『婚約破棄された令嬢、白い結婚で第二の人生始めます ~王太子ざまぁはご褒美です~』

鷹 綾

文字の大きさ
33 / 40

第33話「リオネッタの働きが領地を救う」

しおりを挟む

「――こちらの帳簿、支出項目が複雑すぎますわ。用途ごとに分類を明確に。あと、労働者への支払いは月末でなく、週払いも選べる制度にすべきです」

 伯爵邸の執務室で、リオネッタが次々と指示を出していた。
 使用人や役人たちは最初こそ面食らっていたが、彼女の話を聞くほどに、その内容が合理的で現実的なことに気づいていく。

「こんなに整理された書類、初めて見た……」

「お嬢様、まさか王都では経理のお役目まで……?」

「いいえ、むしろ“やらされて”いましたのよ。趣味ではなく、王太子殿下が“面倒だから”と……」

 苦笑しつつそう返すリオネッタに、皆がしんと静まり返る。

「……さすがに、同情いたします」

「いえ、それが今となっては役に立ちましたから」

 彼女はさらりと笑ってみせた。

* * *

 その後も、リオネッタは次々と“伯爵領の改善”に取り組んだ。

・子ども向けの無料の読み書き教室を設立
・裁縫や料理の市民講習会を開き、女性の収入源を増やす支援
・市場の価格操作を防ぐため、公認価格表と通報制度の導入
・農業の収穫予測を活かした備蓄と流通の改革

 そのすべてに、無理も押しつけもなかった。
 ただ、「皆が安心して暮らせるように」という一貫した姿勢があった。

「領主様の婚約者って、すごい人だったんだなぁ……」

「いやもう、“領主様より領主様っぽい”ぞ、あれは……」

「ねえ、リオネッタ様って、次の当主にならないの?」

「それは……クリス様が泣いちゃうから……」

 農民から商人、学者に至るまで、領民たちは口々に彼女を称えた。

* * *

「ずいぶんと……人気だね」

 その声の主は、もちろんクリス。
 中庭で日報の報告を受けるリオネッタに、珍しく“素”の言い方をした。

「領地の方々が協力的で助かっております。皆さまの方こそ、私に任せてくださってありがたいです」

「いや……“信頼させる力”が君にあるんだよ。僕なんて、最初の三年、何もできなかった」

「では、今からでも“やってる感”を出してみますか? たとえば、椅子にふんぞり返って、俺は領主だー! と」

「やめてくれ、伯爵家の威厳が消える……!」

 二人の笑い声が、日差しの中に溶けていった。


---

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『婚約破棄された令嬢ですが、名も残さず街を支えています』

ふわふわ
恋愛
婚約破棄された伯爵令嬢コルネリア・フォン・ヴァルデン。 名誉も立場も失いかけた彼女が選んだのは、誰かに勝つことでも、名を取り戻すことでもなかった。 前に立たず、声高に語らず、ただ「判断が続く仕組み」を街に残すこと。 現場に任せ、失敗を隠さず、問いを残し、そして最後には自ら手を離す――。 名を呼ばれず、称賛もされない。 それでも街は止まらず、確かに良くなっていく。 これは、ざまぁの先で「勝たなかった令嬢」が、 静かに世界を変え、そして正しく消えていく物語。

星屑を紡ぐ令嬢と、色を失った魔法使い

希羽
恋愛
子爵令嬢のルチアは、継母と義姉に虐げられ、屋根裏部屋でひっそりと暮らしていた。彼女には、夜空に輝く星屑を集めて、触れた者の心を癒す不思議な力を持つ「銀色の糸」を紡ぎ出すという、秘密の能力があった。しかし、その力で生み出された美しい刺繍の手柄は、いつも華やかな義姉のものとされていた。 一方、王国には「灰色の魔法使い」と畏れられる英雄、アークライト公爵がいた。彼はかつて国を救った代償として、世界の色彩と感情のすべてを失い、孤独な日々を送っている。 ある夜会で、二人の運命が交差する。義姉が手にしたルチアの刺繍にアークライトが触れた瞬間、彼の灰色だった世界に、一瞬だけ鮮やかな色彩が流れ込むという奇跡が起きた。 その光の本当の作り手を探し出したアークライトは、ルチアを自身の屋敷へと迎え入れる。「私のために刺繍をしろ」──その強引な言葉の裏にある深い孤独を知ったルチアは、戸惑いながらも、初めて自分の力を認められたことに喜びを感じ、彼のために星屑を紡ぎ始める。 彼女の刺繍は、凍てついていた公爵の心を少しずつ溶かし、二人の間には静かな絆が芽生えていく。 しかし、そんな穏やかな日々は長くは続かない。ルチアの持つ力の価値に気づいた過去の人々が、彼女を再び絶望へ引き戻そうと、卑劣な陰謀を企てていた。

