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第31話 世界への招待と、家族の影
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第31話 世界への招待と、家族の影
エルディアでの生活が落ち着いてから、さらに一年が経っていた。
『アプローズの甘い癒やし』は、王国を超え、エルディア王国でも最大級のスイーツチェーンになっていた。
支店数は五十を超え、隣国エルディアだけでなく、交易の盛んな南方の商業大国ヴァルハラ共和国にも進出を果たした。
私のスイーツは、世界中の冒険者の必需品となり、貴族のパーティーでは「アプローズの菓子がないと格が落ちる」と言われるほど。
ルヴェリア本店は、観光名所のように賑わい、ライアンとの結婚式もここで挙げた。
私たちは、幸せな夫婦生活を送っていた。
娘のエリスも、もう五歳。
銀髪に私の瞳を継いだ、可愛い子だ。
工房で一緒にクッキーを焼くのが大好きで、「ママみたいに、みんなを幸せにするお菓子作りたい!」と言う。
この日、ルヴェリア本店で新商品の試作をしていた。
ヴァルハラ共和国から取り寄せた、炎の魔法スパイスを使った「ファイア・チョコタルト」。
熱い刺激と甘さが融合し、攻撃力大幅アップの効果を宿した一品。
試食したライアンが、笑った。
「これ、ヴァルハラの戦士たちが喜ぶぞ。熱い国にぴったりだ」
エリスが、小さな手でタルトを運んでくれた。
「パパ、食べて!」
家族三人で笑い合う。
そんな穏やかな午後。
店のドアに、一通の豪華な手紙が届いた。
封蝋には、見慣れない紋章。
世界でも有数の大国、帝国アストリアの印。
開いてみると、帝国皇帝からの直筆招待状だった。
『真の聖女アプローズ・フォン・エルグランド殿へ
貴女の菓子と力の噂は、帝国にも届いております。
帝国の民を癒やし、冒険者を支えるその奇跡を、ぜひ帝国でも。
支店出店を強く希望するとともに、貴女ご自身を帝国宮廷へお招きしたい。
帝国の祭典で、菓子を提供いただき、貴女の力を帝国に示していただきたい。
皇帝レオルト』
帝国アストリア――世界最大の軍事・魔法大国。
エルディアや私の王国を凌ぐ規模。
そこから、皇帝直々の招待。
ライアンが、手紙を読んで目を丸くした。
「帝国か……これは、大きいな」
エリスが、不思議そうに聞いた。
「ママ、帝国ってどこ?」
私は、娘の頭を撫でながら答えた。
「遠い大きな国よ。お菓子を届けてほしいって、お手紙が来たの」
ライアンが、真剣に言った。
「行くか? 帝国は、政治的に複雑だ。招待は名誉だが、裏があるかもしれない」
私は、考えた。
私の甘い奇跡は、もう国境を超えている。
もっと多くの人に届けたい。
でも、家族を離れたくない。
「行ってみるわ。みんなと一緒に」
その夜、護衛パーティー全員を集めて相談した。
エレナが、興奮した。
「帝国! 夢みたい! 行こうよ!」
ガレンが、地図を広げた。
「アストリア帝国は、魔物大国でもある。菓子需要は計り知れない」
ミラが、心配そうに言った。
「でも、皇帝の招待は、簡単じゃないかも」
カイルが、熱く言った。
「護衛は俺たちだ! 帝国だろうが、何だろうが!」
ライアンが、私の手を握った。
「決めるのはお前だ。俺は、どこへでもついていく」
私は、皆を見回した。
「行きましょう。帝国に、甘い奇跡を届ける」
だが、その招待状の裏に、懐かしい――いや、忘れかけていた影があった。
レグナム王子が、帝国に滞在しているという噂。
過去の影が、再び近づいてくる。
帝国への招待は、新しい夢の始まり。
そして、意外な再会の予感。
私の甘い物語は、世界規模で広がっていく。
