婚約破棄された悪役令嬢、パンがなかったので貴族から菓子を奪って民衆に食べさせますわ! 馬鹿な貴族どもは、クラッカーでもかじってなさい 1/4

鷹 綾

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第1話:婚約破棄の夜

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第1話:婚約破棄の夜

王都の華やかな舞踏会会場は、シャンデリアの光がきらめき、貴族たちの笑い声が響いていた。  
フォーマルハウト公爵令嬢アルキオーネは、雪のように白い髪を優雅に揺らし、氷のような瞳で周囲を見渡していた。  
彼女の隣には、第一王子セドリックが立っている。  
婚約者として、誰もが羨む完璧な絵だった。

しかし、その夜はいつもと違った。

突然、セドリックが手を振り払い、冷たい声で宣言した。

「アルキオーネ・フォーマルハウト。お前のような傲慢で愚かな女とは、もう婚約を続けられん」

会場が一瞬、凍りつく。  
貴族たちの視線が、アルキオーネに突き刺さる。

「え……?」

アルキオーネの氷のような瞳が、わずかに揺れた。

「民の飢えを嘲笑うような言葉を平気で口にするお前など、  
王太子妃などとんでもない!  
『パンがないなら、お菓子を食べればいいじゃない』――  
そんな馬鹿な女に、この国を任せられるか!」

王子は声を張り上げた。  
周囲の貴族たちが、クスクスと笑い声を漏らす。

「本当に、氷の薔薇とは名ばかりね」  
「民の苦しみを理解しない愚かな令嬢」  
「王子殿下の婚約破棄、当然ですわ」

嘲笑の渦が広がる中、アルキオーネは静かにティーカップを置いた。

「……あら。あなた方の主観ですわね」

彼女の声は、冷たく透き通っていた。

「民の飢えをあざ笑う?  
民の飢えに目を向けもしない人々に、何を言う資格があるのかしら?」

会場が、ぴたりと静まり返る。

「あなた方は、硬質小麦を買い占め、庶民のパンを奪い、自分たちは白パンと高級ケーキを貪っている。  
その上で、私の言葉を嘲笑う?」

アルキオーネは優雅に立ち上がり、扇子を広げた。

「貴族の菓子は、すべてパンより高額だと思い込んでいらっしゃるのですわね。  
スイーツは貴族のために作られる贅沢品、だからこそ高価だと。  
けれど……本当の価値は、誰が決めるのかしら?」

貴族たちの顔が、次第に引きつる。

「馬鹿な……何を言ってるの?」  
「菓子が高額なのは当然よ! 庶民には手の届かないものだもの!」  
「そんな女の言葉に耳を貸す必要はないわ!」

アルキオーネは、ゆっくりと微笑んだ。

「ならば、証明して差し上げますわ。  
私が『お菓子』を民に与えることで、どれほどこの国が変わるかを。  
そして、あなた方のような『資格のない者』が、どれほど惨めになるかを」

貴族たちは嘲笑を深めたが、その笑いはどこか不安げだった。

アルキオーネは、貴族たちの視線を浴びながら、ゆっくりと会場を後にした。  
背後から聞こえる嘲笑の声が、彼女の耳に届く。

「馬鹿な女が……」  
「飢饉の最中に、お菓子で民を救う? 笑わせるわね」  
「菓子は貴族のものよ! 庶民に渡すなんて、ありえないわ!」

アルキオーネは、馬車の中で静かに微笑んだ。

「笑うなら、笑いなさい。  
その笑顔が、どれだけ脆いものかを、すぐに思い知ることになりますわ」

馬車はフォーマルハウト邸へと走り出す。  
夜の王都は、飢饉の影に覆われていた。  
市場の棚は空っぽで、道端では子どもたちが空腹に耐えていた。  
貴族たちは、そんな現実を無視して舞踏会に興じていた。

邸宅に戻ったアルキオーネは、すぐにメイド長クラリスを呼んだ。

「クラリス。硬質小麦の流通状況を調べなさい。  
そして、軟質小麦の在庫をすべて買い占めなさい。  
貴族商会が押さえている菓子工房からも、強制的に材料を奪いなさい」

クラリスが目を丸くする。

「お嬢様、それは……貴族の反発が激しくなります。  
しかも、菓子は貴族のための高級品、庶民には高額すぎて……」

「高額? ふふ……  
貴族たちは、菓子が高価だからこそ自分たちのものだと思い込んでいる。  
けれど、軟質小麦はパン用より安価で、大量に作れるのですわ。  
私が証明します。  
菓子は、貴族のためだけに作られるものではないことを」

アルキオーネの瞳は、冷たく輝いていた。

「貴族たちが菓子を独占し、民を飢えさせるなら、  
私はその菓子を奪い、民に与えますわ。  
パンがないなら、お菓子を食べさせますわ」

クラリスは深く頭を下げた。

「承知いたしました。お嬢様の覚悟、必ずお支えします」

その夜、アルキオーネは窓辺に立ち、王都の夜景を見下ろした。  
飢えた民の灯りが、わずかに揺れている。

「あなた方の主観ですわね。  
菓子が高額で、貴族のためだけにあると信じているなら、  
私がその幻想を砕いて差し上げますわ」

決意の炎が、彼女の心に灯った。  
婚約破棄の屈辱は、  
逆襲の始まりに過ぎなかった。

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