【完結】捨てられ令嬢の冒険譚 〜婚約破棄されたので、伝説の精霊女王として生きていきます〜

きゅちゃん
恋愛
名門エルトリア公爵家レオンと婚約していた伯爵令嬢のエレナ・ローズウッドは、レオンから婚約破棄を宣言される。屈辱に震えるエレナだが、その瞬間、彼女にしか見えない精霊王アキュラが現れて...?!地味で魔法の才能にも恵まれなかったエレナが、新たな自分と恋を見つけていくうちに、大冒険に巻き込まれてしまう物語。

婚約破棄された令嬢は、選ばれる人生をやめました

ふわふわ
恋愛
王太子フィリオンとの婚約を、 「完璧すぎて可愛げがない」という理不尽な理由で破棄された令嬢・セラフィナ。 代わりに選ばれたのは、 庇護されるだけの“愛される女性”ノエリアだった。 失意の中で王国を去ったセラフィナが向かった先は、 冷徹と噂される公爵カルヴァスが治めるシュタインベルク公国。 そこで提示されたのは―― 愛も期待もしない「白い結婚」。 感情に振り回されず、 責任だけを共有する関係。 それは、誰かに選ばれる人生を終わらせ、 自分で立つための最適解だった。 一方、セラフィナを失った王国は次第に歪み始める。 彼女が支えていた外交、調整、均衡―― すべてが静かに崩れていく中、 元婚約者たちは“失ってから”その価値に気づいていく。 けれど、もう遅い。 セラフィナは、 騒がず、怒らず、振り返らない。 白い結婚の先で手に入れたのは、 溺愛でも復讐でもない、 何も起きない穏やかな日常。 これは、 婚約破棄から始まるざまぁの物語であり、 同時に―― 選ばれる人生をやめ、選び続ける人生を手に入れた女性の物語。 静かで、強くて、揺るがない幸福を、あなたへ。

追放された令嬢ですが、隣国公爵と白い結婚したら溺愛が止まりませんでした ~元婚約者? 今さら返り咲きは無理ですわ~

ふわふわ
恋愛
婚約破棄――そして追放。 完璧すぎると嘲られ、役立たず呼ばわりされた令嬢エテルナは、 家族にも見放され、王国を追われるように国境へと辿り着く。 そこで彼女を救ったのは、隣国の若き公爵アイオン。 「君を保護する名目が必要だ。干渉しない“白い結婚”をしよう」 契約だけの夫婦のはずだった。 お互いに心を乱さず、ただ穏やかに日々を過ごす――はずだったのに。 静かで優しさを隠した公爵。 無能と決めつけられていたエテルナに眠る、古代聖女の力。 二人の距離は、ゆっくり、けれど確実に近づき始める。 しかしその噂は王国へ戻り、 「エテルナを取り戻せ」という王太子の暴走が始まった。 「彼女はもうこちらの人間だ。二度と渡さない」 契約結婚は終わりを告げ、 守りたい想いはやがて恋に変わる──。 追放令嬢×隣国公爵×白い結婚から溺愛へ。 そして元婚約者ざまぁまで爽快に描く、 “追い出された令嬢が真の幸せを掴む物語”が、いま始まる。 ---

「誰もお前なんか愛さない」と笑われたけど、隣国の王が即プロポーズしてきました

ゆっこ
恋愛
「アンナ・リヴィエール、貴様との婚約は、今日をもって破棄する!」  王城の大広間に響いた声を、私は冷静に見つめていた。  誰よりも愛していた婚約者、レオンハルト王太子が、冷たい笑みを浮かべて私を断罪する。 「お前は地味で、つまらなくて、礼儀ばかりの女だ。華もない。……誰もお前なんか愛さないさ」  笑い声が響く。  取り巻きの令嬢たちが、まるで待っていたかのように口元を隠して嘲笑した。  胸が痛んだ。  けれど涙は出なかった。もう、心が乾いていたからだ。

【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~

夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」 婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。 「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」 オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。 傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。 オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。 国は困ることになるだろう。 だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。 警告を無視して、オフェリアを国外追放した。 国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。 ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。 一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。

【完結】貧乏令嬢は自分の力でのし上がる!後悔?先に立たずと申しましてよ。

やまぐちこはる
恋愛
領地が災害に見舞われたことで貧乏どん底の伯爵令嬢サラは子爵令息の婚約者がいたが、裕福な子爵令嬢に乗り換えられてしまう。婚約解消の慰謝料として受け取った金で、それまで我慢していたスイーツを食べに行ったところ運命の出会いを果たし、店主に断られながらも通い詰めてなんとかスイーツショップの店員になった。 貴族の令嬢には無理と店主に厳しくあしらわれながらも、めげずに下積みの修業を経てパティシエールになるサラ。 そしてサラを見守り続ける青年貴族との恋が始まる。 全44話、7/24より毎日8時に更新します。 よろしくお願いいたします。

処理中です...