家族と、仲間と、一緒に。
帝国アストリアの風が、遠くから感じられる気がした。
エルディアでの生活が落ち着いてから、さらに一年が経っていた。
『アプローズの甘い癒やし』は、王国を超え、エルディア王国でも最大級のスイーツチェーンになっていた。
支店数は五十を超え、隣国エルディアだけでなく、交易の盛んな南方の商業大国ヴァルハラ共和国にも進出を果たした。
私のスイーツは、世界中の冒険者の必需品となり、貴族のパーティーでは「アプローズの菓子がないと格が落ちる」と言われるほど。
ルヴェリア本店は、観光名所のように賑わい、ライアンとの結婚式もここで挙げた。
私たちは、幸せな夫婦生活を送っていた。
娘のエリスも、もう五歳。
銀髪に私の瞳を継いだ、可愛い子だ。
工房で一緒にクッキーを焼くのが大好きで、「ママみたいに、みんなを幸せにするお菓子作りたい!」と言う。
この日、ルヴェリア本店で新商品の試作をしていた。
ヴァルハラ共和国から取り寄せた、炎の魔法スパイスを使った「ファイア・チョコタルト」。
熱い刺激と甘さが融合し、攻撃力大幅アップの効果を宿した一品。
試食したライアンが、笑った。
「これ、ヴァルハラの戦士たちが喜ぶぞ。熱い国にぴったりだ」
エリスが、小さな手でタルトを運んでくれた。
「パパ、食べて!」
家族三人で笑い合う。
そんな穏やかな午後。
店のドアに、一通の豪華な手紙が届いた。
封蝋には、見慣れない紋章。
世界でも有数の大国、帝国アストリアの印。
開いてみると、帝国皇帝からの直筆招待状だった。
『真の聖女アプローズ・フォン・エルグランド殿へ
貴女の菓子と力の噂は、帝国にも届いております。
帝国の民を癒やし、冒険者を支えるその奇跡を、ぜひ帝国でも。
支店出店を強く希望するとともに、貴女ご自身を帝国宮廷へお招きしたい。
帝国の祭典で、菓子を提供いただき、貴女の力を帝国に示していただきたい。
皇帝レオルト』
帝国アストリア――世界最大の軍事・魔法大国。
エルディアや私の王国を凌ぐ規模。
そこから、皇帝直々の招待。
ライアンが、手紙を読んで目を丸くした。
「帝国か……これは、大きいな」
エリスが、不思議そうに聞いた。
「ママ、帝国ってどこ?」
私は、娘の頭を撫でながら答えた。
「遠い大きな国よ。お菓子を届けてほしいって、お手紙が来たの」
ライアンが、真剣に言った。
「行くか? 帝国は、政治的に複雑だ。招待は名誉だが、裏があるかもしれない」
私は、考えた。
私の甘い奇跡は、もう国境を超えている。
もっと多くの人に届けたい。
でも、家族を離れたくない。
「行ってみるわ。みんなと一緒に」
その夜、護衛パーティー全員を集めて相談した。
エレナが、興奮した。
「帝国! 夢みたい! 行こうよ!」
ガレンが、地図を広げた。
「アストリア帝国は、魔物大国でもある。菓子需要は計り知れない」
ミラが、心配そうに言った。
「でも、皇帝の招待は、簡単じゃないかも」
カイルが、熱く言った。
「護衛は俺たちだ! 帝国だろうが、何だろうが!」
ライアンが、私の手を握った。
「決めるのはお前だ。俺は、どこへでもついていく」
私は、皆を見回した。
「行きましょう。帝国に、甘い奇跡を届ける」
だが、その招待状の裏に、懐かしい――いや、忘れかけていた影があった。
レグナム王子が、帝国に滞在しているという噂。
過去の影が、再び近づいてくる。
帝国への招待は、新しい夢の始まり。
そして、意外な再会の予感。
私の甘い物語は、世界規模で広がっていく。
家族と、仲間と、一緒に。
帝国アストリアの風が、遠くから感じられる気がした。
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