
「商人の流入が増えております」
「王家直轄時代より?」
「明らかに」
私は頷く。
「税は低く、法は明確に」
「それだけで、人は動きます」
騎士団長が言う。
「駐屯兵の再編も完了」
「制服は変えず、指揮系統のみ統一」
「混乱はありません」
当然だ。
奪ったのではない。
組み替えただけ。
私は地図を見つめる。
西部二州半。
今はまだ“王国内の公爵領”。
だが。
中身が変わっている。
「司法は?」
「公爵法典を基準に統一」
「王家法との矛盾は最小限」
「公的には従属」
「実態は自律」
財務官が小さく息を呑む。
「……準国家のようでございます」
私は視線を上げる。
「国家とは何ですか?」
誰も答えない。
「税を取り」
「法を整え」
「軍を持ち」
「教育を与える」
一拍。
「機能が整えば、それは国家に近づきます」
騎士団長が低く言う。
「独立を?」
「宣言はいたしません」
私は即答する。
「宣言は感情」
「機能は現実」
静寂。
「王家は制度」
「公爵家も制度になるだけ」
私は新しい書類を広げる。
「教育院設立」
「商業特区指定」
「司法監査院創設」
財務官が驚く。
「早すぎます」
「遅いくらいです」
一拍。
「王家が揺れた今、秩序を求める者は増える」
「受け皿が必要です」
窓の外、商人の馬車が列をなす。
西部二州半に向かっている。
人は流れを読む。
安定に向かう。
「陛下は警戒なさいます」
「当然です」
「ですが、私は反旗を翻しておりません」
私は淡く笑う。
「責任を引き受けただけ」
一拍。
「王家が削った威信を、私は積み上げている」
騎士団長が膝をつく。
「当主」
「まだです」
私は首を振る。
「私は女王ではございません」
だが。
制度は整う。
税が回り。
法が通り。
軍が動き。
教育が始まる。
名乗らなくても。
人は気づく。
西部二州半は、王都より秩序がある。
王家はまだ上にいる。
だが。
足場は揺れている。
「独立とは」
私は小さく呟く。
「宣言ではない」
「選択肢でございます」
騎士団長が問う。
「選ぶ日が来ますか」
「来るかもしれません」
「来なくても構いません」
一拍。
「選べることが重要です」
王家はまだ王家。
だが。
公爵領は、もう単なる領地ではない。
制度だ。
根を張った。
深く。
静かに。
確実に。
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